フェノーデリーとは -民話・神話や伝説の英雄と妖精-
大きくて醜く、毛むくじゃらでとてつもない力持ちだが、見た目ほど悪いやつではなく、夜中に穀物を打ったりして農場の仕事を手伝ってくれる。ただし、人に姿を見られるのが嫌いなので、農夫が彼に仕事をやっておいてもらいたいと思ったら、近寄らないようにしなければならない。
マン島民話「ゴードン農場のフィノーデリー(その1)」ソフィア・モリソン編/ニコルズ恵美子訳
昔、ゴードン農場に、1人のフィノーデリーが住んでいた。ある晩フィノーデリーは、仕事が終わって家に帰る途中の鍛冶屋に会い、握手をしようと手をさしのべた。鍛冶屋は手のかわりに、持っていた鉄の鋤の刃を差し出したが、フィノーデリーは、まるで一塊の粘土のようにそれを握りつぶしてこう言った。「強いマン島の男が、この世にまだいるんだな!」
マン島民話「ゴードン農場のフィノーデリー(その2)」ソフィア・モリソン編/ニコルズ恵美子訳
ある晩、うろうろと歩きまわっていたフィノーデリーは、ギャラック渓谷のマリン・セイルというところで明かりの灯った粉挽き小屋を見かけた。フィノーデリーがのぞき込むと、ケイ・モアのおかみさんが麦をふるいにかけていた。おかみさんはフィノーデリーのでっかい頭に驚いたが、慌てずフィノーデリーにふるいを渡してこう言った。「おまえさんが川に行って、これに水を汲んできてくれれば、ケーキを作ってあげよう。たくさん汲んでくればくるほど、ケーキはずっと大きいのになるよ」そこで、フィノーデリーはふるいを手にして川に駆け下りた。だが、ケーキが欲しくてやっているのに、水はふるいからざあざあと流れ、水を全く汲めなかった。フィーノーデリーは怒ってふるいを放り投げ、こうわめいた。「ふるにのやつめ、ちくしょう!水を入れれば入れるだけ、ざあざあ流れていっちまう」その間におかみさんは逃げ出したので、フィノーデリーが戻って来た時には、粉挽き小屋は真っ暗だった。
マン島民話「ゴードン農場のフィノーデリー(その3)」ソフィア・モリソン編/ニコルズ恵美子訳
ある霜の降りた寒い日、ゴードンのおやじは手を暖めようと、ハアハアと手に息をかけた。「何で手に息をかけているんだ?」とフィノーデリーが聞くので、「手を暖めているのさ」と農夫は答えた。その晩の夕食の時、オートミール粥が熱いので、農夫は息をかけてそれを冷まそうとしていた。それを見たフィノーデリーが「何でそんなことしてるんだ・充分熱いじゃないか」と言うので、農夫は「熱すぎるから冷ますために息をかけているのさ」と答えた。するとフィノーデリーはこう言った。「気持ち悪いやつだなあ。1つの息で、暖めたり冷ましたりできるんだから」
マン島民話「ゴードン農場のフィノーデリー(その1)」ソフィア・モリソン編/ニコルズ恵美子訳
ある凍るような寒い冬、ゴードンのおやじは、フィノーデリーが服を一着も持っていないのをかわいそうに思い、服をあつらえてやった。フィノーデリーはそれを見て手に取り、こう言った。
「上着なんか着たら、背中が痛む!
チョッキなんか着たら、腹に悪い!
ズボンなんかはいたら、股をやられる!
帽子なんかかぶったら、ばかになる!
おまえが大きなゴードンの農場の主で、この谷の西も東もお前のもの、だけど、ラッシェン渓谷はお前のものじゃない!」
そう言ってフィノーデリーは服を投げ捨て、ジュアン・モア・クリアリーの家があるラッセン渓谷まで歩いていった。それから、フィノーデリーはこのジュアンのために働いた。