牛耳(ぎゅうじ)とは? 中国史
牛耳
牛耳(ぎゅうじ)とは、中華料理の高級食材である。
神への供物として
牛耳とは文字通り牛の耳である。牛一頭からとれる牛耳の数は限られており、そのため神権社会であった古代中国においては、牛耳は神への供え物にのみ用いられる神聖な食材であった。人間は神の恩恵に感謝する意思を示すために、ただその血を吸うことのみを許され、牛耳そのものが人の口に入ることは決して無かったのである。それは神への冒涜であり、許されないことと考えられていた。
食材としての利用
ところが時代が下り、神権政治が衰退して神をも恐れない人間が増えてくると、牛耳を食する人間が現れるようになった。とはいえ元々神の食べ物であるから、牛耳を食することが出来るのはごく一部の権力者に限られていたのである。やがて牛耳を食べることは権勢の象徴となり、多くの為政者が宴会で部下たちを前に堂々と牛耳を食べ、その権勢を天下に誇示する手段となった。
その後の牛耳
中国の歴史上、牛耳を食べた人間の権勢は長続きしなかったり、悲惨な末路をたどることが珍しくない。そんなとき、人々は牛耳がかつて神への供え物であったことを思い出し、彼らは神の怒りに触れたに違いないと噂し合ったという。そんな噂があったにも関わらず、権力者たちは牛耳を求め続けた。それほどにまで美味いのだろうか、今日においても牛耳を食せんとする人間は絶えることはないようである。