トアン・マッカラル -民話・神話や伝説の英雄と妖精-
アイルランドの神話の語り部と言われる伝説上の人物。パーホロン神族(最初にアイルランド島にやってきた神族)の生き残りで、彼は次々と色々な動物に生まれ変わりながら何百年も生きた。そして、島にやってきた5つの種族の盛衰の有り様を見て、後の人々に語り、この世を去ったとされている。(「侵略の書(レボル・カバーラ)」1100年)
神話「国造りを見た男トァンの話」
「しばらくたったある朝のこと。目を覚ましてみますと、自分が雄鹿に変わっているのに気がつきました。年老いて弱り果てていた体には、再び若々しい生気が溢れ、心は喜びでいっぱいになっていました。それで勢いよく駆け出しますと、森に入り鹿の王となったのです。」
それから猪の王、海鷲へと姿を変え、最後に鮭になった時、ミレー族(半神半人の種族:シリア付近からエジプト、スペインを経て渡来)のカレルの妻に食べられ、彼女のお腹からカレルの息子トァンとして再びこの世に現れるとトアンは一族に神々の歴史を語った。
「パーホロン神族(第一の種族:中部ギリシアより渡来)は疫病に倒れ、ネメズ神族(第二の種族:ロシアのバルト海域より渡来)は海に沈み、一説にはネメズの再来とされるフィルボルグ神族(第三の種族:スペインを経て渡来)とダーナ神族(第四の種族:ギリシアより渡来)は戦に破れて滅びてしまった。」
かくして、第五の種族である「ミレー族(クーフラン Cu Chulainnやオシーンら)」の来島によってアイルランドの英雄の歴史が始まったのである。