ドワーフについて -民話・神話や伝説の英雄と妖精-
古代スカンジナビア諸国では「ドウエルガルDuergar」と呼ばれ、その後ドイツ語では「ツヴェルクZwerg」、英語では「ドワーフ」と呼ばれるようになった。これら小人族の仲間の由来については、もともと北欧に住んでいたが、後から来たスカンジナビア人によって山岳地方へと追い払われてしまったフィン民族を起源とする説がある。(また、北欧神話においては、巨人ユミルの肉魂からはい出て、神によって人間と同じ知力と姿を与えられたウジ虫が小人になったとされている。)
また、鉄器時代に当時神秘的であった冶金技術を持つによって、人々の畏怖と尊敬を受けていた「錬金術師」や「鍛冶屋」が起源だともいわれている。彼らは、外部に秘密が洩れるのを防ぐため、山や森の奥の閉ざされた世界に住んでいたため、やがて魔法使いやわ矮人(ドワーフ)として古代スカンディナヴィアや、ゲルマン、ケルトの神話や伝説に登場することになったのである。
そして、彼らドワーフは人間の持つ能力の他に姿を見えなくする力や岩や壁を通り抜ける力を持っているとされる。また、時には人間の前に姿を見せて自分の住居の中に案内することがあるのだが、その際彼らに対して愛想を振る舞うとお土産として貴重な贈り物をくれる。
物語「いないいない姫」アンドリュー・ラング作
ある国の王と王妃は大変裕福であり、また互いをこよなく愛していた。けれど、何故か子宝に恵まれず妖精の助けを願っていた。そんなある日、庭園に出た王妃の足下で小さな声がした。「おれの望むものをくれるなら。可愛い赤ん坊をあげてもいいぜ。」声のする方を見ると、そこにはかえるにまたがったドワーフがいた。赤いとんがり帽子に大きな口ひげと外側にくるりとカールした顎髭をはやし、緑色の上着と赤色のマントをはおったドワーフだった。王妃はかえると約束を交わした。
それから1年後、王と王妃は美しく愛らしい待望の赤ん坊を授かるのだが、姫の14回目の誕生日が近づくと、約束の条件を思い出した王妃は、娘がドワーフの手に渡るのを畏れて、姫を遠い国へと旅立たせることにした。
小説「ホビット~ゆきてかえりし物語」J.R.R.トールキン作/山本史郎訳
「さて、ホビットと呼ばれるこの連中、背丈は低く人間の半分くらい、髭をはやした矮人(ドワーフ)よりも小柄です。」