アウン・サン・スー・チー ミャンマー国民民主連盟党首 2013.4.17
Daw Aung San Suu Kyi, Chairperson, the National League for Democracy
※同時通訳です。日本語は左チャンネル、英語は右チャンネル
English : Choose a right channel
27年ぶりに来日したミャンマーの国民民主連盟のアウンサンスーチー党首が会見し、内政問題を中心に質問に答えた。
国会議員になってから分かったが、立法(国会)は野党の意見を取り入れるなどそれなり機能している。司法は行政(政府)に依存し、行政は明確な改革政策をもっておらず、うまくいっていないとした。民族・宗教間の対立問題については、法の支配の確立を通じて、国民和解の道に導くのが最善というのが、わたしの信条だと、語った。
会見詳録(文字起こし全文 PDF)
日本語 http://www.jnpc.or.jp/files/2013/04/8661260c51032145ab403e521417744f.pdf
English http://www.jnpc.or.jp/files/2013/04/6d989f189e829bbfb46905e628a03239.pdf
司会 日本記者クラブ企画委員 小栗泉(日本テレビ)
代表質問 日本記者クラブ企画委員 杉尾秀哉(TBS)
同時通訳 澄田美都子、大野理恵(サイマル・インターナショナル)
日本記者クラブホームページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025678/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
新たな国づくりへ 地道な実務家の「正直」な言葉
アウン・サン・スー・チー氏は有徳の貴婦人といった風情だった。「どんな質問にも正直にお答えします」と述べて、記者会見を始めた。
日本の援助に何を期待するか、ミャンマー民主化の現状はどうか、国内の民族・宗教紛争にどう対処するのか、地域大国の中印両国といかに付き合うのか──。相次ぐ質問に「正直」な回答が返ってきた。
人物には華があるが、語る言葉に華はない。ご本人も「私の発言は派手でない。不満に思う人、退屈に感じる人は多い」と認める。
例えば、ミャンマーの人権抑圧の新たな象徴になり、特に米欧で批判の強い、市民権を持たないロヒンギャ系住民の処遇については、「市民権の有無は国内法に照らして対処すべきです。ただ、国内法が国際基準に適合しているかどうかの検討も必要です」と慎重だった。
「最重要課題は国家の統一と平和の樹立」であり、「国民和解の前提は法治の確立」と言う。それが「政治経済社会の持続的発展の根本です」。実際そうなのだろうが、まるで軍政時代の標語のようだった。
スー・チー氏は、幽閉されてなお軍政に抵抗を続けた民主化の星というより、新生ミャンマーの国づくりに地道に取り組む実務家だった。
そして、「私は大統領になりたい」と語った。国を正しく指導することは自らに課した使命なのだろう。「建国の父」と崇められる実父のアウン・サンは、独立を見ずに暗殺された。スー・チー氏は英国人の夫が末期がんで余命いくばくもないことを知りつつ、祖国にとどまった。実父の夢を引き継ぎ、自らを国に捧げる決意は揺るぎないようだ。
大統領になるには軍の同意を取り付けることが不可欠だ。憲法はスー・チー氏排除のため、外国人の家族を持つ人物の大統領資格を認めていない。軍は憲法改正に拒否権を持つ。
スー・チー氏は最近、「軍は好きです。父が作ったわけですし」と公言し、今年の国軍記念日の軍事パレードに初めて参列した。記者会見では、「軍人の考え方は規律や指令の順守であり、心配はありません。最大の障害は軍事専制に染まった思考様式なのです」と述べた。国軍の改革派とは手を組む姿勢だ。
ミャンマーの高名な占星術師によると、スー・チー氏は2014年半ばに何らかの形で大統領に就き、15年の総選挙の勝利で大統領に再任されるという。絵空事と一笑に付すことはできない気がする。
読売新聞編集委員
鶴原 徹也