オベロンについて -民話・神話や伝説の英雄と妖精-
15世紀に「ボルドーのユーオン」として英訳されたフランスのロマンス「ユオン・ド・ボルドー(13世紀の武勲詩)」に登場した妖精王で、その後シェイクスピアの「真夏の夜の夢」やエドモンド・スペンサー(1552?-99)の「妖精の女王(1590-96)」他、多くの作品に現れる。容姿などの特徴は、もとを辿ればチュートン(アングロ・サクソン/ドイツやスカンジナビア)の伝説「ニーベルンゲンの歌」に登場するアルベリヒ(エルフ王の意)をモデルにしたと言われている。
散文「ユオン・ド・ボルドーとオベロン」
昔、ユオンという男がいて、ある時シリアで以前彼の下男だったジェラスムに出会った。そこでユオンがバビロンへ行く道を尋ねると、ジェラスムはこう教えた。
「バビロンへ行く道は2つあって、一方は長いが安全、他方は短いが危険です。後者には途中に森があって、そこにはフェアリーやフェイ(フェアリーの古語)の王オベロンが住んでおり、彼らが邪魔をするのでそこを無事に通り抜けられる人はまずいないということです。それでも、もし森に入るなら決して彼らと口をきいてはなりません。たとえオベロンが嵐を起こしても、目の前に大きな河が現れても黙ってそのままおす進み下さい。それらは魔法に過ぎないのです。ですから、あなたは意志を固く保って絶対に口をきかないことです。そうすれば無事に通り抜けることが出来るでしょう。」
森に入ったユオンはしばらくはジェラスムの賢い忠告に従ってオベロンを避けていた。すると予言通りに雨や雷がおこったが、騎士ユオンは思い切ってオベロンに話しかけてしまう。すると、オベロンは自分の身の上を話しだした。ユオンの勇気と才を見てオベロンが彼に心を許したのであった。
そののち無事に旅を終えてボルドーに戻ったユオンのもとに、オベロンがやってきて彼を援助し、やがて自分がフェアリーの国を去る時が迫っているのを知ると、ユオンを自分の後継者(妖精王)に指名したという。
歴史小説「アイヴァンホー」 ウォルター・スコット作/菊池武一訳
「いやいや、そうはいうてもわしは騎り手を見とどけなきゃいけないわい。おおかた妖精の国から魔王オベロンさまのことづけをもってきたのじゃろう」(豚飼いウォンバ)