征服者・ピサロ!
インカ帝国シリーズ、第6回目です!
ピサロによる征服は、見た目、一瞬で終わりました。
しかし、なんとも無謀な振る舞いです。
なんと彼は、アタワルパを捕獲した後、早速黄金の確保に動いています。
数万の軍団を抱えた将軍達が周辺にゴロゴロいるのに、
まず財宝集めからとは、なんとも……
彼はどこまで情報をつかんで、こんな大胆な行動に出たのでしょうか?
先住民の行動は、インカの王族も含めて、真っ二つに分かれました。
ひとつは抵抗を継続するというもの、
もうひとつは、うまくスペイン権力に擦り寄る、という判断です。
この時の、一部の先住民の判断は、驚くべきものです。
あっさりとスペイン側に協力して、権益を確保しました。
しかも、インカ王族の中でも、そうした判断をした人が数多くいたのです。
結局のところ、歴史の歪みは、この頃から既に始まっています。
ベタンソスは、インカ王族の語った歴史をそのまま忠実に記録したのでしょうが、
彼の妻は、イニャカ・パナカのコヤでした。
つまり、パチャクティの偉大さを称揚し、ワスカルの悪逆非道を訴える内容になるのです。
一方、インカ・ガルシラーソ・デ・ラ・ベガは、カパック・アイユ出身の母を持ちます。
幼い頃から植民地で、母の一族から歴史について教えられてきた、
その内容を書き起こしたのが「インカ皇統記」なのですが……
当然、そこではワスカルが正しく、パチャクティやアタワルパは悪人とされています。
では、スペイン王室は、どちらに組したのか?
もちろん、ワスカルです。
バカ・デ・カストロは、キプカマヨク達の証言を集めて、
ワスカルまでのインカ王朝の正統性を記録に残そうとしています。
ともあれ、先住民は、この状況を素早く飲み込み、適応しました。
それは、彼らが真の意味で征服されたわけではない事を意味します。
スペイン人勢力もまた、パワーバランスの中のひとつの要素に過ぎません。
そして彼らは、彼らなりの「互酬性」の世界に、外来の人々を組み込んでいったのです。
しかし、コンキスタドール達は、その多くが生涯をまっとうできませんでした。
次回以降の内容になりますが、ピサロによって傀儡皇帝とされた
マンコ・インカ・ユパンキは、ビルカバンバで抵抗活動を継続する羽目に陥りますが、
実は、ピサロより長生きしていたりするんですね。
太く短く。
命知らずの征服者の人生って、そんなものなんでしょうか。