ノッカーについて -民話・神話や伝説の英雄と妖精-
コーンウォールの鉱山に棲む妖精。自分に親切な人に岩を叩いて、よい鉱脈のありかを知らせるが、反対に意地悪な人は坑道で迷わせたりする。コンウォール地方では、キリストの十字架を作った罰として最後の審判の日まで土の中で仕事をするよう運命づけられたユダヤ人の亡霊だとする説もある。
「妖精を信じていなかった男が、妖精に助け出された話」レイモンド・カーノー語/井村君江編訳
「妖精など信じていないけど、あれは確かに妖精音楽だったと思うね。仲間からはぐれちまって、一人で曲がりくねった暗い坑道を歩いていたんだ。三十分ぐらい経ったろうか、ずっと遠くの方から、聞いたこともない、うっとりするような音楽が聞こえてきた。地下の水滴の落ちる音だって?いや、違うね。いまだってそのメロディーは耳に残ってるし、あの曲をいまでも歌えるんだからね。鉱山妖精ノッカーたちが、道に迷った自分を慰めるために演奏してくれたんだと信じてる。勇気が出て、それから間もなく地上への道が見つかったんだ。これは本当の出来事、実際の体験なんだ。」
コンウォール民話「ノッカーと怠け者バーカーの膝」
むかし、セント・アイヴスの南にあるトゥドナックの町に、バーカーという怠け者の男が住んでいた。ある日バーカーは、いい鉱脈を知っているというノッカーを捕まえて彼らの宝を横取りしようと思いついた。」あちこち捜して、とうとうノッカーの棲む井戸を見つけた。それから毎日バーカーは彼らを観察して、ノッカーの日課や休日、言葉などを知ることが出来た。
さて、そんなある日のこと、仕事から帰ってきた3人のノッカーが、宝の入った道具袋をどこに隠そうかと相談しているのを聞いた。1人目は「岩の割れ目に」、2人目は「シダの茂みの下に」、そして3人目は「おれはバーカーの膝の上に置くとしよう」と言った。すると途端に、バーカーの膝の上に目には見えない重いものが落ちてきた。それからバーカーは足が不自由になり、それは死ぬまで治らなかったという。
鉱夫仲間が、リューマチで自由の利かない足のことを、「バーカーの膝みたいに動かない」と表現するのは、ここから生まれたのである。