メリュジーヌ-民話・神話や伝説の英雄と妖精-
妖精モルガン(アーサー王物語にも登場)の姉妹である妖精プレジーヌとアルバニア王エリナスとの間に生まれた三人姉妹の末娘。その昔、父王エリナスを岩山に閉じこめたことで母プレジーヌの怒りをかい、この3人姉妹は悲しい運命を背負うことになるのだが、一番上の真ん中の娘パレスティーナはカニグーの高い山で父親の財宝を見張りながら一生そこに留まることを強いられ、真ん中の娘メリオールはアルメニアの城の中で一生ハイタカの世話をしつずけるさだめとなってしまう。そして、末娘のメリュジーヌには妖精国の掟に従って、生きている限り土曜日ごとに蛇の姿に返信するという運命が与えられた。
そんな悲しい運命を背負いつつも一度は城主の妻として多大な影響を与えた妖精メリュジーヌの逸話は、多くの文学作品に登場する。中でもメリュジーヌとリュジニャン城をめぐる物語として最も有名なものは、ジョン・ダラスの「メリュジーヌ物語(散文/1393年)」とクードレットの「メリュジーヌ物語、あるいはリュジニャン一族の物語(韻文/1401年)」とが挙げられる。前者は当時リュジニャン城の新しい城主となったベリー公ジャンがジャン・ダラスに執筆を依頼したものであり、後者はベリー公が城を手に入れるための資金を運ぶ任にも当たったパルトゥネの領主ギョームがクードレットに依頼して書かせたものである。
物語「妖精メリュジーヌ伝説」クードレット作
「この城は妖精によって作られたのだと世間で噂されている。従ってわしもパルトゥネの一族も、この妖精の血を引いているのだ。疑ってはくれるな。その妖精はメリュジーヌと呼ばれておったのだ。わしらはその家紋を武具につけ、それを喜びとしているのじゃ。このことを記憶しておくために、史実と物語を編んでくれればよい。わしの願いは当家の史実が物語になることじゃ。そうすればたちまち人々の耳にも入るであろう。」
「美しい妖精メリュジーヌと人間の男レモンダンは泉のほとりの運命的出会いの後に結婚、十人の子どもをもうけるが、夫はタブーを破り、妻の下半身が蛇になった姿を見てしまう。別れの日、月の晩に妖精の姿に戻ったメリュジーヌは、城から飛び去っていったが、子どもたちにも数奇な運命が待っていた…。こらはポアトゥ地方にあったリュジニャン城とその一族の物語である。」(森本英夫・傳田久仁子訳本「妖精メリュジーヌ伝説」より)