福島第一原発2号機 原子炉の底に大量の核燃料か
東京電力福島第一原子力発電所の事故で核燃料が溶け落ちた2号機で、原子炉の底の部分に大量の核燃料が残っている可能性が高いことが分かりました。原子炉を透視する特殊な調査で核燃料とみられる大きな影が初めて捉えられたためで、東京電力は核燃料の取り出しに向けて、さらに分析を続けています。
福島第一原発の事故では、1号機から3号機の3基で核燃料が溶け落ちる「メルトダウン」が起き、このうち1号機は、これまでの調査からほとんどの核燃料が原子炉の底を突き抜けたとみられている一方、2号機と3号機では、核燃料がどこにあるのか今も分かっていません。
このため東京電力は、さまざまな物質を通り抜ける性質がある「ミューオン」と呼ばれる素粒子を使って、原子炉をレントゲン写真のように透視する調査を高エネルギー加速器研究機構などと続けています。
その結果、2号機の原子炉の底に大きな黒い影が映っているのが確認され、分析した結果、溶け落ちた核燃料のほとんどが、炉内の構造物とともに原子炉の底にたまっている可能性が高いことが分かりました。溶け落ちた核燃料とみられる影が捉えられたのは、今回が初めてで、こうした影は、原子炉の壁の部分でも確認されたということです。
今回の調査結果は、核燃料をどう取り出すかという廃炉に向けた最大の難関の工程に大きく影響するだけに、東京電力はさらに分析を進めています。
廃炉への影響
「ミューオン」は、宇宙を飛び交っている「宇宙線」と呼ばれる粒子が大気と衝突してできる「素粒子」の一種です。さまざまな物質を通り抜ける性質があるため、建物などを通り抜けたミューオンを観測することでレントゲン写真のように中を透視することができます。
福島第一原発では、去年から強烈な放射線で、人が近づけない原子炉周辺の調査に活用されていて、このうち1号機では、高エネルギー加速器研究機構などの調査で、溶け落ちた核燃料のほとんどが、原子炉の底を突き抜けた可能性が高いことが明らかになっています。
一方、2号機では、名古屋大学などの調査で、核燃料の大部分が溶け落ちた可能性が高いことは分かりましたが、どこにあるかまでは分かっていませんでした。
核燃料がどこにあるかは、廃炉に向けた最大の難関とされる溶け落ちた核燃料を、どう取り出すかという工程に大きく影響します。アメリカのスリーマイル島原発の事故では、溶け落ちた核燃料は、すべて原子炉の中にとどまったため、ここを水で満たしたうえで原子炉の真上から核燃料を取り出しました。水には、放射線を遮る効果があるからです。
しかし今回核燃料の多くが原子炉内にある可能性が高いことが分かった福島第一原発2号機の場合、原子炉が損傷して水漏れが起きているため、水で満たすのは簡単ではありません。国と東京電力は、水で満たさずに核燃料を取り出すことも検討していますが、その場合、作業員の被ばく対策など新たな課題への対応が求められます。
現在の工程表では、5年後の平成33年までに1号機から3号機のいずれかで核燃料の取り出しを始めることになっていますが、40年かかるとされる廃炉に向けて、極めて難しい課題が山積しているのが実情です。