夜闌 香焚き 天を夢むwww
このスレは架空の王朝『呉王朝』を舞台にした参加型のネタスレです。
※呉王朝ってどんな国?(これまでのあらすじ)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9102/1328123978/
【現在の状況】
六部尚書と大宦官・李畢嵐によって皇帝白牡丹は廃立され、京師広陵では皇弟白如月が即位
白牡丹は洞庭湖の辺、岳州の君山で再起
【地図】
※しばらくお待ちください
【勢力紹介】
白如月:三省を廃止し、六部を皇帝に直属させた。中央集権指向
白牡丹:湖南の刺史、藩鎮を糾合した。地方分権指向
【中断前に参加されていた方へ】
領地、官職は今日から30日間(~3月6日いっぱいまで)維持します。
期間中の復帰がない場合は、展開によっては部分継承or移転いたします。
それでは、どうぞ、お気軽にご参加ください。
過去ログ
http://logsoku.com/thread/gimpo.2ch.net/nanminhis/1261757311/
http://logsoku.com/thread/toki.2ch.net/nanminhis/1273187469/
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9102/1295669911/
つまらないスレになったら、そのときは心ゆくまで荒らせばいいだろ
>>1の説明やあらすじも読めなかったのか
>>100
>では、スレや古代中国史を熟読して勉強してから出直そう。
暴論をいえば、>>1のあらすじ、全ての過去ログも含めて読めば何も問題はないでしょう。
ただ、過去ログを熟読しろなどと言うつもりは、今もこれからも誰に対してもありません。
しかし最低限、【中国史的世界のイメージ】は持っていてください。
とっつきやすい入口はいくらでもあると思います。
蒙鐸粲さんのような凄い知識を身につけろということではありません。
自分に出来る範囲・無理のない範囲で親しみ、中国史的世界のイメージを作ってください。
なんか、まったく何のイメージもないまま、無軌道に投稿しているように見えてしまいました。
もし、歴史に親しもうとしても苦痛だ、興味が持てない、辛いということであれば、
残念ながら、スレとご縁がなかったと思ってください。
中国史が好きでなければ参加しててもつまらないと思いますよ。
私は、著しくスレの趣旨に合っていない人は、
「スレに書きこんでいる」だけで「参加している」とはみなしません。
「私自身の書き込みの中にファンタジー的な要素が含まれているではないか」という反論があるかもしれません。
しかし、それは「楚辞」「山海経」「捜神記」「捜神後記」など、中国古典を下地に独自のアレンジをしたものや
屈原の故事などを下敷きにしたものです。
また、超俗的な人物白牡丹を描くにあたり、死の隠喩としての蛇、意思と精神の隠喩としての琴、
>>65に嫌というほど詰め込んだ心情描写など、そういったものがファンタジー風に見えないこともなかったかもしれませんが。
☆「ウソ」なりきり企画☆
夜闌スレやるから立てないけど浮かんだアイデア
ジャンル:中華モノ
>>1の立ち位置:悪宦官
シナリオ:時は王朝末期。長期にわたり在位する皇帝はとうに政務への興味を失い、日夜後宮に入り浸って朝廷を顧みない。
そんな皇帝に代わって万機を決済したのは、主君の寵愛を一身に集める宦官だった。
この宦官、自宮して内廷に入ったのだが、
皇后の嫉妬により苛め殺されたかつての皇帝の寵姫に酷似した容貌を見初められて
上り詰めたという経歴の持ち主である。
朝廷で憮然と天子同然に振る舞い、私的には不正の限りを尽くす宦官を心ある科挙官僚は憎悪したが、
あらゆる弾劾は握り潰され、逆に宦官によって弾圧されていった。
日に日に高まる民衆の不満。自然、官僚たちの頭には「今上さえ崩御すれば……」という思いが浮かぶようになる。
──君山
精悍な青年皇族、零陵公白風悠が訪ね来た。
白牡丹は彼の手を取って迎え、庭を望む窓辺の席に座らせる。
皇帝は手ずから茶を淹れてもてなし、積もる話も和やかに進む。
白牡丹は云う。
風悠は少し背が伸びたのではないか?
先だって広陵にて謁見した折から、時間が経ったが、前にもまして立派な若者に成ったようである。
そなたが、広陵の「白如月」ではなく、朕のもとに参ってくれたのは、うれしきこと。
これよりは、そなたをわが庇護下の弟々ではなく、一人前の同盟者として扱う。
その証を、
ぎらり。
白牡丹はつと立ち上って、部屋の奥にある櫃の中から剣を取り出し、鞘から抜いて見せた
この剣を授けるによって示そうぞ。
それとともに、そなたには、もはや「零陵公」ではなく、「永王」と名乗られるがよい。
そなたが為すべきことは一つ。
この白牡丹の敵なる者の前に立ち塞がり、残らず討ち倒すこと。
やってくれような、永王よ?
剣を再び鞘に収め、白風悠の足下に置き、にこりと笑んだ。
(ようこそ、よくお戻りくださいました。)
(簡単な現状は>>1です。あまり難しく考えなくていいです。)
(質問がありましたら、質問スレでなんでも聞いてください。)
もったいなきお言葉!
来たるべき時の為備えておいた結果です。
(風悠はにこやかに答える)
この剣・・・。そして永王という名・・・。
身に余りある光栄です。
この剣をもって陛下の敵を殲滅して見せましょう。
なんなりとお命じください!
戦いの時は間近に迫っている。それに一たび始まってしまえば、
この湖南の山間に鳴り響く戦いの鼓の音が、いつやむのか、それは誰にもわからないのだ。
かかる時代にあって、恐ろしきものとは、広陵に座す我らの敵のこともそうだが、
皇族白氏が各々の旗を振り立て我こそが正当な天子なりと主張を始めることだ。
よいか、永王よ。
我々白氏の体内には、創業から二百六十年経っても消えぬ草原の血が流れている。
いかに漢族と通婚しようと、漢人の文化を吸収しようと、我々が鮮卑人であることは打ち消しようのない事実なのだ。
従順に振る舞っていても、漢人の脳裏には、「蛮族に支配されている」という意識が潜んでいる。
白氏の王侯が手に手を取り合ってこそ、
呉の帝権が成り立とうものを、白氏同士の争いが激化すれば、たちまちに漢人の民族意識が首をもたげてくる。
そこで重要なのがそなただ、風悠。
そなたは皇族の中で誰にも先駆けて朕のもとにはせ参じた。
これは、王侯への手本となる。
そなたはすでに行動をもって王朝に貢献したというわけだ。
「永王」の名とその剣はそのことに対しての褒章である。
さらに役に立ってもらうぞ。さすれば、そなたにはさらなる恩寵が与えられるであろう。
ところで……
http://kowloon.ddo.jp/cgi/up/10MB/src/up0014.jpg
南詔国を知っているな?
その南詔国と、そなたはよしみを通じたことがあると聞いた。
そなたの仲介で、南詔王とつながりを持つことはできるだろうか?
ははっ!
南詔王とは過去に誼を通じました。
一度か二度会った後はあっておりませんが・・・。
(顔に自身の名さが現れている)
わかりました。
一度南詔王の下へ参じてみましょう。
相手にしてもらえるかはわかりませんが陛下にお会い下さるよう願いたいと存じます。
きっと成功させてみせましょう。
よろしいでしょうか陛下?
南詔王自身が、必ずしも雲南からこちらに遠来する必要はないのだ。
呉が用があるのは南詔という国であって、一人の王ではないのだから。
呉と彼処の間に国交が生まれ、森の栗鼠が木から木へと伝って雲南から湖南へと来られるように、
人の平和な往来が生まれればそれでいい。
けして、南詔の機嫌を損ねてはならないよ。
居丈高に振る舞うことは、けしてしないよう。
かといって、不必要に下手に出る必要もないのだが。
要は、わだかまり無く事が運べばいいのだ。
もし、自信がないのなら、ただ朕の用向きだけを伝え、始終誠意をもって南詔王に相対しなさい。
難しい問答に無理に答える必要はないよ。
風悠は風悠のつとめを、胸を張って果たせばいい。
もしも不安になった時には、永王という名とその剣を心の支えとしなさい。
その立派な称号と剣は、他の誰でもなくそなた自身を指すのだから。
はい!
ありがたきお言葉。
この白直、そのお言葉を常に胸に刻んでおきます。
南詔国へ向かい国交を願っていることを南詔王に伝えればよろしいのですね。
お任せください。
永王の名、そしてこの剣の名の下に成功させて見せましょう。
わしは気ままな漁師のおやじ。今日も洞庭湖に漕ぎ出でる。
でっかい湖、広い空。
わしはぽっつり、小さな舟に、酒を一瓶、竿一本。
お天とさまが沈む頃にゃ、こんな景色はあるめえよ。
いつも変わらぬ気ままな暮らし。
ところがその日……おい、どうしたと思う?
びっくりすんじゃねえぞ。何と天子様に会ったんだ!
洞庭に、ぽっつり浮かぶ、島ひとつ。
君山っていってよ、そっから綺麗な音楽が聞こえてくる。
わしはいーい気分になって、舟ですいすい向かったわけよ。
天子様は若え兄さんだったよ。兄さん上手だねえと声かけりゃ、
こりゃまあ何と顔いっぺえに笑いなさる。
おっと、天子様っていうからって、綺麗な着物なんか着てるの想像すんなよ。
わしらと大して変わらない服でよ。顔は真っ黒に日焼けしてんのよ。
え、じゃあ何で天子様ってわかるのかって?
そりゃ、そう言いなさるからよ。最初はわしも笑い飛ばしたね。
馬鹿言ってんじゃねえ、天子様は都にいてよ、
綺麗な着物着てでっかい宮殿に居りなさるんだってよ、てえな。
そしたら天子様はこう言いなさるのよ。
「でっかい宮殿! だったらここも負けてない。空は時間で色が変わる極上の広い天井。
山々は味のある柱。風は錦の衣なんだ」とよ。
何ともしゃれたことを言われる方よ。
んで、天子様はまた一曲弾いてくだすった。これが何とも好い調べでよ。
わしがそん時思ったのは、あーあ、このお人は言葉なんかより、楽器でお話になる人なんだってことよ。
あん? さっきから柄にもなく詩みてえなこと抜かして気持ち悪いって?
うるせえや、話の腰を折るんじゃねえ。
それから天子様はお茶を淹れてくだすった。
畑のあぜ道を通ってお住まいに向かってよ。俺たちんと変わらねえ家に住んでらした。
いかにもそっけなく淹れるもんだと思ったが、おめえ、杯に鼻近づけたとき、
こんないーい気分があるんだってびっくりしたね。
こんな風に、言葉の外に言い知れぬもんを表現されるお人が、
いってえ今までどんな人生を歩んでこられたのか、わしは知りたいと思ったが、
天子様は過去のこととなると、何もお話にならねえのよ。
だがわしは、そのお人がそのお人だからこそ、天子様とお呼びするのさ。
おい、笑ってんじゃねえ。ほらじゃねえよ。
何だったら今からみんなで行くかよ?
いつでも来ていいって言いなすったからよ。
もう一年か。何がって、ここに赴任してからのことさ。
進士及第したのも、未来の宰相とおだてられたのも、昔の話。
出世に血道を上げることもなく、
煩わしい上役への付け届けも怠っていたら、
いつの間にかこんな所で刺史をやっていたってわけ。
今の生活は、実は結構、気に入っていたりする。
仕事にも慣れたし、同僚とのソリも合う。
洞庭湖を見に、ときどきは都の旧友も来るから退屈しない。
飯店に行けば、岳陽楼を見に来た風流人が、即興の詩会を開いていたりするしね。
メシも美味けりゃ、水も美味い。てことは酒も美味いわけで、
言うことなしとは、このことだ。
飯店にはいろんな奴が来る。あそこで騒いでいるのは、仕事を上げた漁師たちだろう。
平民と官吏が一つ所で、互いを気にせず騒げるようになったのは、
先帝の治世になってからだ。
私が官吏になったばかりの、叡宗様(先々代)の終わり頃の京師では、
あり得ない光景だった。
先帝があんな事になって、弟君が立たれてからは京師は元の木阿弥らしい。
とはいえ、地方の締め付けはまだそんなにきつくない。
私にはこっちの方が合っているから、できれば変わらないでもらいたいが……。
おっ、来た来た! ここの干鍋鶏は最高だ。
官吏の身で、口が裂けても言えないが 京師の皇上より、美味い物食ってる自信がある。
見るからに辛そうな真っ赤な鶏鍋。見てるだけで涎が出てくる。
箸を入れ、ハフッと掻っ込めば、く~~う、美味い。この一皿の為に生きてるわ。
顔中汗だらけにしながら半分ほど食べる。
その時ぐらいだな、漁師たちがかわるがわる謡を歌いだした。
好い好い。ここの民謡は、京師のより情熱的だ。自然と身体が揺れてくる。
歌い手が交代し、交代し、次に立ち上がった若者が歌い始めた。
あ、何だこれ。
音のうねりが綺麗に身体に入ってくる。特徴的なのに、全然嫌な感じがしない。
いくらでも聴いていたくなる。
すると、漁師たちが「天子様、天子様」と盛り上がってるのに気付く。
そういえば、近頃漁師たちが「君山の天子様」とか騒いでるって通報を受けたな。
「よいよい、放っておけ」そう軽くあしらった。
京師であったら極刑だろうが、岳陽のこの雰囲気がなせるわざだろうか、
私はそんなことでいちいち処罰したくなかった。
もう、そんな時代でもないだろうに……。
どれどれ、あの郎君が噂の「君山の天子様」か。少し顔を見てやろうかい。
その時、生きていてこんなに驚いたことはなかったね。何があったと思う。
いらしたのは、廃されたはずの先帝陛下じゃないか!
麻の衣を着て、日焼けして、漁民と何ひとつ変わらない出で立ちだったが、
昨年の正月の祝賀でちらと見た顔は忘れない。
そうすると、私はピンと来た。「死んだ」筈の人が生きている。
つまり、「死んだ」ことにされて位をすげ替えられたわけだ。役人世界でもよくある事。
そうか、生きてらしたのか。
その場は声を立てずに、後日、君山を訪ねた。
こんな場所で、天子と同席して茶を喫むなんて、私も平凡なようで数奇な生き方をしてるじゃないか。
詳しい事は話されないが、事情は大体飲み込める。
まだ天子を名乗られるなら、私はそちらに従うだけだ。
(岳州刺史、白牡丹に付き、それまで通りに統治を任される)
呉の官界は、所詮清廉な人間が生き残れるような生易しい世界ではなかったのだ。
科挙では休民の後塵を拝した同年(同期合格者)達が次々と官職を重ねていく中、休民自身の出世ははかばかしくなかった。
「おお、哀れなるかな、諸葛同年よ。かつてあれほど名を馳せた貴方が、まだ寒職に甘んじておられるとはねぇ。」
「だがきみも悪いのだ。官僚にも良しと悪しとがいる。」
「落ちこぼれとばかり付き合っていれば、いつまでも出世はできまいよ?」
「どうかね、この王藍雪と友好を結ぼうではないか!」
「『君が桃をもって投ずれば、吾は李をもって答えん』。」
(※条件付きだが、友好を結ぼうではないか、の意)
「わたくしならば、きみを長孫大臣に推薦してあげることもできるのだが。」
「……『不義にして富み、かつ尊きは、吾に於いて浮雲の如し』、だよ。王同年。」
(※汚い手を使って富貴を手にすることなど、私は望まない、の意)
「私は長孫大臣のしていることを知っている。私にその片棒を担ぐことはできない。」
諸葛休民の返答に、王藍雪は唇をねじ曲げ、無理に笑ってみせた。
「わたくしはできるだけの忠告はした。後、どうなろうと、きみが招いたことだ。」
こうして、休民の出世は絶望的なものになった。
無実の罪に問われることはなくなったものの、地方に出され、齢五十を越えるまで地方官をたらいまわしにされている。
岳州に赴任して一年目。
「今の生活は、実は結構、気に入っていたりする。」
「仕事にも慣れたし、同僚とのソリも合う。」
「洞庭湖を見に、ときどきは都の旧友も来るから退屈しない。」
「飯店に行けば、岳陽楼を見に来た風流人が、即興の詩会を開いていたりするしね。」
「メシも美味けりゃ、水も美味い。てことは酒も美味いわけで、 言うことなしとは、このことだ。(>>3)」
かれはそう言って朗らかに笑っていたが、心中の悔しさは、ひとかたならぬものがあった。
諸葛休民にとって、白牡丹との出会いは、一度諦めた大志の復活に他ならなかった。
それがために、かれは偏執的なまでに勤労するのだった。
岳州刺史は部下の説得に奔走する。
・白牡丹が立太子前、楚王と呼ばれていたこと
・白牡丹の治世は、湖南のお茶の買い付けが多く経済が潤っていたが、白如月に替わって実入りが減ってしまったこと
・これらの事情から、湖南は親白牡丹の色が濃いこと
・よって周囲の州や藩鎮との合力が望めること
・今の広陵にこちらの動きを抑制する余力はないが、時が経てばどうなるかわからないこと
民間では、もっと早く話が伝わっていた。
漁父の口から口へ、謡から謡へ。そして足を伸ばして。
君山へは舟を浮かべればすぐに行ける。
白牡丹と岳州人との話し合いの場も持たれた。
「もう、虚礼は必要ないんじゃないかな。」
その言葉と、岳州にもともとあった闊達な気風……
洞庭湖に、一舟が浮かんでいた。
舟の上には、農民、漁人、芸人、工人、商人、武人、文人、さまざまな階層の人々。
その中に岳州刺史と白牡丹も混じっていた。
岳州刺史が口を開く。
「今日、この場を設けたのは……
ここにいらっしゃる方を、岳州の皆々が『陛下』とお呼びするか、話し合うためだ」
手続きは、すぐに済んだ。
「州刺史様は、今までよくして下さいましたよ。これからもお願いします。
刺史様がこれからもいて下さるなら、このお人を陛下と呼ぶのに文句はないです」
「話し合うまでもなく、このお人はわしら漁師の天子様よ。なあ」
その後は、宴会だった。飯店のおかみや街の夫人が舟で料理をし、
それを食卓に並べた。
楽人が演奏し、舞芸を生業とする者が、立ち替わり舞った。
白牡丹は、目を閉じていたが、つうっと涙をこぼし、抑えきれなくなって哀号した。
その後は、どれだけ騒いだかわからない。
役人と平民がともに顔を真っ赤にして酔っ払い、肩を組んで湖南の民謡を歌った。
白牡丹も漁師に肩を組まれ、絡まれ、背中をばしばし叩かれている。
「朕も、歌いたいな。」
その声に、いくつもの声がやれいやれいと囃し立てた。
夜空は高く澄み、月はどこまでも青かった。
「茶、木綿、絹の増産と輸出で経済発展させる。それでよろしいですな。
交易は富を生むのみならず、諸侯や軍閥との友好関係ももたらしてくれましょうぞ。
その上で初めて広陵を攻めるのが、最上の策にござる。」
「広陵との短期決戦は反対。それは私も同意見です。」
(今まで黙っていたチン州刺史が発言する)
「しかし軍備拡張とて軽視はできません。諸侯は我々の隣で不気味な沈黙を守る南詔をお忘れか?」
「あの国はもともと雲南の小国でしかなかったのが、今や南西の脅威です。」
「もしかの国が我々に矛先を向けたら……」
「確かに、南詔がどこから攻めてこようが急峻な山岳や起伏の激しい土地に阻まれるのは確かです。」
「しかしそれだけで敵は防げません。真っ先に戦地になるのはわがチン州ですぞ。」
「チン州としては、いつ攻められても万全の用意をしておきたい。」
「我々の軍備は脆弱だ。」
(湖南観察使が言う。)
「翠大王、貴方と蚩尤の子達を侮辱するつもりはない!」
(ぎらりと睨み、反感を態度に表した翠絶を、湖南観察使は慌てて宥めた)
「我々の軍は、各州の州軍、翠大王の果雄軍、私の子飼いである鎮軍、そして各地の長征健児(※あらすじの>>4)」
「その寄せ集めなのです。統一された指揮系統もないし、果雄軍などは言葉も通じない。」
「全軍の数は15万と多くとも、バラバラに戦うしかないのでは、統率のとれた敵と戦えば確実に終わりだ。」
「軍制改革は、一朝一夕にできるものではない。」
(内政拡充派の黄加陳も、この時ばかりは軍制改革のことを考えていた)
「が、やらなければならないことだとは思う。」
「改革の達成までは、南詔とは友好関係を築かねばならない。」
「それには先ほどの交易政策を活用すべきだし、外交も上手く進めなくては。」
それまで意見を黙って聞いていた諸葛休民が、まとめに入ったのはこのときだった。
「大体、意見は出揃いましたな。」
「まとめると、我々がすべきことは以下の事項です。」
①官僚の綱紀粛正
②茶、木綿、絹の増産と輸出、流通網の整備
③南詔への使節の派遣
④指揮系統の統一を目的とした軍制改革
「どれも早急に行うべきことですし、可能な限り並行して行わなければいけませんね。」
「ただ、(ネタ書き的な意味で)優先順位を設けるとしたら、どうすべきでしょうか。」
「それは、ここで話し合っても答えはでないと思います。」
「陛下、どうしますかな。」
そうだな……
広く意見を募ってみたらどうだろう。
我々の話し合いでは出ない意見が出るかもしれない。
「陛下らしいですね。では、このことを各州の役所や民衆にも通達し、意見を募ります。
意見が出たら、陛下にお伝えします。」
ああ、頼むよ。それでは、散会。
※ということで、【このレスの真下のレス】でネタ書きの順番を決めたいと思います。
①→②→③→④のように書いてください。
無効レス(優先順位の書かれたレス以外のレス)の場合は、その下の書き込みを適用します。
創業を語る上で、この乱を無視することはできないだろう。
この乱こそ、中統朝の最初の大きな試練、そして指揮系統の統一された国軍が実力を示した晴れ舞台だった。
軍の指揮系統の統一。これが政事堂の議題に上った時、その実現を最も切望したのは誰だったのか。
皇帝白牡丹か、それとも諸葛休民か。
意外にも、その答えは版図の大部分を有する湖南観察使だった。
当時、湖南観察使領には以下のような軍事力が存在した。
①包括する五州の州軍
②節度使に直属する藩鎮主力部隊、牙軍(長征健児=あらすじの>>4)
②の牙軍は、当初こそ藩鎮の手足となって闘う精鋭であり、本来、藩鎮の権力を象徴するものであった。
しかし、軍功の見返りに手厚い給料をもらい、軍団内部で通婚を重ね、軍職を世襲するようになった彼らは
次第に増長するようになる。
「藩鎮の統帥」ではなく、「優遇してくれた藩鎮の統帥」にのみ、忠誠を誓うようになったのだ。
さんざん贅沢に慣れ、軍団内部に味方を多く持ち、
統帥の首すらすげかえるまでに増長した牙軍の兵士たちは「驕兵」と呼ばれ、
湖南観察使もまた、その扱いに頭を悩ませていた。
軍制改革によって、この厄介な身中の蟲を駆除することができれば……。
湖南観察使の頭にはそんな考えがあった。
政事堂にあって、この改革に強硬に反対すると思われたのが彼であり、
彼の賛成は白牡丹を内心驚かせたが、諸葛休民に言わせれば、「わかっていたこと」だとか。
ともあれ、こうして次のような改革が行われることになる。
①軍権の中央への集中
これは、段階的に行われた。まずは外形的に、次第に実質的に。
・皇帝直属の「枢密院」を設置し、軍の最高権を集約
→皇帝は「天下兵馬大元帥」を兼任。軍の最高統帥者に
→各州刺史は「将軍」を兼任
→「州軍」という枠を撤廃。各将軍(刺史)に直属する「方面軍」扱いに
→各「方面軍」には、各州出身者を均等に配属
→「呉王朝の軍」への所属意識の高揚を目指す
→合同訓練
②指揮・指示の統一
・指示は全て湖南語に(諸少数民族の部隊に対しても)。旗や動作などと合わせて繰り返し訓練し、身体に覚えさせる
・指揮時の旗、采配、動作などは全体で統一
③士官学校の設置
・教官には引退した武官を登用。優れた指揮官を生みだすとともに、引退した武官が不満を持って反乱することを防ぐ
・軍事教育とともに、高潔な精神教育も実施
④徴兵制
・兵士は等しく農民から徴兵
・勲功者は出自に関わらず褒章し昇格させる
こうした改革は、一つには強力な軍を生みだすために、そして別の裏の目的を持って行われた。
そして「裏の目的」もまた、果たされつつあった……。
×身中の蟲
○獅子身中の蟲
頼みますよ
早速のレス感じ入ります
ちなみに兵の人数はどの位でしょうか?
まず別人を装って複数レスするのやめてもらえます?
人数多くいるように見せてやる気出してもらおうとか考えなくていいんで
大体そういうの分かるし萎えるんですよ
貴方、私のこと応援してるの?
それともやる気を削ぎたいの?
後者なら上手くいきまくりですよ
まあスレを放置はしませんがね
書いたネタに素出しでレス付けられると思わず「ウゼエ」って声に出しちゃいます
スレ主の立場の私にここまでぶっちゃけさせるなんて正直すごいですよ
あなたのウザさ
尊敬します
なんか建前で話してても貴方の場合通じないと思うんですよね
「察してくれ」ってのが通じないというか
今までも貴方のしてきたこと分かってたけど我慢してきたんですよ
もう我慢できない
私がファンタジー要素入れるのは根幹の中国史があるからこそですよ
別に知識に特化してる必要はない
文の長短も関係ない
でもね、横光三国志すら読んでない手合いの相手をなんでしなきゃなんないの
中国史スレ立てて子供の相手とか
ファンタジー要素だけに惹かれてくる奴の相手とかなんでしなきゃいけない?
げんなりですよ
応援してくれるなら図書館に走って本でも読んでくださいな
はーすっきりした
このぐらいの本音も吐き出せないようじゃいずれストレスたまって2ch来るのも嫌になるのは見えてますからね
[177] 白牡丹 ◆Enju.swKJU [] sage 2012/03/02(金) 14:10:08.86
>>176
まず別人を装って複数レスするのやめてもらえます?
人数多くいるように見せてやる気出してもらおうとか考えなくていいんで
大体そういうの分かるし萎えるんですよ
貴方、私のこと応援してるの?
それともやる気を削ぎたいの?
後者なら上手くいきまくりですよ
まあスレを放置はしませんがね
書いたネタに素出しでレス付けられると思わず「ウゼエ」って声に出しちゃいます
スレ主の立場の私にここまでぶっちゃけさせるなんて正直すごいですよ
あなたのウザさ
尊敬します
なんか建前で話してても貴方の場合通じないと思うんですよね
「察してくれ」ってのが通じないというか
今までも貴方のしてきたこと分かってたけど我慢してきたんですよ
もう我慢できない
私がファンタジー要素入れるのは根幹の中国史があるからこそですよ
別に知識に特化してる必要はない
文の長短も関係ない
でもね、横光三国志すら読んでない手合いの相手をなんでしなきゃなんないの
中国史スレ立てて子供の相手とか
ファンタジー要素だけに惹かれてくる奴の相手とかなんでしなきゃいけない?
げんなりですよ
応援してくれるなら図書館に走って本でも読んでくださいな
はーすっきりした
このぐらいの本音も吐き出せないようじゃいずれストレスたまって2ch来るのも嫌になるのは見えてますからね
[132] そらまめ ◆2kpigsse4Q [] 2012/03/04(日) 18:47:32.52
がきは高級官吏と精霊の間に生まれたがきだろ
[133] 紅梵輔次郎 ◆pCuQBdRAvw [] 2012/03/04(日) 19:05:55.84
名無し様、八戸様、色々と私の分身そらまめに三戦指南をいただき、誠に誠に有り難うございました。
以降も何事かあらば皆様より御指導御指南いただけますよう、よしなに願いまする。
(スレの外部で、「夜闌でこのキャラやってるよ」など公表することは、しないでください)
勝手なルール作るなアンジェ
お前自身はアンジェと公言して他の奴がダメな訳を説明しろ
(なぜかというと、
(私の場合は「残念ながら、すでに衆知の事実になってしまっているから」です
(衆知の事実になっている、というのは不幸なことです
(デメリットしかありません
(スレの外でレスを催促される、スレの中でまで外での話を空気読まずにしてくる人がいる、
(中の人を見て絡むか絡まないか決められてしまう……
(経験が少なかった数年前の、取り返しのつかない失敗を
(今どれだけ後悔しても追いつきません
(これから参加される方には、私と同じ大変な思いはして欲しくないんです。
(中の人なんか意識せず、意識させず、のびのびと参加してほしいんです。
(縛り付けているわけではありません)
ならそのコテとトリップを外せよ
そうしたらどんなに似てると思っても確信は持てない、嵐もな
荒らされたくなかったらコテとトリップを一新するべきだ
もう遅い
初めから白牡丹 ◆Enju.swKJUのコテを使わなければ
無駄なレスが付かずに済んだのに
>>5のルールに説得力がなくなるのも当然
これはクマッタにも同じことが言えるんだがな
ねえねえ、最近変わったよね。何がって、この街がよ。
前は平気でそこら中にゴミが捨ててあったのに、今は嘘みたいにきれいじゃん。
何かね、陛下の“チョクメー”なんだってさ。
「いかなる理由があろうとも、唾棄、ごみの投棄などしてはならぬ」
たまに街に出てきて、気付いたことを“チョク”にするんだってよー。
前にもあったよね。
確か……
「用無くして、憂さ晴らしやいやがらせで花樹草木を損ねてはならぬ」
「岳陽楼、魯粛墓などの名勝に落書きをしてはならぬ」
「口汚い言葉で人を罵ってはならぬ」
何それー。政治家って、もっとこう、違うもんなんじゃないの?
でもまあ、雰囲気、良くなったよね。
私、まだ陛下見たことないんだけど。超見たいんだけど。
私一回しか見たことないや。何か酒場でオヤジどもとさわいでて、近寄れる雰囲気じゃなかった。
えっ、陛下ってそういうノリなの? 何か君山で静かに楽器とか弾いてるんじゃないの?
あとさ、聞いたんだけど、ほら、陛下って何でか知らないけどボロい服着てたじゃない?
うんうん。
街歩いてて、普通に不審者と間違われてしょっぴかれたって!!
「「「 えー! 」」」
それ洒落にならなくない?
もちろん、刺史様がすぐにやめさせて、平謝りに謝ったらしいよ。
で、州の予算で服を新調することにしたって。
あの劇に出てくるみたいな皇帝の服は着たくないっていうから、普通に街の人が着てるようなのにしたって。
そのしょっぴいた奴どうなったのかな。
でも、その話もなんかわかるかも。
私聞いたんだけど、ちょっとキてるとこもあるらしいよ。
この前、媽媽(ママ)の友達が夕飯のお裾分けに行ったらさ、
庭にいて、お菓子を屋根の上とか縁の下に放り投げて、「うまいか?」とか言ってたんだって!
「「「 えー! 」」」
で、その人が持ってきたもん渡したら、普通にお礼言ったんだけど、
帰り際に背中をバシッ!ってはたかれて、
「雑鬼をつけてると、よくないよ」とか言ったんだって!
ヤバいね。
キてるね。
でもさ、それからその人、体調悪かったのがすっかり治って、
何か若返ったみたいにイキイキしてるらしいよ。
はー……。
皇帝って、やっぱ普通と何か違うんだね。
面白いんだけど、ちょっと近寄りがたいっていうか……。
人生でやりがいを感じる時があるとすれば、今は確実にそうだね。
ひょんなことから天子にすごい仕え方をすることになった。
宮殿もいらない、龍袍もいらない、三跪九叩頭なんて無駄だから取りやめよ。いやはや変わった皇帝だ。
陛下は、『周礼』以来の宮中典礼を全部廃止してしまった。
「そんな虚礼を覚える暇があったら、いいかい、今から渡すものを間違えずに写して記録して。
これは季節ごとの重要な祭祀の決まりごとだ。朕が死んでも、これから何十年何百年経っても、
残って人の役に立てるようにきっちり保管するんだ。」
あの時、属員が抱えて持ってきた書物の膨大さを見た時には目を回すかと思ったね。
聞いたら、君山に来てから一人で書いていたんだそうだ。
京師からは、とても持ってこられるような状況じゃなかったから。
てことは、この膨大な祭祀の知識を全部頭に入れてたってことだ。
陛下が『周礼』なんかよりももっと古い殷や楚時代の祭祀を、国家のものから民間のものまで研究して
それを改良したってことは、官吏をやってれば当然知ってるが、恐れ入る。
弟君に替わってからは、祭祀のための大機関も、その人員も、目の敵にされて追い出されたらしい。
やっぱり、そのことが未練で天子を名乗られているのだろうね。
あの時の真剣な目を見たらそう思った。
いやあ、あの後は大変だった。慎重に写した後、何重もの検査をして、一字一句違えず記録したんだから。
「ありがとう。君がいてくれて助かる。祭祀のことは、今はこれくらいで大丈夫だ。
国家祭祀は、最終的には
①祭祀、卜巫
②祭壇や霊山の管理
③祭品の調達、管理
④祭祀に関する書物の管理
⑤演奏、演舞
⑥祭祀の研究、教導
⑦天文観測、暦法の考定、漏刻
これだけのことを過不足なく行える人員と設備を揃えなきゃいけないけど、
岳州だけの経済力じゃ、だめだろう。
逆に今できるのは、民衆に祭祀の謡や奏楽、舞踊を教えることだ。それは朕や姚朝欽でできる。
何、意外そうな顔をしてるんだ? 祭祀は元々民間から生まれたんだよ。
それにここは、中華の祭祀の源、『楚』の地じゃないか……」
その時、「楚」って言葉に、特別な思いが込められてるんじゃないかと感じたね。
名前だけとはいえ「楚王」だったことがあるからか。
もしかして、陛下は「呉」の皇帝だけれど、心の内では、受け継いだ古い呉ではなくて、
自ら創始した新しい「楚」の皇帝のおつもりなのかもしれない。
「できるだけ急ぎ、湖南をまとめたい。できるかな。諸葛休民。」
できます。やってみせます、陛下。
「諸葛」、先祖から伝わる誇らしい名を呼んでもらえた。
この名にかけても、期待に応えてみせる。
だからこうして、近くの刺史とやりとりする書簡を書いているのさ。
郎州刺史とのやりとりも度重なった。中々、いい感触なんだよ。
おっと、お茶を持ってきてくれたのか。「君山銀針」。陛下の差し入れだね。
新芽時に雨が続くと収穫できない。また産毛を落とさずに殺青するから、製茶には特別な技術が必要。
これこそ、誰にも真似できない、洞庭湖の君山の名茶だ。
きっと千年、二千年経っても、茶の最高峰にあるはずだ。
天険の地湖南に割拠し、茶で国を建て、やがて広陵を倒して天下を統べる、か……。
やるならなりきり板でやれ!
お兄様が消えてしまった…
皇帝と共に……
(秘かに剣の使い手…男…に身をやつした楽蘭は、重々しい雰囲気が暗く包み込む屋敷を単身、後にした)
必ずお兄様の消息を…掴んでみせるんだから…!
322 楽蘭 ◆.iJqgYz.1o 2012/02/03(金) 11:01:56.98
【姓】楽
【名】蘭
【字】円爽
【身分】貴族
【官職】—-
【容姿】
願えばどんな望みも叶うと謂われる上弦の月を思わせる類い稀な美しさ。
ほっそりと白い肌は闇夜に照り映えんばかりで、黒瞳は意志の強さを表すように煌めいている。
紅い唇は意志の強さを表すようにきゅっと結ばれ、黒い長髪は頭上に高くまとめられている。
323 豊鳶 ◆8pKB2ASrhI 2012/02/03(金) 20:27:36.18
>>321
ガラガラガラガラガラガラガラガラ……
(暁闇にけぶる霧の中を二頭引きの馬車がやって来ると、楽蘭の脇で止まった)
お嬢さん、どこへいらっしゃる?
この辺は夜盗なども出没して危ないですぞ、金はいらんからわしの馬車に乗りなはれ。
【姓】豊
【名】鳶
【字】—-
【身分】馬運車乗り
【官職】—-
【容姿】
髪はまばらに禿げ、眉は八の字、眼はタレ目で鼻は上を向き、大きな出っ歯の貧相な男であるが、
声は一流俳優のように麗しい。
謎の多い男である。
51 :無名武将@お腹せっぷく:2011/01/18(火) 20:34:06
通報の言葉にびびったコピペ埋め荒らしのアンジェ先生が完全に沈黙したww
52 :無名武将@お腹せっぷく:2011/01/18(火) 20:38:24
偽学習院の誠也=アンジェ
53 :無名武将@お腹せっぷく:2011/01/18(火) 20:43:55
なんか学習院に幻想抱いてる奴いるけど、
学習院なんてアンジェレベルの奴ゴロゴロいるぜ?
あそこは歪んだエリート意識の塊しかいない
54 :無名武将@お腹せっぷく:2011/01/18(火) 20:45:35
蛆虫アンジェのほんみよう
高岡 誠也
55 :無名武将@お腹せっぷく:2011/01/18(火) 20:47:57
歪んだナルシストで嫉妬深く何でも一番でないと許せないのが糞アンジェ
56 :無名武将@お腹せっぷく:2011/01/18(火) 20:52:39
誠也君=アンジェ
http://pr.cgiboy.com/11744436
青天の霹靂。その日は格別に機嫌が良かったね。なぜって、交渉を続けていた郎州刺史が折れたからさ。
郎州っていうのは、洞庭湖を挟んで対岸にある州だ。
陛下! 陛下の味方はこの岳州だけじゃなかった!
陛下はどこにいらっしゃる。せっかくの良い知らせが冷めてしまいますぞ!
散々探し回って、まあいいか、明日にしよう、今はメシにしようと飯店に入ったら、
探してたご当人がそこにいなさった。駆けずり回った私の努力を嘲笑うように。
やや、漁父と賭け事ですかな?
陛下は離れたところにぽつんと立ってる私に気付くと、一緒にいる男達に言われた。
「刺史殿の用事じゃ、仕方ない。そろそろ朕は失礼するよ。」
「こら、勝ち逃げたぁずるいですよ!」「まだ勝負はこれからだ!」
立ち上がり拳を振り上げ叫ぶ男たちに、ひらひらと手を振って
陛下は私とともに店を出られた。
「賭け事はもうよろしいんですか」と聞くと、
ほっと胸を下ろされたように笑って、
「丁度良い所に来てくれた。ほどほどにしないと、尻の毛まで抜くような連中だからね」と答える。
天子を脅す漁民もあるまいが……。
「もう、君山へ帰ろうと思ってた。用があるなら、一緒にくるか」
一つの小舟で君山へ向かう。私が漕いで、陛下は目を閉じて水の音を聞かれていた。
陛下は、私たちとは住む世界も見ている世界も違うんじゃないだろうか。
こんなにも下々との距離が近い陛下に、私は時々途方もない距離を感じる。
陛下の家で、二人でお茶を。
「月の青い夜に、庭景色を眺めて、陛下に淹れていただいたお茶を飲む。格別です。」
「よろこんでもらえてよかったよ。琴も聞いていくか」
はい。
声を震わせて言ったね。琴を聞かせてくれる。「知音」の仲と認めてくださったんだ。
陛下はあの時何を考えてらしたんだろうな。
私は、音色を聞いてたら熱いものがこみ上げてきて。
気付いたら大泣きしてた。
綺麗な音色と大の男のむせび泣きが響いてたってわけだ。
「陛下、郎州刺史が、折れました。自ら使者となって来て、今宿舎に泊まってます!大きな一歩ですよ!」
感極まって吐き出した。
「よくやってくれた。本当に大きな一歩だ」
「でも、どうしてでしょうね。岳州刺史の奴、ずいぶん渋ってたんですよ!」
「休民のお手柄さ。本当によくやってくれた」
「違う! 違うんです陛下。本当に、ずいぶん渋ってたのが、なんで急に……。
陛下。何でそんなに平然としてらっしゃるんです。陛下はこうなるってわかってたんですか。
だったら教えてください。陛下!」
陛下は息をほうと吐いて、語り始めた。
「そうだねえ。休民には話してもいいだろう。あれは月かげ暗く、あるはずもない花だけが白く浮かび、
軽やかな霧が浮かぶ夜だった……」
食事の時間だよ、景栄。今日も生魚だよ。お前、猫の身体になってしまったものなあ。
そろそろ人間の姿に戻ってみるか? 姚朝欽に頼んでやろうか。
お前も、「こっち側」に来てしまったなあ。
人の作った仕組みしか見ようとしなかったお前だ。
今、どんな気持ちなんだ?
朕は、生まれた時から「こっち」にいるんだぞ。
昔から、気をつけていないと、いつの間にかまわりに人でないものがまじっている。
どうやら朕が引きつけているらしい。
「親がなくてかわいそうになあ。わしらと仲間になろう」
そっちの方が、人より話がわかったりするんだけどね。
宮中の書庫は魑魅魍魎の巣だし、人の数より精霊とか妖怪の数の方が多いくらいなのに、
それが他の人には全然見えないのはおかしかった。
そもそも宮中は出世欲、物欲……そんな人間の煩悩の匂いに引き寄せられて、
いろんなモノがたくさん集まってくるんだ。
岳陽に来てからは、宮廷なんてものを建てないでいるから空気が綺麗だ。
でも、例えば不特定多数の人が集まる飯店では……
「おい若僧、ただ勝負をしてもつまらない。何か賭けようじゃないか。
どうだ? お前はお前自身を賭けろ。その代わり、わしらは何かお前の欲しいものを賭けようじゃないか」
「それは勘弁してくれ。朕の命は国の用をしなきゃならないんだ。せめて右目だけで許してくれ」
「よし、人間の身で『こちら側』を見ることのできるお前の目だ。他の人間のとはひと味違うであろう。
それでお前の望みは何だ?」……
『こいつら』も、他の客には漁父にしか見えてないんだろうな。
早いとこ口実を見つけて抜け出さないと、面倒なことになるな……。
そう思っていたら、州刺史の諸葛休民が店に入ってきた。渡りに舟ってやつだね。
「刺史殿の用事じゃ、仕方ない。そろそろ朕は失礼するよ。」
そう言うと、怪物どもは「まさかこのまま勝ち逃げする気ではないだろうな」
「もうひと勝負! 今度は黄金の亀を賭けるぞ」などと凄んでくる。
冗談じゃない。もう、この店には来ないぞ。
諸葛休民、朕の苦手な政治を朕に代わってよくやってくれている。
話があるなら、家でゆっくり聞こう。
お茶を淹れる。最近、上達してきたと思う。どんな味を出すか、
思い描いた味を意図して出せるようになってきた。
それから、琴も。
今日はいい夜で、いい気分だ。気分が琴の音色に乗って、夜空へ吸い込まれてゆく。
休民、何、泣いてるんだ。
「陛下、郎州刺史が、折れました。自ら使者となって来て、今宿舎に泊まってます!大きな一歩ですよ!」
「あの時」の謝礼、本当に果たされたのか。でも、今まで頑張ってきた休民の手柄であることに違いはない。
何、それじゃ満足しないのか? 独力で果たしたことだとは思えないのか? 教えてくれと?
お前、きっと信じないぞ。それでもいいなら……
「そうだねえ。休民には話してもいいだろう。あれは月かげ暗く、あるはずもない花だけが白く浮かび、
軽やかな霧が浮かぶ夜だった……」
ここ以外のスレでコテを名乗って書き込みをするつもりはもうないんです)
アホジエは嘘つきだからすぐに三戦に書き込むだろうな
ほっといてやれよ
(酒の無くなった徳利を草むらに軽く放り、香草をしゃりしゃりと噛む。)
(夜水魚の背後、草ずれの音は大きい)
(音の広がりは、茂みの中に動くものが一本の酒瓶だけではないことを示していた)
(一人、二人、三人、草むらの中から現れる人影)
(その内の一人が合図を鳴らすと、黒々とした塊となって岳州の守兵が集合した)
「動くな。州府まで同行してもらおうか」
(月影にぎらりと光る剣を首元に押しつけて、重々しく命じる巡邏の兵士)
(広陵では、白牡丹を逐った保守派の臣僚がすでに政権を固め
生存の噂の立った廃帝の捜索に乗り出しているという)
(深更に、酒瓶を片手に、夜釣りをする男)
(満身怪しさで出来ている。疑ってくれと言わんばかりだ)
(巡邏が密偵の疑いをかけたのも道理である)
(夜水魚は即座に縄を打たれ、州府まで連行されてしまった)
「さて、己の立場は分かっておるな」
「わしはこれから貴様に幾つかの質問をせねばならん」
「嘘偽りを申せば、(すらりと剣を抜き)貴様の首と胴が永遠に離れることとなる」
「貴様は何者だ」
「姓名と本籍、就業の有無、そして今宵あの場に居た理由を聞かせてもらおう」
(尋問の兵は夜水魚をじろりと見下ろし一挙一投足を観察した)
アンジェ、おしごとないの?
(何だ?この夜更けに…何だ何だ?)
誰だ、てめえら!あッ、俺の徳利を蹴り飛ばしやがった!踏み潰しやがった!
高ぇんだぞ、それ!弁償しやがれっ!
「動くな。州府まで同行してもらおうか」
クソッ・・・!
(刃物を出すのは後にするか、今じゃ分が悪ぃ。何しろ人数が多すぎる。それにしても、こいつら・・・)
お、お役人さむぁ~~!
ちょっと生意気な態度を取っちまったけど俺ぁ気の弱い優男でさぁ。
どうかお許し下せぇ~~!
{夜水魚は誇りを捨てて土下座した、が無駄だった}
畜生、おぼ・・・チッ今は止めとくか。優秀な狼犬は、無駄吠えをしないもんだぜ。
∞∞そして州府へ∞∞∞
(クソ野郎。扱いが手荒いぜ。ったくよう、お手製の竿は折られるわ、びくは放置されるわ・・・覚えてろよ?)
「貴様は何者だ」
「姓名と本籍・・・聞かせてもらおう」
(ここは致し方ない。半分ばらそう)
あぁ、俺の姓名ですかい?羅刹那と申しやす。本籍は旦那方に捕まった川の下流にある、とある村でやす。
まさか、その村に夜討ちを掛けて焼き払う、なんてのはなしですぜ?
就業は、農業ですぜ。米や麦を作ってやす。あとは干し柿なども。梨の旨さは絶品ですな。
何故あんな時間にあんなとこに居たか、ですかい?翌朝の食事の材料を探して、釣糸を垂れていたんでさぁ。
朝方は寒いからねぇ!
(あそこ(桃里村)が俺のような忍者の巣窟だってこたぁ、知らないほうが身の為ってもんだぜw)
{飄々とした様子で夜水魚こと羅刹那は喋り、息を深く吸いつつ左の耳の穴に小指を入れた。
目線は敢えて役人に合わせていないが、役人の視線は痛いほどに感じ取っていた}
(尋問の兵は夜水魚から視線を逸らさず、剣の柄を指で弄びながら言う)
「羅刹那。汨水の下流にある村の出とな。その村の名前は何だ?」
「言ったからとて、岳州の官兵が自州内の村を襲撃などせん。余計な警戒はするでない」
「貴様自身は農民で、あの場にいたのは食料の調達のためなのだな」
「これらの品は間違いなく貴様のものか」
(兵は割れた徳利、折れた竿、拾わせたびくを示す)
「成る程、言うことを信じてやることはできる。だが」
「動くでない(羅刹那が左の耳の穴に小指を入れた、それだけの動作をも見咎め剣を突きつけた)」
そこへ、州刺史諸葛長民が入ってくる。
今し方まで寝ていたとみえて、寝癖を急ごしらえで押さえつけて冠を被ったのがわかった。
「彼がそうか? (羅刹那に向き直って)いやー、驚かせてすまなかったね。」
「ただ過分に見えても州の安全のためだ。兵達を怒らないでやってくれ。」
「そこの道具も、君の無実が証明されればきちんと弁償してあげられるよ。」
(威圧的な兵と比べて、諸葛長民は四角ばらない、くだけた印象だ)
「羅刹那君が村の名前を言ってくれれば、村から身元を証明してくれる人を探せるだろう?」
「それまではここに留まってもらうが、まあ、君の無実はすぐに証明されるだろう」
「そうだな、村に行ったら誰を探せばいい。」
「誰だったら君のことを知っているかな?」
「(本当は、こういうのは性に合わないんだけどねえ)」
「(陛下が廃されたこと自体、もう、世の中が乱世に突入してもおかしくない事態だ)」
「(漢末、随末……)」
「(昔の王朝の末期を思えば、嫌な時代に生まれ合わせたものだねえ)」
(州刺史の名前は「諸葛休民」です。)
{夜水魚は軽く口笛を吹いた。それは不思議に淡く、闇に溶けていった}
村の名前?そんなの聞いてどうすんでえ?って…分かった、分かりやした、分かりやしたよ。
分かりやしたからその刃物は俺の首筋からどけて下さいよ。物騒でならねぇ。
村の名は、桃里でやす。ええ、何の代わり映えもしない農村でやすよ。お役人が気に留める程の村じゃねぇ。
その通り!俺は翌朝の飯のおかずを釣りにあそこで頑張ってたんでさぁ。いや、そりゃ寒かったですが
翌朝に比べれば何てこたぁねぇ。
…ああぁっ!俺の釣り道具!!
(何しやがるんだ、てやんでえ!弁償させるぞコラァ!!)
お役人、これぁ弁償してくれるんでがしょうね?びくはともかく、釣竿なんか真っ二つだ。
この釣竿ぁ、亡くなった裏のじいさんが作ってくれたもんでね、じいさんは名うての釣竿職人だったんだ。
そこらで手に入るもんじゃねえ。
(実は自分で作ったもんなんだが…竿はともかく徳利の代金は帰って来ねえだろう、ここが勝負のし所だぜ!)
(おや…?何か偉そうな奴が入ってきやがった。ぷ…!)
夜水魚は偉そうな男の寝癖と、眠そうにしばたたかれる目に気づき吹き出すのを寸でのところで堪えた。
{偉い男は、柔和な物腰と口調で話しかけて来た}
いや…へぇ…そうですかい……
(何だ、上司のほうが思ったよりも愛想がいいじゃねえか。ちっとばかり拍子抜けしたぜ)
(これなら弁償の交渉もうまくいきそうだ)
いや、村の名前はもうそちらのお役人に言ってありましてね。そちらからお聞き下さればありがてえ。
身元保証人ですかい…
(村長、スマン!この前も金を借りたばっかりなのに…)
そうですね…村の北東の一角に、柿の木に囲まれた藁葺き屋根があるんでやすけどね。
そちらへ行って頂けるとよいかと。ちなみに俺ぁ、村での通称は夜水魚で通ってやすんでスグ分かると思いやす。
(…あれ?何事か上の空で考えてるように見えるぜ。ま、寝癖をつけたまま来るようなお役人だから仕方ねぇ)
─諸葛休民は右の眉毛を上げ、尋問の兵の方を見やって訊く
「本当に? 彼はしゃべったのか?」
─兵は相変わらず剣の柄を指でトントンと叩きながら、目礼して答えた
「はい。桃里村、だとか。すぐに桃里村の戸籍を照会します。
こやつが『桃里村の羅刹那』を殺して名を騙っていることも考えられ、
どのみち身元保証人の召還の必要はありましょう」
「戸籍の方は頼むよ(刺史が命じると、手の空いていた下吏がさっと立ち上がって退室した)」
「さて夜水魚君。君が協力的で我々としては非常に助かるよ。」
「今夜の内に君は釈放されることになるだろうし、私としてもそれを願っているが……」
「誰か、人をやって保証人をお連れしてくれ。」
「ただし、強引に連行するんじゃなく事情を話して同行してもらうようにね」
「待っている間、我々は少し話をしよう」
(夜水魚の表情を見て、これは尋問じゃないよ、ただの雑談だ、と付け加えた)
(そして懐から砂金の大粒を取り出して小卓に置く。身元の確認が取れたら渡すつもりだ)
(これ一つで弁償品が山のように買えるだろう)
「(それを追う夜水魚の目を見ながら)ただし砂金のことも今夜のことも他言無用だ。」
「役人に捕まって物を壊されたら金塊がもらえるなんて、噂が立っては困る」
「無事に釈放されて、もしまた岳陽へ、今度は自分の意思で来ることがあったら、
一度飯店へ行ってみるといい」
「役人と平民が同席して飲んでいる姿が見られるよ」
「ここは役人と平民が肩を組んで暮らせる街なんだ」
「ただし、それは厳罰とたゆまぬ綱紀粛正の上に成り立たせた成果でね」
「役人であろうと、平民であろうと、法を犯せば即刻斬られる」
「人を殺す者。盗みを働く者。放火をする者。婦女を暴行する者。州の機密を漏洩する者。
みな極刑だ」
「君は今夜の仕打ちに怒っているかもしれないが、そうしなければ岳陽、いや州全体で
良民が安心して暮らせないんだ」
「君の村の話も聞きたい」
「桃里村のことを、私に聴かせてくれ」
──深夜、桃里村、三十人の巡邏隊が村の入り口に到着する
隊長の武官が呟く
「おかしな村だ。静かだというのに、どこか落ち着かん」
「松明を燃やせ、我らの出で立ちと素性を明らかにせよ」
(三十本の松明に火が点される)
(辺りは昼日中のように明るくなり、その中に甲冑と剣を帯びた岳州兵の姿が浮かび上がった)
「村の北東と申しておったな」
「隊伍を崩さず行進せい」
(静寂の中に、兵達の揃った靴音のみが響く)
─村長宅
「夜分失礼する。岳州の者だが」
「この村の夜水魚なる住人に覚えはあるか。斯く斯くの事情があり、その者を州府に拘束しておる」
「夜水魚によれば足下が身元保証人とのことなれば、こうして参った次第じゃ」
「足労をかけるが、出頭していただきたい」
「へえ」
しおらしく頭を下げながら夜水魚は思った。
(まぁ自分の命が大事なだけだがな。俺より大切に思う奴がまだいないだけの事!)
(とはいえ、いつも世話を掛けてる爺さんにまたもや迷惑掛けちまうんだから、申し訳ないとは思うぜ)
官吏にこれは尋問じゃないよ、と言われた夜水魚は少々動揺した。
(表情を読まれちまったか、まだまだ未熟なもんだぜ、俺も)
尋問官が目の前で大粒の砂金を小卓に据える。それを目で追いながら考える。
(でけぇ砂金の粒だ。これだけの砂金があれば、釣竿も何も家の中の物まで新調する事ができらぁ。
これぁ、多少小物を演じたほうがいいな。これで狂喜しなけりゃ大物だって事で話が変な方へ行きかねねぇ)
(とりあえず、ぎらりとした眼差しに、鼻息も荒くしてみっか)
「そりゃあもう!この羅刹那、無用な事は話さねぇ性分でしてね。その代わり、あっしの口から洩れた
情報は寸分の狂いもございやせん!旦那、信じて下せぇ」
身を揉むようにして夜水魚は訴えた。
(本当は俺ぁ、こういう役は嫌いなんだがなw)
街の様子を丁寧に説明してもらいながらお世辞を口に上らせる。
「なるほど!平民がお役人と共に酒を!そりゃあ他では考えられない絶景でやすね」
(ここが誉め時だぜ!)
「こんな素晴らしい街は他にはなかなかありますめぇ。あったら教えてほしいくらいだ」
「それで、この街を造られたのはどのような聖人君子で?」
「もちろん、釈放されたらもう一度ここにやって来るのを誓いますぜ」
(それは実現するか分からねぇけど、言葉のアヤでな)
「婦女子が夜中でも安心して出歩く事ができる街。一度ここに住んだ者は、他へ行きたくなくなる筈でさぁ」
「しかし、お役人の苦労は並大抵のものじゃありやせんね。頭が下がりやすぜ」
(ちょっと疲れてきたな)
「大丈夫でやす。この素晴らしい街を維持する為の、この捕縛。あっしが腹を立てる理由などありやせん」
「釣竿壊されたのにゃあ、ちょっと怒りかけたんすけど、お話を聞いて怒りは雲散霧消いたしやした」
「桃里村の事でやすか?
いや、まあ普通の農村でやすよ。ちょっと前に近所でガキが生まれやしてね。男だったかな?」
「帰ったら、祝いを持っていかにゃあwちょっとした出費ですぜ」
「今、村から村長の爺さんが来るって事なんで、詳しい話はそちらに聞いてみて下せぇ」
「それが、口うるせぇ爺さんなんすよ!村にも規則みたいなのがありやしてね」
「八十越えてるのに、歯も抜けていやがらねえ!」
深更、桃里村――
「何事だ?」
村長アルス=クティクはやおら布団から起き上がった。
「敵か?」
夜着の上に上着を羽織る。
外を伺うと、二十五~三十人ばかりの武官がばらばらとこちらを目指している。
――逃げると余計にまずい事になりかねぬ。
クティク村長は座敷の真ん中に陣取ると、武官達が木戸を開けるのを静かに待った。
が、意に反して武官達は雪崩れこんでは来ず、木戸を手で叩いたのみだった。
木戸を静かに開ける。
「こんな夜分に何用でござろう」
「…夜水魚?ああ、知っておりますがまた、どういう件で?」
「夜中に釣りをしていて捕まった…?」
(なんと間抜けな奴め)
「身元保証人ですと…?」
(またあの風来坊がしでかしおったな)
「どうしても儂が行かねばなりませぬか。ならば、向こうの家にいる副村長に留守を頼んで参りまするゆえ、
暫く、お待ち願いたい」
暫くして村長は戻ってきた。武官達の前で出来うる限り呑気に、農家の爺さん風に振る舞う。
「さ、では参りましょうかの」
1時
4時
11時
アンジェは引きこもり
1時
4時
11時
19時
アンジェはニート決定
軽やかな霧が浮かぶ夜
暗呑とした雲は去ってしまえ。
─雲の海が千々に細切れ霧消し、はるか天の高みから銀河が落ち来る
九天の瀑布、飛流直下三千尺。
いい案配に晴れてきた。これなら霧も白や銀を映して綺麗に見えるね。
ところでいらっしゃい。良い時に来たね。
「ごめんください。突然では失礼とは思ったのですが」
構いませんよ。ところであなたは人ではありませんね。
私でお役に立てますかどうか。ところであなたが胸に抱いてらっしゃる人魂はなんです。
ずいぶん傷ついて見えますね。
「これは私の子どもです。病気で、私にはどうすることもできないのです。
それで」
それで私のところに来たのですね。まあちょっと見せてください。
なるほど立派な人魂だ。しかし死んで随分と時が経っていますね。
人の魂魄のうち、魂の部分がこれほど長く俗世にとどまるのはよくないことなのですが。
「いいえ、いいえ、これは私の子どもです。どうかお願いします。助けて」
……何とかしてみましょう。ただし、お子さんはお預かりすることになりますよ。
「わかりました。七日後にまた参ります。」
─傷つき悶える魂を離すと、ふわりふわりと漂いながら飛んでいく。
その後を追ってあぜ道を越えていくと、目の前に大きな水の流れが現れた
君山に川はない。人の道を通ってこなかったのなら、ここがどこか、わかったもんじゃないな。
魂は相変わらずふわりふわりと、川の上をすべり飛んでゆく。
あれを泳いで追うのは難しいな。
「おーい、おーい、陛下、こっちですよ。もう競争が始まっちまいますよ。」
─川岸に船首に龍をしつらえた舟が何艘も連ね、岳州の男たちが回りを賑わせている。
月明かりしかないのに、男たちの表情や顔の皺までも判別できた。
ちょうど良い。乗せてもらおうか。
龍舟に乗って激流を下る。なあんだ。それじゃあ、ここがどこかわかった。
屈原が身を投げた汨水だろう。
ふわりふわりと飛ぶ人魂が、汨水の中に飛び込むと、白牡丹も続いて飛び込み後を追う。
水底は暗く、水底は黒い。
その中に一点のほの明るい場所。
そこをめがけて歩いていくと、一人の男がうずくまっていた。
白牡丹は、男から二、三歩離れたところで立ち止まり、背中ごしに声をかけた。
「もし、あなたは三閭太夫殿ではありませんか」
憔悴しきった顔だちで、体は枯れ木のようだった。
そのとき一人の漁人が尋ねた。
「子は三閭大夫にあらずや」と。
かつてと同じ言葉を聞き、屈原は顔を上げてその目が白牡丹をとらえた。
「そこもとは何者だ。なぜここに来た」
「なぜここに来たかですって? 大夫殿の言う『ここ』とはどこです。この暗い水の底ですか。
それなら、私は貴方を救いに来たのだ。それともこの荊楚の地をいうのなら、
元いた場所を放たれてきたのです」
「何をもって放たれたのだ」
「『世の中すべてが濁っている中で、私独りだけがただ澄んでいる。
人々すべて酔っている中で、私独りが醒めている。それゆえ放たれた』のです」
「それは小生の言葉ではないか。ではそこもとも入水したか」
「私は生きております。ゆえに貴方を救いに来たと申しました。
私には、廃されたとて、他郷に身を寄せてもせずにはいられないことがあります。
どうして魚の餌食になどなれましょう」
「若僧、小生にそこもとの話を聞かせてくれ。水の下では人と語り合うことも稀であれば」
─白牡丹は自らの生い立ちを、廃された経緯を、今までのことを、すべて語って聞かせた。
水の底では時間はいくらでもあるのだから。
屈原はいった、
「若僧よ、そこもとは異国の帝だ。しかし不思議だ、そこもとの話す声の調子や余情に、
どことなく楚の国の情を感じる。懐かしいことだ。
一つ頼みがある。小生のために謡を聞かせてくれ。そうすれば、もうその感覚さえも忘れた『眠り』を
取り戻せるやもしれん……」
「私の謡でよければ。この場所では琴はありませんか。琴があればさらによいのですが」
そう言うと、屈原は頷いて、岩の下から水琴を取り出した。
白牡丹は手に取り、かき鳴らして歌う。屈原、目を閉じて聞き入っていたが
「どうしてだ。音を聞いていると、胸に熱いものが……」
清水、潺々。
曲が終わる頃、屈原の顔に刻み込まれていた深い憂いはすっかり取り払われ、
永の年月味わうこともなかったであろう晴れ晴れとした心持ちが、浮かんでいた。
「秦も楚ももうない。小生は死んだ。どうせならば、今、小生にできることで
父祖の地である荊楚の役に立ってみようか」
そう言うと、屈原は青い鱗をした一頭の龍に身を変じ、
咆哮一声、たちまち天に昇っていった。
それから数日、荊楚には雨が降り続いたという。
「そういえば、ありましたな。湖南の広範囲で数日雨が降り続いたことが」
「あのときのことなんだよ」
「(まさか、屈原と会われたなどと、事実ではあるまいが。陛下流の冗談か座興か、
恐れ多いことだが豊かすぎる想像の産物であろうが……)」
「信じないだろう?」
「まさか」
「お茶をもう一杯。それでね、七日後にきっちり河神が来て、事情を話したら望みを言えというから」
「郎州がなびくことをお望みになったわけですな。どうせなら、天下一統をお望みになればよかったのに」
「大きすぎる望みではね。だいいち実現に時間がかかりすぎる。
それに、郎州刺史との交渉に難儀していた君の負担を軽くしてあげたかったしね。
なに、立派な楼閣も一握りの土塊から生まれるものだし、天に届く大樹も小さな種から始まるものだ。
欲張らずにいこうじゃないか」
白牡丹は、そのまま眠りの海に落ちた。
諸葛休民は眠ってしまった白牡丹を寝台に運ぶと、一礼して岳陽に戻る。
─翌日、岳州州府で白牡丹と諸葛休民、郎州刺史が会見する
「陛下には息災でござろうか。遅参の程は申し訳ござらぬ。郎州常徳は武陵蛮との境なれば、
その対処に目を回しておりましてな」
諸葛休民が発言する。
「武陵蛮ですか。何とか関係を改善し、こちらに引き込めれば心強い戦力になりましょうがね」
「関係の改善!こちらに引き込むですと! 岳州刺史殿の言葉とも思われぬ。
大呉の皇帝が蛮族の力を借りたとあっては……」
「必要なことです。彼らを根絶やしになどできるはずもないし、抑圧すれば軋轢は深まるばかりですぞ。
こちらから腰を低うし、彼らの尊厳を慮り、またお互いの境を明らかにすることこそ彼らを引き込む決め手になりましょう」
白牡丹も同意する。
「朕もそう思うね。虚礼は意味のないことだよ。だいたい、さまざまな人種、民族が混然としている状況こそ、
天が作った自然の状態だ。それを画一化、序列化しようとしたのは儒でしかない。
今、西はチベット、インド、ペルシア、ローマからも移り住む者が多い世の中だ。
旧い華夷思想は時代に合っていない」
「それでは次の目標は……」
「ああ、武陵源の彼らと渡りをつけることだ」
・大陸全土
http://kowloon.ddo.jp/cgi/up/10MB/src/up0011.jpg
・中華全土
http://kowloon.ddo.jp/cgi/up/10MB/src/up0012.jpg
・西域吐蕃
http://kowloon.ddo.jp/cgi/up/10MB/src/up0013.jpg
・南詔本国
http://kowloon.ddo.jp/cgi/up/10MB/src/up0010.jpg
各色及び各勢力につきましては下記の通りです。
【番号】 【群雄名】 【地位】 【治所】
① 白如月 皇帝 広陵(揚州)
② 白牡丹 廃帝 君山(岳州)
③ 白果 燕王 幽州
④ 白俊 魯王 魯州(兗州)
⑤ 白直 零陵公 零陵(永州)
⑥ 白勒 襄陽公 襄陽(襄州)
⑦ 白呈春 九江公 九江(江州)
⑧ 卞憙 河東・朔方 大原府
⑨ 朱日昊 浙西節度使 南京(金陵)
⑩ 朱懿材 成都塩鉄使 成都府
⑪ 袁楊豊 弘農太守 弘農(虢州)
⑫ 盧虎康 紅蓮教教祖 漢中(興元府)
⑬ 蒙鐸粲 南詔王 河陽府(蒙舎州)
⑭ 楊昂譚 隴右節度使 鄯州
(敬称略・順不同)
なお、それぞれの領土に関しては下記の通りです。
・皇帝・・・・領土記載が無かった為、国都(広陵)を含む節度使領(淮南節度使領)
・廃帝・・・・記載通り現在の湖南省(湖南観察使領+山南東道・鄂岳・荊南諸州)
・燕王・・・・領土記載が無かった為、燕国(幽州)を含む節度使領(廬龍節度使領)
・魯王・・・・領土記載が無かった為、魯国(兗州)を含む節度使領(兗海観察使領)
・零陵公・・記載通り零陵(永州)+臨賀(賀州)
・襄陽公・・記載通り襄陽(襄州)
・九江公・・領土記載が無かった為、九江(江州)
・卞憙・・・・記載通り河東節度使領+朔方節度使領
・朱日昊・・領土記載が無いものの節度使との事だったので、拠点(南京)を含む
節度使領(浙西節度使領)
・朱懿材・・領土記載が無いものの塩鉄使として成都・益州へ任じられている為、
拠点(成都)を含む節度使領(剣南西川節度使領)
・袁楊豊・・記載通り弘農(虢州)を含む節度使領(陝観察使領)*虢・陝二州のみ
・紅蓮教・・記載通り漢中(興元府)
・楊昂譚・・記載通り隴右節度使領
今回につきましても封地不明の陽王(白嵩)の記載ありません。
また廃帝に関しましては、現状を表す官爵・勢力名が無かった為、便宜的にその様にさせていただきました。
なお、領土が重複する群雄の場合、活動状況に応じて対応させて頂きました。
・劉雷 ・・・幽州牧
・蔡興 ・・・零陵太守
(敬称略・順不同)
何か疑問・質問・訂正等が御座いましたら返信の程宜しくお願い致します。
(お帰りなさいませ!
(また、今回も勢力図を作成していただき、ありがとうございます。
(再開した夜闌スレでもよろしくお願い致します。
(白牡丹に関しては、現在、地図の領域を獲得するまでに至る経緯を書いております。
(長いプロローグになってしまっていますが、できるだけ迅速にそれを終えたいところです。
(官爵・勢力名は、地図の領域を獲得した段階で復位を全国に公表し
呉皇帝を名乗ろうと思っています。
如月、牡丹とも呉ですが、まあ、区別はつくので不都合はないと思います。
(質問というか、ご相談ですが、地図の領域を獲得した段階で、
どのくらい兵士を動員できるのか、もしわかるようでしたら教えていただきたいのです。
いえいえ遅れてすいません。
時間もありませんでしたが、何より久し振りでコツをつかむまで時間が掛かりました。
まぁ、プロローグに関しましては、どうして二朝分立になったか、という根幹部分の
描写になりますし、時間をかけてもじっくりとしたものを作り上げて投下した方が良い
かと思います。
勿論、最終的な段階において、その状況に応じた勢力図をまた作りますしね。
なお、兵力等に関しましては、手元に資料がない為、申し上げる事は出来ません。
それぞれ数万程度は兵力を保有していたと思いますが、安史の乱で十節度使の
内、平盧・范陽・河東の三鎮を兼ねた安禄山ですら18万ですから、かなりの藩鎮
を兼務しない限り十万を越える事はないかと思います。
なお、黄巣(大斉)軍と藩鎮連合軍との戦いでは、黄巣軍15万との事ですから、
実際のところ徴発や志願状況というのもあると思われます。
お忙しい中、本当にありがとうございます。
私も書きながら感覚を取り戻している状態です。
プロローグで、おっしゃるような根幹部分と、白牡丹(個人・政権とも)の性質を示せればいいなと思っています。
兵力のこと、承知しました。
では、兵力は各自が任意に設定することにして、
>十節度使の内、平盧・范陽・河東の三鎮を兼ねた安禄山ですら18万
という事実をだいたいの目安にするのがいいかもしれませんね。
黄巣軍は大兵力を食わせるために略奪→移動もしていたと思いますし、
「安定して維持できる兵力」を考えれば、安禄山のほうで考えたほうがいいですよね。
厳密にいいますと、三鎮を兼務した安禄山の公的な兵力、ですね。
ですから、安禄山が独自徴兵したものではなく、朝廷により設置された節度使
の固定兵力の合計という形です。
即ち、朝廷が平時に常備するものとして決めた兵力ですので、実際の所上限
からははるかに低いものと思われます。
同様に、乱において安禄山が実際に一度の戦役に動員した兵力はわかりかね
ますので、やはり上限兵力としてはわからないです。
なお、黄巣軍は藩鎮連合との戦いの後瓦解していきますが、15万の兵力を集
めた戦いの時には既に朱温が離脱している状況のようなので、最大兵力ではな
いと思われます。
ただし、黄巣軍に限らず藩鎮等の反乱を除いて、この時期の反乱の多くは流賊
的なものですから、兵力面では一般的な維持可能兵力以上のものという点は
確実かと思います。
なお、陽州という州がありますが、この地を陽王の封国としますか?
なるほど……
では、「一人勝ちにならない程度に任意で」ぐらいにしておきましょう。
戦争も扱いは他と同じ、ネタの範囲内ですから、
書き手同士が協力して面白くすることを目指せばいいです。
勝つことに躍起になりすぎないように。
陽州という州があるなら、陽王はそこに封じましょう。
ありがとうございます。
あの規模なら10~15万でいいんじゃないでしょうかね?
一人勝ちも何もみな合わせて兵力を蓄えるでしょうから、全体として大きくなり
過ぎないようにすれば宜しいかと思います。
まぁ、逆に二州、三州程度の小規模な藩鎮の方は兼務を比較的緩くしてあ
げるのも一つでしょうし。
陽州は隋代以前に廃止されておりますので、その故地に封じるという形をとり
ますね。
一応、国号は陽(陽国・陽王国)としますか、それともその地域に合わせた国号
にしますか?
ありがとうございます。
「全体として大きくなり過ぎないように」ということ、
小勢力の方への配慮も、どちらも大切ですね。
用意していただいた地図は山川や湖も記載してあって、
調べれば地形もある程度はわかるでしょうし、
状況に応じて寡兵で大軍を退けたりなど、いろいろできそうです。
陽のこと、承知しました。
国号は陽にしましょう。仮想スレですし、ログに陽王とあるのを尊重して。
北京も燕国があるから「燕京」という名前にしていますし、
地名は個々の判断で唐代のものから変えてしまっていいと思います。
・関内道 卞憙(霊州)
・京畿道
・河南道 魯国
・都畿道 袁楊豊(陝州)
・河東道 卞憙
・河北道 燕国
・山南東道 襄陽国(襄州)
・山南西道
・隴右道 楊昂譚
・淮南道 直轄領
・江南東道 朱日昊
・江南西道 廃帝
・黔中道 南詔国
・剣南道 朱懿材
・嶺南道 南詔国
行政区分は開元十五道
原則一州でも領有している場合、領有扱いとしました。
また同じ道内に複数勢力が存在する場合、規模の大きい方を
優先としました。
とりあえず作りました。
・①~④ 据え置き
・⑤ 陽王領
・⑥~⑬ 各勢力ごと一つずつ繰り下げ
・⑭ 据え置き
・⑮ 南詔
となります。
また、陽王に関しましては下記の通りです。
【番号】 【群雄名】 【地位】 【治所】
⑤ 白嵩 陽王 河南府
・陽王・・・・領土記載が無かった為、陽州(洛州)を含む節度使領(都畿道防御使)
なお、備考となりますが、陽州は東魏により設置され、北周により熊州へと改称し、隋代に
廃止され洛州へ移管(統合)され、唐代において洛州が河南府となり、都畿道防御使が
置かれました。
なお、この地域の特有ないし縁のある諸侯国と呼べるものがない為、陽王から変更するの
であれば周王あたりが一番かと思います。
因みに、領域の一部である澠池県は三門峡市に所属し、三門峡市は陝州州域ですが、
処理が面倒な為、陽国に編入しております
すみません、現状から担当を増やすと負担が大きいですし、
何より複ハンは感情移入を阻害するのでやりたくありません。
複ハンを多用しても問題なく上手に書ける方もいますが、
私は真似できないですね。
それほど器用じゃないです。
どんな立場で参加してもいいのですが、他に誰もいない場所で参加する場合、
今の私のように「地盤を固める」ネタを書かないとすることがなくなります。
華蘭なら宮廷世界を詳しく描くとか。
そういうのが苦手な方は、女官などではなく勢力を持った群雄を担当されるのを強くお勧めします。
自分がやりやすいのももちろん、群雄が増えれば後から入る方も入りやすくなります。
地図は>>54ですね。
パソコンでしか見られないので、携帯がメインで参加される方も、
どこかのパソコンで見てくれれば……と思います。
誠実な対応サンキュー
いえ、ご希望に添えず、申し訳ありません。
地盤を固めるのはいいが、最大領土をどうするかとか権力奪取したいとかなってくると大変じゃない?
今考えている最大領土は、>>54の地図で蒙鐸粲さんに塗っていただいた範囲ですね。
(現代中国でいう湖南省全域なので、すぐにパソコンが見られず
なおかつ世界地図を持っていらしたら、見てみてください)
この範囲を掌握し、復位を全土に公表するまでの構成を考えて、
今、プロローグで書いています。
あと、少しですよ。1日1~2レス落とすとして、あと数日で終わる予定です。
プロローグが終わる頃には、参加者が増えてほしいです。
以後は普通に参加者と絡みながら物語を動かしていきたいので。
長いプロローグですが、白牡丹の勢力の性格や、治めている地域がどんな場所なのか、
地形はどうなっているのか、白牡丹自身はどういう人物なのか、など、
書いたほうが結局は参加者としてもわかりやすいと思うんですよね。
もちろん、他の参加者にもプロローグを書けなんて言いません。
書きやすいように、気軽に書いてくれればと思います。
㌧ 楽しみですw
(地図に準拠して話を進めるので、>>54の地図をご覧ください)
それから君山へ戻った朕は、姚朝欽と交代した。
「えー! もっと長くかかってもよかったのに! そうそう、私の小説はどうでしたか!」
しばらくして、黄加陳の知らせ。果雄の調略に成功したと。
「驚きましたぞ。あれほど渋っていたのに、ある日突然承知してきたのです」
お前自身のときもそうだったろう。
今、君山の朕の庭で、岳州刺史・諸葛休民、郎州刺史・黄加陳、果雄王・翠絶が勢揃いしている。
木卓の上には地図が置かれていた。
自然体で四角張らない諸葛休民、謹厳さを常に纏った黄加陳、いるだけで周囲を圧する翠絶。
三者三様で面白い。
「目下の目標は、」
議長役を務めるのは決まって諸葛休民だ。
「レイ州の獲得です。ただ一つ問題がある。レイ州刺史は湖南には珍しい広陵派なんです」
「ふうむ…」
黄加陳が唸った。交渉ごとの難しさを知り尽くしていたからだ。
翠絶は何も言わず、己の拳をさすっていた。
「レイ州はどうしても欲しい。何かご意見はありますか」
一瞬、皆の視線が交錯する。皆、同じことを考えていたようだ。
翠絶が言う。
「果雄の男は、そうすべき時に命を投げ出すことを惜しみませんぞ。より大きな善のために」
黄加陳が続く。
「正面からぶつかるのは果雄王と、この郎州だ。郎州の男とて、果雄に引けは取らん」
二人の言葉に頷いて、諸葛休民は話を進めた。
「私に作戦があります。(地図を指して)まず郎州軍が、陸路からレイ州に攻め上る。
山がちで起伏が多く、平地も水田が多くを占めます。無理せず、を念頭に軍を進めてください。
果雄軍は、レイ水を下って水路からレイ州を襲撃します。
ただ……
この戦いで戦力を浪費するのは好ましくない。
黄刺史も、王も、『負けぬこと』を念頭に置き、無理に攻め落とそうとはなさらぬよう。
郎・果雄がレイ州の注意を引きつけている頃、岳州軍は山南東道の南端、洪湖周辺を封鎖します。
レイ州が長江経路で広陵に事態を知らせぬためです。
封鎖を終えた岳州軍は戦況を見て、洞庭湖を渡り、がら空きになっているであろう、東側からレイ州を攻撃します。
作戦の終了時点で、我々が地図の
・鄂岳観察使領の西南端
・荊南節度使領の東南端
・山南東道節度使領の南端
を完全に領土としていることが目標です。
また、陛下にもお役目はありますぞ。
陛下は馬に乗れますな。軍装をして、馬を自在に操っている所を皆に見せてやってください。
それで皆が奮い立ちます」
確かに、広陵を出てから必要に迫られてずいぶん乗馬も上達したものだ。
わかった。ただし……
軍装は、太祖が来ていたような、鮮卑風のものにしてくれ。
なぜだかね、それを着てみたいんだ。
出撃は至って順調だ。計画通り、私が君山に待機している陛下をお迎えに行く。
舟を降りたら岳陽楼の前に集まった住民に挨拶、その足で兵営へ。
指揮系統を確認したら、いよいよ北上して作戦開始だ。
君山。今日の陛下は、緊張なんてないように見えたね。
白一色の絹で織った鮮卑の民族服を着て、頭には同じ白色の、
鮮卑人にとって太陽、月、火、友情、あるいは天そのものを象徴する帽子を被っている。
耳には金の耳環を嵌め、グータル牛の革で作った手袋と乗馬靴を履き、ひげも鮮卑風に細長く伸ばしている。
こうしてみると、建国二百六十年を過ぎても白氏は鮮卑の人なんだと思う。
いつもは柔和な印象を与える糸目も、胡服を着ると印象が変わる。
日焼けした肌も、いつもは素朴に見えるが今日は勇ましい。
「「 陛下だ! 」」 「「 陛下ああーっ! 」」
岳州の民衆の受けも上々だ。時々、「陛下」に交じって「可汗」って言葉も聞こえてくる。
住民には現役の鮮卑人もいるのだ。
この時、言うのは憚られたが、私は正直最後まで陛下の乗馬の腕が不安だった。
騎乗して天下を取った太祖皇帝にあやかるなら、かっこ悪い姿を見せるわけにはいかないからだ。
馬に乗れない鮮卑人なんて、愚かな諸葛孔明とか、謙虚な王藍雪(現・兵部尚書。如月派。過去ログ参照)と同じくらいおかしい。
「「 おおっ 」」
不安は民衆の喚声で消えたけどね。陛下は見事、騎乗しながら馬に後脚だけで立たせる芸当をやってのけた。
幸先の良い出立だった。後は念入りに立てた計画を、実行に移すだけだ。
─山南東道最南端。占領自体は苦も無く終わった。
湖と田園が多くを占める地域でまとまった抵抗などあるはずもなく、兵力を損ねることもなかった。
そしてこれが肝心要の決め手だが、現地の役人には陛下の御璽の押された命令書を見せて、
不当な占拠ではないのだと明らかにした。
さあここからが大切だ。(地図>>54をご覧ください)この地域は長江左岸に密接していて、
北東方面からの攻撃があるとすればまずここに楔を打ち込んでくるはずだし、
レイ州から広陵に早馬が飛ぶとすれば必ずここを通る。
だから、ここを軍で封鎖してしまえば、後顧の憂いを絶って戦えるというわけだ。
ただし、注意すべき敵の策略がある。大金を使ってこちらの役人を誘惑して裏切らせることだ!
万全を期したつもりでも、油断してると情報はどんどん漏れていく。
なぜならば、金を受け取り進んで敵に内通し、秘密を漏らす連中などどこにでもいるからだ。
だからって、慌てて大っぴらに逮捕・尋問しようものなら、
必ずやその事自体が広陵に伝わって、却って騒動を引き起こす。
だから今後すべきことは、まず、反抗の機会を作らせず、それを未然に防ぐことだ。
通行者のみならず、封鎖(こちら)側の役人の取り調べもなるべく秘密に行って、
問題が起こらないようにする。
軍は警戒を怠らず、不定期に見回りをして、常に万全の備えを欠かさずにおく。
引退した武官で見どころのある者には、仕事を与えて他人に誘惑されないようにし、
裏切り者や密偵には、調査した後「国家の法律」を適用する。
これをぬかりなく施行すれば、絶対に、安心だ。……陛下、いかがですかな?
「朕に異論があるはずもないよ。休民の進言は、当を得ている。山南東道の担当官がみな足下のようなら、
広陵が百個あったって、何の心配もいらないな。」
陛下は、いつもこうやって私の進言を取りたててくれる。
この「諸葛」の名にかけて、必ずうまくいかせてみせる。
さあ、じっとはしていられない。陛下も私も、じきに洞庭湖を渡ってレイ州に直接攻撃をかけなければ。
やる事はいくらでもある。戦況を見逃さず、いつでも軍を動かせるようにしておくのだ……。
前振りが終わるのを待っていた人は、どんどん入ってきてください。
同時に、新しいシステム【共闘勢力】を導入します。
【共闘勢力】について。
【共闘勢力】は複数の参加者からなるグループ。その参加者は同じ目標を掲げて協力する。
目的が一致すれば勢力を作り、共闘する必要性がなくなれば解消することも自由。
必ずしも加入する義務はないし、所属する勢力を変更したり、自ら新しい勢力を立ち上げるのも自由。
一人が複数の勢力に加入するのも自由。
【共闘勢力】という名称だが、軍事的共闘・政治的共闘に限らず、
協商関係や義兄弟など、とにかく複数参加者が組むならなんでもあり。
複数人がひとつの目標を持つことで、誰かが不在でもスレの流れを滞らせないように考えた。
例:今の白牡丹の場合
共闘勢力【呉王朝(中統)】
加入者:白牡丹
目標:広陵政権の打倒
というわけで、【呉王朝(中統)】への加入者を募集中です。
もちろん、ライバルである広陵政権や、独創的な様々な勢力も楽しみにしています。
それでは陽国としますね
①~②がスレ主さん
③~⑤が実質的に不在(NPC的存在)
となります。
まぁ、①~②に関しては両朝となりますので活動があるでしょうが、③~⑤
に関しましては、家臣団が活発な燕国(③)を除けば、実質的には子息が
活動している(=故郷・一族の地)程度なので、今後の状況次第において
は考えたほうが良いかもしれません。
まぁ、勿論、現状ではまだ半数程度の藩鎮が空白ですので問題はありませ
んが。
前の地図といい、今回の地図といい、遅くまでお手数をおかけしました。
ありがとうございます。
こうしてみると、データの上ではスカスカじゃなくて
ちゃんと勢力(=ネタの材料)があるんですね。
如月側の官僚たちや、白如月自身など、参加してくださるといいです。
両朝の動きはともにほしいですから。
引き続き、参加募集中でございます。
やあ、景栄。椅子と木卓を並べていたんだよ。
これからお客さんが来るんだ。お前も知ってる岳、郎の刺史がね。
ここに居たければ居ていいよ。二人とも、門下侍郎がこんな姿をしてるとは思わないだろうねえ。
宦官のお前に言うのは悪いが、やっぱり自分の世話も客の世話も、自分一人でする方が前よりずっといいよ。
ああ、来たみたいだね。諸葛休民、黄加陳。
「「 臣在。 」」
休民、ここへ。加陳もここへ。
(二人は設えられたばかりの席に座った。言葉も礼も簡潔で、やっぱり前よりずっといい、と白牡丹は思った)
それで?
「陛下、武陵源平定の計略を協議しましてね。お耳に入れたいと」
いいよ。お茶を飲みながら聴くよ。
(茶釜の湯がこぽこぽと、小気味の良い音を立てて沸いている。立つ湯気の影も面白い)
(小さく清い水流は、青磁の茶杯を温める)
(お茶を淹れると香り風のよう、白い玉の指を器に絡め、目を閉じて香りを聞き、薄緑の宝石を腹へと流し込む)
どうぞ。
「頂戴します」
うまいか?
「いつもながら驚嘆します。陛下と臣では何が違うのか。まこと好茶で」
そう思うのは、この場で放心できている証拠さ。良いことだ。
それで、武陵をどうすればいいのかな?
「武陵源は、急峻な山脈、奇岩が連立し、翠樹、白雲がおびただしい秘境。
兵を用いるには不利でございます」
当然だ。あそこは天境だよ。兵を入れたり、木を切り倒したり、山を削ったり、そういうのはだめだ。
「そこで我々は、土地よりも人の心を攻むるべきだと判断しました。
かしこには、大小併せて数多の蛮族の部族、それぞれ習俗も異なり、離合集散を繰り返しております。
彼らのそれぞれに天朝への帰順を説き、貢献の多き部族には高き位を授けます。
彼らの統治には口を挟まず、貢納・兵役とその見返りを仲立ちにした関係を築けば、
混乱もなく強力な戦力を得ることにもなりましょう。…陛下。陛下……?」
(白牡丹は瞼を閉じ、青磁の杯を鼻に寄せ、精神を香りの王国に旅立たせているように見えた)
「陛下。お聞きくださいましたか、臣らの策を?」
聴いたとも。配慮が行き届いていてよかったよ。君たちの策は、茶香の邪魔をしなかった。
ただ彼らを蛮族だのと呼ぶのはやめてくれ。呼ぶなら、帝室白氏もそう呼ぶがいい。
策については問題ない。運用……まあ外交だね。それは加陳に任せる。
今まで彼らと隣り合ってきて、知ってることも多いだろうから。
それから一つ補足するが、朕は武陵源諸藩に足を運びたいね。
「「 なりません! 」」
(両刺史が同時に叫んだ)
華蘭は外の光を見るともなく眺めた。
皇帝のいなくなった宮廷のなか。
妃候補であった彼女は、皇帝白牡丹をたらしこむための術を養父から教え込まれて育った。
華家の栄達を一手に担う為に――
だが今、皇帝の姿は奥宮はおろか宮廷にもない。
蘭は煙管を口から放し、ふうと息を吐いた。
白い煙は、龍のかたちになって笑い声を上げながら天に上っていった。
雲と同化しに行くのだろう。
…何故こんな事が出来るのか?
蘭は、実は華家の養女だった。
華蘭とは別な名を名乗っていた…そう、松の木の精だったのだ。
「人間稼業も辛いねぇ…。相手と契る前に未亡人とは、こんなに大量な娘がね」
白牡丹は父叡宗の側室をずっと後宮に置いたし、白如月も白牡丹の子を孕んだ薛氏を皇后に立てた
呉後宮に「未亡人」は存在しない
白如月に嫌われたとかでなければ
そうかい、ありがとさん。じゃあ一部書き直しだね。せっかくだから加筆するよ。
――暇だ。
華蘭は外の光を見るともなく眺めた。
皇帝のいなくなった宮廷のなか。
妃候補であった彼女は、皇帝白牡丹をたらしこむための術を養父から教え込まれて育った。
華家の栄達を一手に担う為に――
だが今、皇帝の姿は奥宮はおろか宮廷にもない。
蘭は煙管を口から放し、ふうと息を吐いた。
白い煙は、龍のかたちになって笑い声を上げながら天に上っていった。
雲と同化しに行くのだろう。
…何故こんな事が出来るのか?
蘭は、実は華家の養女だった。
華蘭とは別な名を名乗っていた…そう、松の木の精だったのだ。
「人間稼業も大変だねぇ…。前皇帝と契る前に鞍替えせざるを得ないとは、こんなに大量な娘がね」
白牡丹の趣味に合わせて習い事をしていた娘が殆どだろう。自分もその一人だ。
「あぁ…」
養父の勤言実直そうな顔と、それとは裏腹な傲慢で欲深な素顔が、腕で隠した瞼の裏に浮かぶ。
「消えて…消えなって言ってんだよ……」
養父から送られて来た白如月の趣味嗜好が書かれた帳面を床に放り出し、ため息を長く吐く。
養父に、言うことを聞かねば一族みな殺しにするぞと松林の前で凄まれた、思い出したくもない情景が今度は
よぎり、華蘭は起きて首を振ると気分転換に明るい日差しの差し込む窓へ向かった。
何度も済まないね。とんだケアレスミスさ。
>皇帝のいなくなった→白牡丹のいなくなった
>皇帝白牡丹をたらしこむため→前皇帝白牡丹をたらしこむため
>だが今、皇帝の姿は→だが今、白牡丹の姿は
「危険すぎます。行かせれば帰れぬ恐れのある場所に、行かせることはできません。
陛下は彼らについてあまりにも無知だ。私は郎州に赴任しもう三年。
彼らのことはそれなりにわかっているつもりです。大呉にあっては皇帝でも、彼らは心服しておりません。
もし、山間に包囲されたら何としますか」
(黄加陳は強硬に反対するが、白牡丹も負けてはいない)
包囲されて襲撃されるのは、何も山間に限らない!
寡人は広陵の宮中で殺されかけたんだよ。
いいか、武陵は天境の地だ。まだ人よりも、神精の影響力の方が強いんだ。
武陵源を心服させるのは、神に心服されることでもある。
寡人以上にそれが出来る奴がいるか?
諸藩にしても、いきなり威張り散らしでもしなければ、話し合う余地はあるはずだ。
(黄加陳と諸葛休民は、かわるがわる白牡丹を翻意させようとしたが、
白牡丹は一向に折れない。日が高くなった頃、黄加陳が言った)
「陛下がそこまでの決意をされているなら、私はお止めしません。
ただしお一人で行かせるわけにはいきませんな」
(諸葛休民はなお食い下がる)
「私はまだ納得しておりません! やはり危険すぎます!
巡遊は、彼の地が平定されてからでも遅くはありません。断じて陛下を武陵源へなどやれません。
たとい日が西から昇ったとしても!
君山を州兵で閉鎖してでも、出しませんぞ。そのことで私を不忠者と呼ぶなら、お呼びなさい!」
(この忠臣は立ち上がり、今や顔を真っ赤にして息を荒げていた)
(白牡丹と諸葛休民は互いの目を見たまま立ち尽くしていた)
(どちらも動かなかった。春の陽気の中、時が止まったようだった)
(先に座ったのは、白牡丹だった)
わかった、休民。お前を不忠者だとは呼べないよ。
今日はここまでにしよう。良い知らせを待っている。
(諸葛休民、黄加陳は一礼して帰っていった)
(諸葛休民の方は、白牡丹が武陵源行きを諦めていないことを恐れ、人をやって君山を監視させることにした)
─君山、白牡丹は語る
承知してもらえないとは思っていたさ。でも、朕は行くけどね。
持つべきものは良い友だ。朕はすぐに同じ君山に住む、姚朝欽を訪ねた。
姚朝欽、字は夜淑のことを紹介しよう。
彼は酒泉出身の道士だ。元来感性が鋭く、想像の内に数百の怪物を心に描き、
彼らを題材に奇怪な小説を書き散らしたため、奇人だと疎まれ孤独な生活を送っていた。
余りに自身の創造物に心を注いだため、それらには魂が宿り随意に使役・変化できるようになってね。
獏をもって人々の夢を渡り歩き、その夢を売り買いしていたが、朕はその得意客だったんだ。
太平君(叡宗の兄)に依頼されて、焦景栄に刺客が放たれた時には、彼を猫の身に変化させて救ってくれたことがある。
訪ねた時、姚朝欽はいつもの調子で「あらこんにちは、霜葉の君!」と朗らかだ。
夜淑、斯く斯く然々で、武陵源へ行きたいんだが、行かせてもらえそうにないんだ。
悪いんだけど、身代わりになってくれないか?
「畏まりました。(彼が右手を頬に当てると、次の瞬間には白牡丹の姿に変じていた)」
「それはそうと、新しい小説が書き上がったんですよ。読んでくださいよ、ねえねえ、青い鱗の龍が主人公の力作なんです」
「絶対おもしろいですよ、長編に見えてもすらすら頭に入ってきますよ、お手間はかけませんから」
わかったわかった、武陵源へ持って行って道中で読むから。早く貸せ。ほら。……夜淑、頼んだよ。
今後は十スレとは言わず、五スレは目指して頑張って貰いたい。
ストーリー途中でスレを放棄されて消化不良でモヤモヤしたくないしな。
姚朝欽に後を任せた朕は、今、相棒(琴)とともに湖上にいる。
一人旅は久しぶりだ。懐かしい思い出がこみ上げる。
水の上は好きだ。櫂が水中を掻く低く落ち着いた音、舟体に分けられた水しぶきの音、湖面が波立つ音。
水の香り。襟を吹く風の涼しさ。
一漕ぎするたびに、遠ざかっていく岳陽楼。
果てなく広がる空の青。
身の回りの景色が、あまりに広くて、広い空間の中にぽっつりと浮かぶ
すがすがしい孤独に浸る。
良い気持ちだな。
洞庭湖は、ただの円形の湖じゃない。
どこまでいっても広いけれど、その中でも世界がおさまるほど開けている所と、
近くまで緑の森が迫っている所がある。
そういう所に来ると、猿が良い声で鳴いているのが、こだましてくる。
お前も独りなのか?
岳陽からは、もう離れた。もういいだろう。
朕は、猿の哀号に合わせて、腹いっぱいに息をためて口笛を吹いた。
まっすぐ南へ行くと、目の前に険しい岩壁が立ちはだかり、
水はその両脇に分かれている。朕は右の道を選んだ。
水の音、風の音。身体を包む音は、心地よくて。
森を見て、茶畑を見て、人々を見た。
赤ら顔の農夫が耕し、水を運ぶところ。
その娘とおぼしき少女が父親に弁当を渡すところ。
胡服を着た派手な郎君たちが、馬でやってきて駆け去るところ。
ふと、岸辺を見ると、一人の内気そうな少年が座っていた。
目瞬きをすると、もう、少年はいなかった。
朕は、むかしの自分に会った気がした。
朝には澄んだ水が、昼には深い碧に変わって、夕刻になると、どこか愁いを含んでくる。
なんだか人の一生に似ている。
湖の向うから、遠く孤帆の影が現れて、やがて朕の小舟とすれ違い、碧空の彼方に消えていった。
朕も、あの舟のように、ぽっとこの世に現れて、ぽっと消えてゆくのだろう。
今の時代は、己れが何者かもわからず生き残れるような生優しい時代じゃない。
独り、湖の上で自分の心を覗いてみるとき、そこにいるのは何者だろうか。
朕は大鵬だ。風とともに九万里の高さに翔け上がる。
たとい風がやみ、その時に下りてくるとしても、
なお波を蹴立てて前へと進むのだ。
ふいに夕刻の冷たい突風が木々を揺らし、
葉は煽られて中空に舞い上がり、やがて静かに水に落ちた。
しばらく眺めていると、葉はくるくると回りながら、どこへともなく流れていった。
─そうはならない。頭を上げて、舟をこぎ続けた。
鳥の声、獣の声。遠くにこだましていた声は、消えてしまって。
街を見て、行き交う舟を見て、月の出を見た。
夜闌(たけなわ)、世界には、朕と、月と、影ばかり。
会うは喜び、別れは悲しみ、旅は道連れ、行こうじゃないか。
ある朝、朕は最後の水波に押されて、一つの街に着いた。
川と湖にかがやいて、木や花や田園に彩られて、
青や赤の屋根の楼閣の聳え立つ、立派な街。
こここそ郎州の常徳。黄加陳の治所だ。
ここで疲れを癒したら、さらに西へ行こう。
武陵源へ。はてなき天境へ。
初めて訪れた街を歩くとき、全てが新鮮で特別に見える。
朝の澄んだ光の中を、大勢の人がそれぞれの道へ歩いて行く。
笑顔が多いな、と思った。
雑踏は嫌いだけど、ここは窮屈な感じがしなくて好ましい。
せっかくだから少し歩き回ってみることにした。
川辺から街の中心へ向かって歩いていくと、大きな寺院に行き当たる。
遠目にもそれとわかる立派な門構えは、朝日を浴びてまだ眠そうにまどろんでいた。
中へ入ってみる。中は、時間がゆったりと流れているような気がした。
百年前、五百年前にも、同じ風景、同じ雰囲気だったのではないだろうか。
そう思うと、自分が五百年の時を越え、晋の時代の参拝者の中に紛れ込んでいるような感覚だ。
昔の人も、このように様々な表情、様々な思いでここを訪れたはずだ。
歴史的な場所の魅力には、そこを訪れる人々もまた含まれていると思う。
腹が空いた。寺院の門前の市で、鶏の足を串焼きにしているのを買う。
なかなかうまいじゃないか。この食感は癖になりそうだ。
威勢の良い呼び込みの声の重なり、人のうねり、所狭しと並んだ食べ物や服飾品、装身具。
子供達を相手にした遊戯場も賑わっている。
食べ物の屋台をはしごして、腹も満たされた頃には、
少し人波から抜け出したい気分になっていた。
街の中心部にある茶荘に入る。
人に淹れたり、自分のために淹れることばかりで、淹れてもらうのは久しぶりだった。
広陵にいた時も、お茶は自分で淹れるから、と言って他人にはやらせなかった。
座って、街の眺めや店内の装飾、他の客の談笑などを見ているとき、
どんな風に淹れているのだろうか、と考えたりする。
どこから来たのか、どうして来たのか、お茶の話にも花が咲き、
そうして飲んだお茶は、とても美味かった。
もう、日も高い。そろそろ行かなければ。
もしまた訪れる機会があるなら、今度はもっといろいろなものを見たい。
名残惜しい気持ちにさせる常徳の空気を背中に、馬を乗り継いで武陵源へと向かう。
道中、人の世界は次第に薄れてゆき、自然が色濃くなってくる。
常徳にも自然はあったが、それは人間に支配される自然だ。
太古からそこにあるような自然は、洞庭湖を行くとき左右に見たが、
今度は、そこに身を置くのだ。
もう、すっかり夜になった。
見上げると、銀河が氾濫したのか、と思わせる満点の星空が広がっている。
朕は、たまらなくなって琴をかき鳴らした。
琴は、星の音だと思う。
琴を演奏すると、その音色は星空を再現したものだと思う。
すると、朕は、はるか頭上に星空を戴きながら、
自分の周りにも星空を持っていることになるわけだ。
一つ一つの星が友達になったようで、心強かった。
今、左手に流れている川はレイ水という。
レイ水もまた、長い旅を続けて洞庭湖に流れ注ぐ。
洞庭湖は、いろいろなことを知っていた。
遠く旅してきた川が、いくつも流れ込んでいるからだ。
今、朕はその流れをさかのぼって旅をしているのだ。
川の教えてくれた武陵源を、初めて見に行く。
見よ、目に焼き付けよ! 山川詩を詠む者、武陵源を訪れずして、山岳森林を詩に詠うことなかれ!
この景観を、いったいどのような言葉でもって表現しろというのか?
景観だけではない。木々や、岩山や、肌に纏わり付く霧でさえも、生命をもって鼓動しているかのような
この感触を、いったいどうやって伝えろというのか?
自分の住んでいる場所の近くに、こんな世界があったとは!
武陵源は、まるで侵入者を品定めしているようだった。
境界に立ったときからすでに、朕を見張る幾十万、幾百万もの見えない視線を感じていた。
踏み入り、進んでいくと、慎重に息を凝らしてこちらの一挙手一投足をも見逃すまいとする、
木々の緊張が伝わってきた。
風が梢を揺さぶる音や、木の空洞を通る響きは、招かれざる客について仲間内で連絡を取り合う
彼らの声のように感じられた。
木々だけではない。鳥や獣も、全て警戒と敵対心を向けてきていた。
霧がじっとりと身体に張り付き、全身を倦怠感で包んでくる。
耳の奥がじんじんと痛み、これ以上進むなという警告を伝えているのだと思った。
空だけは踏み入る前と同じ青色をしていたが、空を頼るわけにはいかなかった。
何しろ、空に無数に突き刺さっている奇岩は、
明らかに朕を迷わせようとする悪意を持っていると思われたからだ。
僅か歩いた頃には、朕は方向感覚を失っていた。
これは、危ない。本能がそう告げていた。心臓が割れ鐘を打つように早く鼓動する。
まるで、止まる時が目前に迫っているのをわかっているかのように。
この古森は、今までに朕が知るどの自然とも違った。
とても古く、人を寄せ付けず、そして強かった。
死が笑った。
朕は全く独りだった。倦怠感と耳の奥の痛みは強まる一方で、
反対に木々のざわめきや重圧感はより厚みを増して迫ってきた。
朕は、試しに木々と対話することを試みた。
「朕は、大呉皇帝の白牡丹だ。この武陵源に踏み、踏み……」
声が出ない。心臓を見えない手で強く掴まれたように、最後の声は消えゆく掠れ声になってしまった。
朕はその場に座り込んだ。
脚が自分のものではないように感覚が無く、体重を支えていられなくなったのだ。
歌が聞こえる。
低くくぐもった声で、ふむ、ふむ、ふーむ、と重なり合う歌だった。
古い木々が歌っているのに違いなかった。
侵入者を死の眠りに誘う歌。
耳を塞ぐこともできない。壁の亀裂から確実に入り込んでくる洪水の流れのように、
耳に入り込んでくる音色は、かろうじて繋がっていた意識の糸を断ち切ろうとしていた。
ぼやけた視界は、青い空がだんだんと浸食され狭くなっていくのをとらえた。
空が狭くなると同時に、ざわざわと猛る木々の枝が広くなってくる。
侵入者を押し包み、命を奪おうというのだ。
もうだめだ。助けてくれ……
ぼろん。どこか遠くで音が聞こえる。川を隔てたぐらい遠くに。ぼろん。とても心地よい何かが。
ぼろん、ぼろん…… しだいに意識がはっきりしてくる。
意識がはっきりしてくると、音が確かに、近く感じられてくる。
それとともに、悪意を持った木々の歌には霧がかかり、及ぼす影響も小さくなる。
鳴っていたのは、琴だった。持ち主を救おうと、独り鳴った琴だった。
両手を地に付き、腹から息を吐いて今度こそ起き上がった。
ぼろん、ぼろん── 傍らで琴はまだ鳴っていた。「風清」、ありがとう。よくやった。
「風清」と呼ばれた琴は、あるたけなわの秋、呉の糸を、蜀の桐に張って作られた。
弾力のある弦に、しなやかな胴体。比類なき名琴と呼ばれた「彼」は、楚王就任の祝いとして、
まだ幼かった白牡丹と巡り会った。
奏者は琴に心を託し、琴は奏者の心を映して鳴る。
奏者と琴の絆の深さは琴の術を学んだ者にとっては周知の事実であり、
奏者が琴を選ぶのではなく、琴が奏者を選ぶのだと考えられてきた。
白牡丹と、彼の名付けた「風清」は、相性がぴたりと合い、
「風清」の忠誠が表す音は天上から朗々と響くように、すべてを音の内に表現したのだ。
朕は風清を手に取り、掻き鳴らした。
ぼろん。その一音は古森を吹き抜ける風となり、あの重い閉塞感を少しずつ洗い流した。
考えるより先に、指が動く。
思いを抱くより先に、音色に情が吹き込まれる。
琴と一体になったように、朕の身体も音色に身を任せて揺れ動く。
もう、絶望はどこにもなかった。最高の演奏をしている。その思いが希望を呼び起こし、
人生で最高の瞬間を味わっているような幸福感をもたらした。
先程、あれほど強く侵入者を苛んでいた古森は、焦燥感を隠せなくなっていた。
枝を四方八方に振り回し、ふむ、ふむ、ふーむと死の重奏を歌ってみるが、
「風清」の音色の中では、本来の威力は望めなかった。
すると、森の奥から何か小さい姿がこちらに近づいてくるのが見えた。
それが近づくにつれ、小さい姿と思ったのは、大蛇が鎌首をもたげて這い寄ってきている姿だとわかった。
朕は不安にかられた。
蛇が言う。
「わしを恐れておるな」
朕は何も言わない。
蛇はちろちろと舌を出し、切れ目を入れたような鼻腔をひくつかせた。
目の奥には妖しい緑色の光がちらちら覗いている。
「わしがおまえに噛みつくのではないかと思っておるな」
朕はまだ何も言わず、琴を奏で続けた。
琴の音は、先程よりも響きが鈍っているように感じられた。
朕は蛇を見て恐れているのだろうか。
木々は一度は引っ込めた嗜虐心を再びもたげて、元気づいて歌っているようだった。
「白牡丹。わしを見て恐れたのは貴様の心の弱さよ。わしの姿は恐ろしいよなあ」
蛇は円を描くように、朕の周りをスルスルと滑る。
「怖ければひと思いに楽にしてやってもよいぞ」
夜闌スレはアンジェの自己満足スレだから見てても面白くないし感情移入もできない
紅、白、黒、黄色に彩られた幾何学模様がてらてらと輝き、地滑りとともに増幅、収縮するのも、
鱗の下に隠された豊かな筋肉が、今は緩慢に優雅に動いているのが、いつ獰猛な瞬発力を顕わにするかわからないのも、
怖くて仕方なかった。
蛇はそんな思いなど全て見透かしているかのように、微妙な動きで次の挙動を悟らせず、
ゆっくりと朕の周りを回っていた。
蛇の動きに合わせて木々の歌声も重なり、完全に朕を包み込んだ……。
蛇は猫なで声で、死への誘惑を囁く。
「お前の命はじきに終わる。老いた木々の歌に蝕まれてな。
怖ければ、その前にわしが全てを終わらせてやろう。
白牡丹よ、絶望することはない。わしの腕の中でやすめばいい。
わしがお前を慰めてやる。
逃げろ、そして自由になるんだ!
全ての闘いはそれで終わりだ。
時間も空間も超えて、わしがお前をすばらしい世界へ連れて行ってやる。
白牡丹……白牡丹よ、
死はお前を慈しんでくれるぞ……」
蛇の声は喋れば喋るほどに甘く優しくなっていった。
しかし、彼の思惑とは逆に、その言葉を聞けば聞くほどに朕の心にはある強い感情が湧き上がってきた。
─嫌だ!
口が勝手に動いた。はっきりとした大声が飛び出した。
寡人はまだ生きたいんだ!
諦めるには、まだ若すぎる!
寡人は自分自身の足でここに来た!
死の口を見たが、見たからにはもう恐れることなど何もない!
寡人は先へ進む! 死よ、目の前からいなくなれ!
お前に寡人をくれてやる気はない!
いなくなれ!
琴の音のくもりが晴れた。
先程よりずっとはっきりしていながら、攻撃的ではない。
しかも、この音色は古森に驚くべき変化をもたらした。
これまで、古森の歌は悪意と嗜虐心のみが表れたものであり、侵入者の命を奪おうとのみするものだった。
それが、新しい「風清」の音色と重なると、より高い次元の、深い思慮分別と叡智を含んだ響きを帯びるようになった。
これが古森の木々の本質だった。太古の森の賢者。
外界の人間への不信と怒りに心をくもらせていた木々は、朕を受け入れ、思慮深い言葉で語りかけていた。
霧のじっとりとした閉塞感や、耳奥の痛みも消えた。
演奏を終えたとき、朕は、まるで母の胎内にいるかのような安心感を覚えていた。
蛇が言う。
「お前は死を克服した。一度目は花姑の助けで『幸運にも』生き残ったが、
二度目はお前自身の強い意志によっての克服であったな。
先へ進め。わしがお前に再び遭う日が近くないことを祈る。わしは最後(いやはて)の敵なる死そのものである」
そして、彼は森の木々の間へ、どこへともなく去っていった。
朕は、道の先へと歩き進んでいった。
もはや迷わなかった。進むべき道は、心がわかっていた。
朕は着いた。
目の前には、畑や水田が広がり、水牛が耕している。青い服で赤ら顔の農夫たちがせっせと動き回っている。
赤地に、色とりどりの刺繍をした服を着て、大きな帽子を被った女たちが談話している。
こここそ、武陵源に太古から生きる果雄(コーション)族の住む地、その都であった。
アンジェさーお前さっき三戦板の議論スレに名無しで書き込んだろ?
書く時間帯が一緒でバレバレなんだよ!
それなら一言そう言っておいたほうが個スレとして楽しめるぞ
言うまでもなく夜闌スレは参加型のスレです。
参加者への絡みであれば夜水魚の返答待ちですね。
華蘭に関していえば、接点がないので絡めません。
白牡丹の中で存在すらおぼろげだと思うので、思い出すというのも不自然ですから。
また、夜闌スレはいつでも皆様のご参加をお待ちしています。
一時的に複ハン付けて、参加者に付いてやる気はない?例えば華蘭なら後宮の宦官とかさ
まあ参加者が増えてくるとそうもいかなくなるけどね
息子よ。今まで神の所有物だったお前は、七つになって人と成る。
めでたく果雄の子と成ったお前に、こうして話をしてやれてうれしく思う。
私は、お前の年には父親を失っていたのだから。
お前は果雄の古い昔話を知っているね。何だ、もう一度話して欲しいのか?
仕方のない奴だ。それじゃあ、話してあげよう。
昔、昔、一柱の強い神がいた。
神は雨と風を従える力を持っていた。田を作り、畑を耕す我らの先祖にとって、どれだけの恩恵であったことか。
今のお祭りも、ずっとずっと、感謝を忘れないためにするものなのだ。
いつものお祈りもね。
ところがある時……
北の神が、境界を侵して攻めてきた。
先祖の神は、自由を守るために立ち上がった。強力な武器を鋳て、雨と風を起こし、先頭に立って戦った。
先祖の民も、その後に続いて勇猛果敢に戦った。
この闘いは、太陽と日照りを味方に付けた敵の勝利に終わったが……
神は民を生かすために肉体を捧げ、民は散り散りになって山の間に逃げ隠れることができた。
そして今まで、岩や、山や、川や、泉や、霊魂を信仰して暮らしてきたのだ。
神は肉体は滅びても、霊魂までもが消えたわけではない。
私の心にも、お前の心の中にもある。お前は私と同じ果雄の子だ。
昔、神と共に戦った勇猛な魂を受け継いでおる。
息子よ、果雄の男なら、強くあらねばならぬ。
人が死んでも、それはその人が永久に滅びることを意味するのではない。
その魂は我らを生んだ大地に、水に、そして空に還るのだ。
人の心にも記憶が残る。
挫けてはならんぞ。何があってもな。
さて、少し待っていよ。父は「呉」の使いと話をせねば。
「呉」はな、先程話した北の神が住むより、さらに北の最果てより下って世を支配する大国よ。
少し前に「皇帝」がすげ替えられ、負けた皇帝がここから近い場所に拠って再起したそうだ。
「呉」の人間は口が上手い。
奴らの口先を信ずるわけにはゆかん。
何を言ってこようともな。
「呉」の皇帝に会いたいものよ。
皇帝自身に会って、見所がある男なら、力を貸してやらぬこともない……。
目的地に着いて、まずしたかったのは王城に行くことでも街を見物することでもなく、
眠りたい、ということだった。
漁夫に場所を尋ね、宿を取る。気の良い白髪の爺さんが主人をしていて、
果雄の民ではない朕も、快く泊めてくれた。
宿は飯店も兼ねていて、夕刻になると賑わう。
席に着くやいなや、泥のように眠りに落ちていたが、がやがやとした声に起こされて、
丁度腹も空いたことだしと階下に下りた。
滅多に来られない土地に来たら、その土地独特の食べ物を食すべきだ。
それも、現地人ですら気軽に食べないようなものを。
朕は、蛇の汁物を注文した。
さっきのささやかな仕返しだ。
蛇が運ばれてくると、注文したものがしたものなだけに、注目を浴びてしまう。
外国人ということもあって、
「兄さん、どこから来たんだ」「名前は何ていうんだ」
と、あちこちから尋ねられる。
いろいろな人がいた。雪のように白い肌で、平坦な顔もいれば、
褐色で彫りの深い顔立ちもいた。
服装も多種多様だが、共通することは、彩色豊かで形状も凝っているということだ。
宿の主人が酔って叫んだ。
「兄さん、楽器を持ってきていたろう。ちょっと弾いてくれや」
わかった。少し待っていてくれ。
部屋から琴を取ってきて、弦の上に指を置く。
演奏を始めると、果雄人の方が、呉人より真剣に聴いてくれる。
旅情は、心を揺さぶる。
広陵を出てから、苦難を乗り越えて太平君の公国にたどり着いたこと。
猫の焦景栄と再会し、一度広陵へ戻ったこと。
祭祀の削減は止められないと知ったこと。
そして、君山に住んでから今までのこと……。
全てが琴の音色に宿り、誰より、自身の胸に響いた。
「兄さん、こんな演奏が聴けるとは思わなかった。果雄の人間は音楽を愛する者を敬愛する。
兄さんが留まる限り、仲間と思う。困ったことがあったら、何でも言ってくれ。
ついでに、果雄の歌も聴いていってもらおう」
そこに居合わせた客で、かわるがわるに歌い踊った。
広陵の歌より湖南の歌のほうが情熱的だが、果雄はさらに情熱的だ。
激しい恋の歌、神話の歌、黄帝と蚩尤の決戦を歌った歌、その戦いに臨む戦士たちの歌、
果雄の民に流れる武勇の血の歌、どれも聴いていると血が沸き立ってくる。
朕も踊りたくなってくる。
気が付けば、踊りの輪の中に加わっていた。
「おい、街の他の奴らも呼んでこい! みんなで騒ごう!」
その後は、夜中まで、身体が動かなくなるまで踊った。
何故かって? 待っていたからさ。何をって、
「お前が呉の楽人か? 王がお前の演奏をご所望だ」
ほら、こうやって王から声がかかるのを。
何も考えずに宮殿に行って、「朕が呉の皇帝だ」なんて言っても信じてもらえるはずがない。
けれど、音楽なら民族や身分の垣根を越えられる。
お目にかかった王は、まだ若かった。三十にも届かないように見えた。
筋骨隆々で、背丈は九尺(二メートル)に達し、胴は広く、腕は棍棒のように太く、双眸は流星のように鋭い。
ただそこにいるだけで並み居る人を圧し、普段は泰然としているが、一度怒気を発すれば、
縮こまらぬ者はいないだろう。
頭の二倍もの長さで、黒地に宝石を散りばめた冠を戴き、
服装は、紅地に唐草模様の刺繍、そしてきらびやかな装飾品を帯びている。
蚩尤の民の末裔を率いるに相応しい威厳を、十二分に備えていた。
陛下、御前に失礼いたします。
「お前が噂の楽人か。宮中でも評判だぞ。私を満足させてくれれば、望みの褒美をとらせる。
さあ、弾くがよい」
しからば……
…ぼろん
「風清」の初音は凶刃だった。鋭利な剣に身を切られるのはこのような心地だろうか。
かつて呉潭に竜を切り伏せた剣の切れ味よりも鋭く、琴の音色は聴く者の肺腑を抉る。
ぼろん…… 二音目には、居並ぶ魂を残らず引き裂かんばかりである。
旋律はさらさらと流れる小川のよう。しかしその小川に引き込まれれば、這い上がることはできない。
果雄王・翠絶の前で、白牡丹は一心不乱に琴を弾く。
振り乱した髪は暴風雨、黒い渦となって夜叉のように舞い狂い、衣の皺は千変万化。
聴く者を強引に捕らえ、破壊してしまう嵐の中心だった。
はじめに弾琴に反応したのは、宮殿に棲まう精霊達だった。
数百、数千の精霊が一斉に唱和を始めた。低く木霊するような歌声で啼くもの、
高低さまざまの音域で唱和するもの、精霊達の歌声はすべて白牡丹の琴に乗る。
すると音色はますますこの世のものから遠ざかり、灰色の空を覆う雲は息を凝らし、崩れかけたまま動かない。
幾千もの合唱、悲鳴のような旋律は次第に律動を激しくした。
べんべんべんべん… 奏曲は中盤。複雑に織り合わされた糸からなる織物のようだ。
その律動に、戦慄しているのは宮中の人だけではなかった。
果雄の人々、拍手の音、喝采の声、さながら荒海の遠鳴のように響き立て、
また或いは動揺し、涙を流し、白牡丹の弾琴に耳を傾けない者はなかった。
ご清聴ありがとうございました。
この曲は、私の即興で、黄帝との決戦に臨む蚩尤を題に取りました。
「蚩尤は敗れた」
と、果雄王翠絶は言った。
「しかし、その魂は滅しておらぬ。我ら果雄人の血に、果雄の大地に、川に、泉に、風に、
蚩尤の魂は宿っておる。その魂が、今、目覚め、高ぶっておる! 果雄の子よ、お前達も、そうであるな!」
「「「 おおっ! 」」」
宮殿はどよめいた。
「見事だ、楽人。実に見事であった。約束通り褒美を取らそう。さあ、望みを言え。なんなりと」
望みは……
私の望みは、果雄の力を、呉のためにお貸し願いたいということです。
そのためにここに来ました。
「では、お前は呉の回し者ということか」
回し者ではありません。寡人の名は白 牡丹。呉朝の皇帝です。
「「「 なにっ! 」」」
ざわめく衆人を、王は右手を挙げて制した。
「楽人、冗談ごとではないのだぞ。私は今だかつて、そちらの言うところの『蛮族』の都に、
単身乗り込んでくる中国の皇帝を知らぬ」
いいえ。まだ世の中がそれほど複雑ではなかった頃、皇帝はそうすべき場所、そうすべき人を自ら訪ねました。
寡人もそれを理想としています。
「それが本当だとしても、危険だとは思わなかったのか。ここに辿り着く前に武陵源で倒れることや、
私がお前を人質に取って、お前の使いを脅迫するとは考えなかったのか。」
武陵源で、寡人は死の口を見ました。そして克服しました。
陛下には、そのようなことをするお方とは思えなかったため、正体を伝えたのです。
果雄の武将達が言う。
「大王、中国の皇帝が目の前にいるのです。なぜ捕らえないのです! 積年の恨みを返す機会ですぞ!」
王は武将達に言った。
「この皇帝の琴をお前達も聴いたであろう。口先の言葉よりも、彼がよほど果雄を理解しておることがわかる。
また、自らここに乗り込んで来る意気も天晴れなもの。そのような皇帝にこそ、力を貸す意味があるのではないか。
それに、『なんなりと』望みを叶えるといったのを反故にしては、私の度量が小さくなるわ」
ありがとうございます、陛下。
「よしなにお願い致しますぞ、陛下。陛下のお使いには良き返事をする積もりにて。
ところで、これは個人的な問いなのだが、よろしいか。……鶏と卵はどちらが先と思われる」
鶏と卵。答えるとすれば、『円には始まりがない』。
「成る程。それでは、消失した物体はどこへ行くと思われる」
非存在に。すなわち、すべてに。
「すべてに。……見事な言い回しですな。やはり貴方は粋な方でいらっしゃる」
こうして、武陵源の果雄族を味方に付けることに成功した。翠絶に続き、果雄の諸部族もまた、君山に来朝することになる。
──岳州、諸葛休民
「『無用なことは話さない代わりに、口から漏れた情報は寸分の狂いもない』」
「夜水魚君、君、もしかしたら間諜とか忍びに向いてるかもしれないね。」
「どうかな、うちの州でそういうお仕事してみないか?」
(本気とも冗談ともつかぬことを言う諸葛休民)
「そうしたら、今よりもうかるぞー」
「……なんてね。まあ、もし州のお仕事がしたかったら、いつでも考査受けに来ていいから」
「いやー、まさかそんなに褒めちぎってくれるとは思わなかったからねえ」
「そんなに岳州が気に入ったなら、いっそ働いちゃえばいいじゃないの、と。」
「ああ、街の歴史なら春秋の楚の時代からあったらしいんだけどね、詳しいことはよくわからないんだよ」
「気にしない気にしない」
「あ、でもいけない、お仕事も何も、君ってまだ釈放が決まったわけじゃないんだった」
「いや~、参った参った!」
(自分で言ったことで大笑しながら、諸葛休民は頭で考えていた)
「(ふむ、人とお話しするのが上手なのだねえ)」
「(ポンポンポンポン言葉が出てくる。まるで商人みたいだ)」
「(もしこれが『演技』なら、どこかにボロが出るだろうが)」
「(たとえば嘘をつくとき必ず瞳が宙を泳ぐとか、ちょっと言葉に間ができるとか)」
「(そういう『癖』を全部隠せるなら、降参するしかないがね)」
「村で子供が。すばらしいじゃないか。新しい命をみんなで祝うっていうのもいいね」
「私からも、おめでとうー」
「おっと、『保証人』さんが着いたのかな。どうぞ、こちらへ。」
(村長を椅子に招く。武官は諸葛休民の背後に回ると、唇を動かさず伝えた)
「お気を付けください。勘に過ぎませんが、どこかおかしい。桃里村も、この老人も」
「初めまして、村長さん。州刺史の諸葛休民です。こんな遅くにすみませんね」
「事情は聞いていると思いますが。彼は確かに潔白であると保証できますか?」
-この役人、喋りは軽妙だが存在感には重みがあるな。
夜水魚はつい、相手をまじまじと眺めてしまった。
(…ぎくっ。忍びや間謀だと?この街で働いてみないかだって?)
「いや、あっしは不器用なもんで…」
(ばれちゃあいけねえ!ばれちゃあ!俺は仕方ないにしても、村のみんなが忍びだとばれちまっては…)
「えっ?儲かる?いやぁ、魅力的なんですが、あっしにはちっとドジな側面も
ありやしてね…」
(考えてみれば、村ごとこの街のお抱えになんてもし言われても、他国で作戦中の奴等もいるだろうしな)
(それは例えば、この街の敵対勢力かも知れねぇ。今更だが桃里の名前をばらしたのは軽率だったな)
「ありがとうごぜえます。考査受けですね?覚えておきやす」
(だけど俺は拷問されたかなかったんだよ!!!!)
「この街の素晴らしさはもっと周囲に宣伝すべきだと思いやすよ!民も流れて来るでやしょう」
「…そうでやすよね、今繁栄してるんだから、そんな悠久の昔の事なんて持ち出さなくとも」
(…それに下手に辛抱して「あの村には何かが?」なんて勘ぐられるのもまずいしよ)
つらつらと考えながら、相手の目を凝視したり、話に応え頷いたりと自然な仕草を心がける夜水魚だ。
(分かるよな、きっと村のみんなも分かってくれる…駄目だ、怒った顔しか思い浮かばねぇ!!)
そこでハッとした諸葛休民に「釈放が決まったわけじゃあないんだった」…と大笑いされ、がくっと肩の力が抜けた。
(このおっさん…天然なのか、それとも演技か?)
夜水魚は諸葛休民をそれとなく観察しながら、桃里村村長との関わりを思い出していた。
戦争孤児で泣いてうずくまっていた彼を、村長は拾ってくれたのだ。
(恩を仇で返す事になっちまったらどうしたものか…)
「いやぁ、ありがとうごぜえやす。昭慶も凛々も生まれた餓鬼も喜ぶでやしょう」
言い終えたとほぼ同時に、扉が開かれ桃里村村長が入って来た。
「入らせて頂きますよ」
どうぞ、こちらへと諸葛休民に勧められた村長が「どうも」と頭を下げつつ、己が席に向かう。
その時、夜水魚と目が合うとのどかな様子でにっこりと笑った。
(この馬鹿者め)
(スミマセン)
ほんの一瞬で互いの感情を読み取ると、村長は用意された椅子に腰掛けた。
諸葛休民を真正面に見据える。
「いやいや、こちらこそ初めまして。桃里村の村長である空朱鷺と申します。お気遣い有難うごぜえますだ」
「はい、事情は聞いております。全く、このバガダレめが!」
「もし出会ったのが凶賊だったら、今頃身ぐるみ剥がされて川に浮かんでたかも知れんのだぞ!
この、間抜けなスットコドッコイ!!」
「…そんな訳でして、この阿呆は白ですだ。村長たるわしが請け合いますだ」
オー!どうしたんだい?
(おや、この子は男の子かな、女の子かな?)
(泣いてるけど…ひょっとして迷子だったりして…)
(この辺りに、ポリスとかあるかなあ・・・)
あたし、ニーファ。
え?男の子かって?ううん、女の子よ。五歳。母様とはぐれてしまったの。
おじちゃん、母様のいるとこ知ってる?
ほう、なかなかおしゃまさんだねw
ごめんごめん、ちょっとボーイッシュに見えたものだから。
お母さん、かい?
(やっぱり迷子だ)
ポリス…呉のことばで何て言うんだろう…は何処にいるのかな…
お母さんは、どんな姿をしてるんだい?年齢は?
お前なー
ちゃんと「歴史」をやれよ
ポリス…?ひょっとして街の警備兵の?
やっぱりあたし、自分で母様を探してみるっ!
ごめんね、それじゃあ!
(ミカエルさん、皆さん、あたしが迷子になったせいで不愉快な思いしてごめんなさい!)
たたたたっ…と足音速く駆け去ってゆく。
お、おいお嬢ちゃん!?
何となく心配だが、無理に後を追うこともない…か。
(いや、却ってこちらが不快な思いをさせてしまい済まなかったね。お母さんに会えるように、後!
おれの為にこのスレから離脱しないでね。そうすればきっと、お母さんに会えるよ)
少女が去った後に暫し佇む。
>>96-97
不勉強で済まなかったね。ファンタジーと勘違いしてたよ。
では、スレや古代中国史を熟読して勉強してから出直そう。では失敬した。
>>209
みじんこにはみじんこの得意分野がある。
みじんこのネタは大好きだ。人生経験豊かな将軍を書かせたら、逆立ちしても敵わない。
211 :ちんりん:2012/02/19(日) 23:48:04.19
苦手意識を持っているということと
本当に苦手かどうかということはまた違う。
俺はみじんこは情景描写が苦手だとも思わないが
この場合どう書くのが自分にとって楽しくて楽かというのが大切だ。
楽で楽しくなければあの書き方で延々と>>100越えるまで書けない。
参加者には、自分なりの文体を見つけてもらいたい。
気を使って空気読もうとして俺の真似をしようとしたら、
他人のスタイルなんだからそのうち絶対辛くなるぞ。
「黄刺史! 全隊配置に着きました!」
うむ。……わしの眼前には春を迎えた山と、そのふもとに見渡す限りの水田、
そして、あぜ道を埋め尽くす“敵兵”の群れが広がっている。
軍を指揮するなど初めての経験だ。
一州を預かる立場として、必要になる時も来ようかと読学した兵書の技。
付け焼き刃が通用するだろうか。
しかし、とわしは思い直す。
経験がないのは敵方も同じだ。
こちらの進軍が始まってようやく詰問の使いを寄越すようなレイ州刺史に遅れは取らぬ。
わしは一度後方を振り返る。兵士達は、決意を固めた面持ちで整列している。
拝領した「皇帝旗」は、風に勢いよくはためいている。
諸葛休民は、戦うのに無理はするなと言う。
だが戦いを前にして、そのような事を兵に伝えて心の乱れを生むわけにはいかぬ。
陽動であろうが関係ない。「その場」「その場」を死地と思って戦う。
政治と同じではないか。
いける。
心を落ち着け、わしはその場で兵を鼓舞した。
─今朝、鷲が三回陣の上で弧を描き、太陽に向かって飛んでいった。
これは今日が我々にとって良い日になるという兆しである!
あれがレイ州軍だ。我らの掲ぐ皇帝旗の行く手を阻む敵である!
敵は、我々の攻撃を防ぐことができると思い誤っている。
その考えを改めさせてやれ!
あの愚か者どもが、過去に一度も味わったことのない、キツい一撃をお見舞いしてやろうではないか!
さあ、いよいよ! 真っ向から、勝負だ!
「「「 ウワアアアア、ウワアアアアッ! 」」」 「「「 殺(シャー)! 殺! 殺! 」」」
隊伍を組んだ兵団が喚声を上げながら敵に突撃してゆく。
打ち合わせ通り、弓弦の音が一斉に鳴り響き空が暗くなるほどの一斉射撃が敵を襲う。
気勢を削がれた敵に、槍隊が怒濤のように襲いかかる。
ひるむな! 前進しろ!
わしも采配を振るって督戦するが、弓矢の援護を受けた槍隊は言われるまでもなく勇猛に敵を切り裂く。
敵の反撃に対しては、最前面で盾を持った兵が死にものぐるいで味方への攻撃を防ぎ、
その間を縫って軽装の兵が敵をかく乱する。
その後ろに控えた兵は、槍で前面の敵を押さえつけ、
押さえつけたところで、さらにその後ろにいる主力部隊が敵を確実に突き殺す。
む。─姑息な敵が、我々の側面に回って攻撃しようとしてきた。
すかさず、側面の兵は敵の動きに備え、是が非でも戦友を卑劣な襲撃から守ろうとする。
やがて、敵の抵抗が乱れ始め、勢いに乗って味方は押し攻める。
このままレイ州城まで攻め込むか。それとも、一度止まって体勢を整えるか。
わしは周囲の山を睥睨する。
伏兵が隠れておるやもしれん。
ここで蛮勇にかられて突出する、そのことこそ諸葛休民に戒められた自滅の道。
ここに陣を張る!
短く指示をすると、兵達がいそいそと陣幕を用意し始めた。
時は来た。今こそ、蚩尤の末裔の勇猛さを思い知らせてやる時だ。
私は一つのことしか考えていなかった。先頭に立ち、王の務めを果たすこと。
中国の王は、先陣は臣下に任せて自分は安全な場所に隠れるのが習い。
それぞれに流儀というものがあり、それを軟弱とは言うまい。だが、果雄では有り得ないことだ。
最前線に立って臣下を守れぬ男に、王たる資格はない。
だから果雄の王は、生まれた時から誰よりも強くなることを義務付けられている。
戦のために作られた、血のように朱い蚩尤の面ごしに前方を睥睨する。
眼前に現れる敵すべて、この鉄疾黎骨朶と二張の弓で血の海に沈めてやる。
「大王、今のうちに兵を励まされては?」
私の姿だけでは不足か? ……言葉を飾り立てて、強くなった気になるのは嫌いだ。
何を叫んでも、結局、勝つときには勝ち負けるときは負ける。
上陸地点が見えた。船を泊めろおおおーっ!
誰よりも先に船から飛び降り、待ち構えていた敵兵の頭に鉄疾黎骨朶を振り下ろす。
鈍い音がして、敵の頭が兜ごとぐしゃりと潰れる。
間髪入れず、二つ、三つ、次々と潰していく。
恐ろしい蚩尤を見て恐怖にこわばる顔が、一瞬で、目も鼻も口も区別がつかぬ肉塊に変わってゆく。
私の後に続いて果雄の男たちも次々に餌食を仕留めていく。
敵の突き出した槍を跳躍でかわし、空中から刀を振り下ろして首を刎ね飛ばす。
一人の敵兵を三人で引き包む。一人が敵の斬撃を受け止め、二人目が転倒させ、三人目が息の根を止める。
敵に刀を叩き落とされた者は、上下の顎で敵の刃をかみ砕き、
指を目に突き刺してえぐり出す。
敵が密集して押し寄せてくれば、散って受け流し、包んで殺す。
戦いに臨む時、われわれの軍装は色とりどりに彩色されているが、
終わってみれば必ず全身朱に染まっている。
最も返り血を浴びた者が、勇者たる栄光に浴す。
─お前達が長の平和に堕落していた間、我々は戦いの技を磨いていたのだ、どうだ漢人!
敵は次々に背を向けて逃げ始める。
逃がすなあああーっ! 私は叫び、追いついて骸に変えてやる。
後から続く味方も、思い思いに敵を討ち取っている。
郎州の状況はどうだ! 殺しながら傍らの味方に叫ぶ。
「州境で敵を破り(>>94)、その後少しずつ北上しているそうです!」
ならば我らも進む! 続けえええーっ、お前達が真に蚩尤の子なのならば!
歴史物語に登場する西洋人の役割ってのをちゃんと意識すべき
ここはどこ?
ミカエル!ミカエル!
者共、槍を持て
「スレに書きこんでいる」だけで「参加している」とはみなしません。
勝手なルールつくんなや!
満天の星空、銀色の世界。
その下のあぜ道を越え越え、私は陛下をお訪ねした。
陛下、お邪魔致しますぞ。……おお、陛下!
最終調整を終えた私を迎えたのは、胡服を着て、庭で夜空に琴を奏でる青年皇帝だった。
御自らの出撃を控え、何をお想いですかな?
私自身は緊張がないわけではない。何しろ、この戦いの構想は私が考えたのだから。
おそらく、己れの緊張をほぐす意味もあって、私は陛下に軽口を叩いた。
よくお似合いでいらっしゃいますな。きっと明日は、皆の注目を一人占めですぞ?
陛下はにこと笑って、視線を夜天に戻した。
「休民、戦いは怖くないか?」
一瞬、意外だ、という思いが頭をよぎる。
そうか、陛下も緊張されていたのだな。考えてみれば当然だ。
今まで大変な目に遭われてきたとはいえ、まだ二十歳を越えたばかりなのだ。
時々、それを忘れそうになる。あなたは、そもそも人とは住む世界も見ているものも違って、
恐れの気持ちなんて、ないように見えることがある……。
恥ずかしい。私が陛下を励まさなければならなかったのに、逆に甘えようとしてたなんて。
そうだ、今は私がこの方を励ましてあげなければ。私は己れの胸をドンと叩く。
ははは、何をおっしゃる。明日はよき日になりますぞ。
陛下の号令一下、岳州軍は北の洪湖を封鎖します。
その間に、郎州と果雄は敵を押しまくっておりましょう!
あの黄加陳と翠大王ですぞ。レイ州ごときに遅れは取りません。
そしてとどめは、この岳州が。心配めさるな、陛下はこの休民が護って差し上げる。
陛下はもう一度にこと笑った。
「そういうことでは、ないんだけどね……。」
ああ~、良い音だ。今日の陛下の琴は、いつにもまして余情を含んだ音色だ。
もともと綺麗な星空が、もっと綺麗に見えるじゃないか。
ちくしょう、涙が出てきたよ。なんかこの人の前で泣いてばかりで恥ずかしいから、
上を向いてバレないようにしないといけない。
「ちょうどこんな星の綺麗な夜だったかな」
陛下は私に、というより一人想いを空に放すように語った。
「二人で後苑に忍び出て、宝物を探した。手習いも、勉強も、いつも一緒だった。
二人でいるのが当然だった。朕は、弟が、白如月が大好きだったよ。
本当は、あいつが皇帝をうまくやってくれるなら、帝位なんてあげようと思ってた。
でも、今のあいつは、捨てちゃいけない大切なものを捨てようとしてる。
官僚たちに、好き勝手な幻想を押しつけられて……。
あいつは、朕を海外まで捜して『殺せ』って命令した。
あいつを助けてやりたい。
それで、もう一度昔に戻りたい……。」
ああ。私は、陛下のお顔を見ることができなかった。どんな言葉をかけたらいいか、わからなかった。
仲の良かった兄弟にすら命を狙われる。まして他の臣下は、誰一人陛下を理解しなかっただろう。
この人は、こんなに優しい人なのに、こんなにも孤独だったのだ。
─陛下。
大丈夫です。全部、うまくいきますよ。また兄弟二人、仲良く語らえる日が来ます。
私の言葉は、慰めになっただろうか。
それ以上語る声はなく、ただ陛下の琴の音だけが夜空に吸い込まれていった。
出撃を前に、岳州の住民がみんな、朕のことを励ましてくれた。
この日は、飯店で大いに飲みかつ喰らった。誰だ、髪の毛引き抜いた奴は!
でも、あるとき朕はその場を離れて、君山の家に戻ったんだ。
人にとっては、つかの間にしろ独りになることが必要だから。
人の言語は、独りでいるということの二面性をはっきりと意識してきた。
“寂寥”という言葉で苦痛を表現する一方、“独居”という言葉をつくってそのすばらしさを表現した。
満天の星、月光で明るい庭、そしてこの静寂。
静寂はさまざまな想いを連れてきてくれる。
朕は、「風清」の弦に指を置き、これから自分が引き起こそうとしていることについて思いをめぐらせた。
一度挙兵すれば、いつ終わるとも知れない戦乱の幕開けだ。
朕も、皆も、まるで坂道を転がり落ちる石のように……
終わりに向けて、止まらない。ずっと。
どれだけ死ぬだろう。如月、朕とお前は、一方が生きる限り他方は生きられないのだろうか?
そんなことを考えていると、諸葛休民が訪ねてくる。
最終調整の終了を告げて、彼はお世辞を言ってきた。
「よくお似合いでいらっしゃいますな。きっと明日は、皆の注目を一人占めですぞ?」
朕の気も知らずに。この胡服は、自分の気持ちを奮い立たせるためのものだ。
それでも、気持ちは楽になった。朕は、心の中で自分の人生に対しておだやかに、しかしきっぱり言ってみた。
「寡人はあなたを信頼している。あなたがしなければならないことが何であろうと、
そうしたらいい」と。
不思議なことに、人生が朕の必要にこたえてくれるような気がした。
休民に訊いてみる。休民、戦いは怖くないか?
すると彼は、朕が目下の戦いと自身の安全を危ぶんでいると勘違いした。
「ははは、何をおっしゃる。明日はよき日になりますぞ。
陛下の号令一下、岳州軍は北の洪湖を封鎖します。
その間に、郎州と果雄は敵を押しまくっておりましょう!
あの黄加陳と翠大王ですぞ。レイ州ごときに遅れは取りません。
そしてとどめは、この岳州が。心配めさるな、陛下はこの休民が護って差し上げる。 」
そういうことでは、ないんだけどね……。
でもね、休民のほうが正しい。ときとして理解できないことこそが、最高の理解といえる。
さっきの自分は、まだ起きていないことのことで憂慮したけど、
とりあえず今は、目の前のことに集中しなければ。
今の想いは、空に放して。
琴の音とともに、思いのたけを吐き出した。
ちょうどこんな星の綺麗な夜だったかな。
二人で後苑に忍び出て、宝物を探した。手習いも、勉強も、いつも一緒だった。
二人でいるのが当然だった。朕は、弟が、白如月が大好きだったよ。
本当は、あいつが皇帝をうまくやってくれるなら、帝位なんてあげようと思ってた。
でも、今のあいつは、捨てちゃいけない大切なものを捨てようとしてる。
官僚たちに、好き勝手な幻想を押しつけられて……。
あいつは、朕を海外まで捜して「殺せ」って命令した。
あいつを助けてやりたい。
それで、もう一度昔に戻りたい……。
休民は、泣き声で励ましてくれた。
「陛下、大丈夫です。全部、うまくいきますよ。また兄弟二人、仲良く語らえる日が来ます。」
そうなってほしい。そうならないかもしれない。
かつての日の幸福は失せ果てるかもしれない。
しかしそれでも、絶望してはならない。野はすでに緑に覆われている。
新しい、よりよい日々のほのかな兆しのように。
朕は、大丈夫だ。
それ以上語る声はなく、ただ「風清」の音だけが、夜空に吸い込まれていった。
白牡丹は武術に優れているわけでも、経国の才があるわけでもないですからね。
いわゆる「ヒーロー」ではないんです。
「ヒーロー」は父帝の叡宗皇帝であり、当代の白如月です。
白牡丹は超俗的な感性を持っていますが、むしろそれは周囲の人との間に隔たりを作ってしまう原因で。
白牡丹は解消不可能な孤独を抱えた人なんです。
熱心な副官である諸葛休民でさえ、完全な理解者ではないように書きましたし、
過去でも、焦景栄でさえそうだったと思います。いわんやその他の人においてをや。
私はこのおよそ英雄的とはいえない、自分が創作した皇帝が大好きですが、
彼の最も大きな美質は自分を逐った如月に「あいつを助けてやりたい。(>>108-109)」といえるところと、
本当の勇気を持っているところかなと思っています。
朕は、洞庭湖を軍船で渡っている。強い風がひょうと吹いて、身体を煽る。
右を見ると、ちょうど君山の横を通り過ぎるところだった。
この戦いはこれで終わらせる。
上陸し、起伏の多い山道を進む。こんな戦いの前でも、木々は綺麗だ。
ここを人の血で汚すのも、これで最後にしたい。
そんなことを考えているとき、行く手を一隊の兵馬が遮った。
「誰の許可を得て皇土に侵入するのか?」
暗黒色に身を固めた、総大将とおぼしき男が凄んだ。
「このレイ州は大呉皇帝の土地だ。何人も、皇帝の許しなく軍を進めることはできぬ。
勿論だが、小僧、大呉皇帝とはお前などのことではないわ!」
レイ州城は目と鼻の先だというのに、敵の数は少ない。黄加陳と翠絶は確かに役目を果たしたのだ。
諸葛休民が言う。
「陛下は泰然としていて下され。指揮は私が。」
任せたよ、休民。だけど啖呵は朕にやらせてくれ。
─お前にとってはそうかもしれん。兵にとってはどうだ?
朕に降る者を、害しはせんぞ。
敵兵を眺め渡す。一瞬の後、誰も列を離れてこちらに降る者は現れなかった。
─それなら仕方ない。休民!
「攻撃開始!」
休民の合図で味方が動き出すのと、敵がこちらに押し寄せるのは同時だった。
双方、死に物狂いで槍を突き出す。隘路では、勇気のある方が勝つのだ。
敵はなかなかしぶとい。小勢ながらよく戦い、しばしばこちらが劣勢に立たされた。
「皆、進めええーっ!」 「通すな、防げええーっ!」
隊長たちの鼓舞が飛び交い、敵味方とも多くの死者が出た。
「陛下! 兵を奮起させて参ります! 者ども続けえええーっ!」
お、おい、軍師が敵に突っ込むな! 仕方ない! 朕も出る!
道を開けろおおーっ!
兵の士気はいやがうえにも高まった。形勢は次第にこちらに有利になり、
夕刻には敵を潰走させ、レイ州城下まで肉迫した。
弓隊の援護のもと、堀を埋め梯子をかける歩兵隊。
必死にそれを防ぐ城兵。
あわや、勝敗が決まらないかと思われた頃、南と西から軍勢が現れる。
「黄加陳 見参!」 「果雄の翠絶を知らんか!」
黄加陳の郎州軍は、正確に守兵を弓で射殺し、軽装の兵が城壁に取り付いている。
翠絶の果雄軍は、この世のものとも思えない。まるで冥界から蘇った魔の軍団のように、
全身を血に染めて無慈悲に敵を死骸に変える。
とうとう、レイ州軍は攻撃に晒されていない北門から逃走を始めた。
「追うな! 我々の目的はこの城だ!」
城攻めで、一方の脱出口を残して敵を死兵にしないというのは鉄則のようなものだ。
逃げる者は逃がし、城の制圧に取りかかる。広陵方面に逃れる者は、どうせ洪湖封鎖軍が捕えてくれる。
略奪を固く禁じ、戦後処理を終え、ついにレイ州を攻略した。
湖南観察使を味方に付ければ、湖南のほぼ全域を掌握できるのだ。
諸葛休民と黄加陳。今日は、二人とも緊張している。
「陛下、岳州刺史・諸葛休民が上奏いたします。」
「郎州刺史・黄加陳も諸葛刺史とともに上奏いたします。」
「「 湖南観察使の約が取れました。陛下、そろそろ公に復位して下され 」」
その時が来たね。皇帝になるのは二度目だ。
六年前は古着を受け継いだ気分だった。今はそうじゃなくて、新しい服に自分で腕を通したような気持ちだよ。
前よりずっといい。二人ともありがとう。二人がいなかったら、何もできなかった。
「終わったようなことは言わんで下さい。まだ、始まったばかりですぞ。
そうだ、天壇を設けるのは、衡山が最適だと思われるのですが」
それがいい。天壇は簡素でいいよ。重要なのは祈り方であって、設備の豪華さは本質的には関係ないから。
「助かります。時も予算も、大切に使わなくては。しかし、悔しゅうございます。
自然神・社稷も、皇祖の宗廟も、広陵郊外にあるのですから」
それもね。大切なのは祭壇がどこにあるかということじゃなく、神と通じることができるかということなんだ。
大丈夫だよ、朕なら。
白牡丹は三日前から身を清め、吉日、文武官あわせて三百名を引き連れて天壇へ向かった。
その中にはもちろん、諸葛休民、黄加陳、翠絶、湖南観察使、その他各州の刺史の姿もあった。
普通こういうときは街に厳しい交通規制がなされるのだが、白牡丹はそうした処置を一切しないよう命じていたので、
湖南の民衆は、皇帝の龍顔を拝する栄誉に預かることができた。
─衡山
「ここからは、陛下おひとりで。」
臣下は祭事の場に立ち入ることはできない。白牡丹はただ一人、天壇までの山道を自らの足で登り、
そこで天に向かって祈りの儀式を行った。
昊天上帝、五方上帝、皇地祇、神州地祇、大明、夜明、五星、太社、太稷、嶽、鎮、海、?、風師、雨師、霊星、
そして太祖以降の諸帝の神霊に。
祈りの途中、朕はいろいろなものを観た。精神が身体を離れ、祈る自身の姿を観た。
精神ははるか離れた祭壇へ飛び、山を越え、風に乗り、川や海を越え、天の楼閣に辿り着く。
天の楼閣にいるのは、男も女もみんな美しい。
「お前がここに来るのは二度目だな」などと言って、酒を注いでくれる。
そして目覚めた頃には、日はすでに高くなっていた。
白牡丹は、山を下るときもまた、自分自身の足で下りた。
山のふもとでは、臣下たちが待っていた。
この日、白牡丹は全国に復位と改元を宣言した。
紫雲六年あらため、中統元年。
朝廷組織として、
祭事を司る【夜闌院】と政事の最高会議【政事堂】を並立させ、
【夜闌院】の下に【夜闌院六部】を、
【政事堂】の下に【三省・六部】を置き、これを中央の枢要とした。
軍は暫定的に諸州・藩鎮に属させたまま、【枢密院】を新設して指揮系統の統一に取りかかる。
その他の官職は旧呉に習った。
入って来たコテを「自分で頑張って下さい=華蘭」とかもあったし、何より自分だけの世界に入ってるような感のあるレスが続いたのは
悪い印象だった。今はみんなどういうレスをしようか考えてるとして、もし一週間経っても新規にレスが無ければちょっと…っていう感じ。
いや俺も、見込みのないスレにはこんな意見しないんだけどさ。勿体ないじゃない?こうして一生懸命前置きを布陣したんだからさ。
>どんな立場で参加してもいいのですが、他に誰もいない場所で参加する場合、
>今の私のように「地盤を固める」ネタを書かないとすることがなくなります。
とは書きましたが、これってそんなに変なこと言ってますかね?
参加する立場によって書く難易度は変わると思うので、その自己責任込みでの自由なんですよ。
私は、むしろ楽蘭を心配して「しばらく一人で頑張る自信がないなら群雄を強くおすすめします」と申し上げました。
ただ、肝心の楽蘭さんご自身が苦情を言われたわけではないので、あなたや私がどうこう言うことではないと思いますよ。
あなた、私が「プロローグにかまけて参加者をおざなりにした」と言いたげですが、それは違いますね。
プロローグ中でも夜水魚のように自然に絡める相手には問題なく絡めましたから。
逆に、プロローグを終えた今でも複ハンを使う気にはなれません。
使えば使うだけひとつのキャラへの感情移入が難しくなり、モチベーションが下がる自分の性格は分かってますからね。
それでやる気が失せてしまったらかえって迷惑かけますから。
どうも、わざわざ心配してくださってありがとうございます。
自分のスタイルは変えられませんから、参加してくださる方が来るまでは気長に待ちつつ書きますよ。
夜淑、夜淑!
「……ああ、貴方ですか。(ぶすーっ)こんなつまらない場所に足を運んでくださって光栄ですよ、『皇帝陛下』ー」
いじけてるのか?
「別に。」
忙しくなって、構ってもらえなくなると思ってるんだろう?
「別にー。『政治』とか『現実』で忙しくなって、いい夢を見てくれなくなって、夢を売ってくれなくなって、
貴方の夢が目当てのお客さんが離れて、私の商売上がったりになるのが嫌なだけですよーだ」
夜淑。
「ふん。」
夢なら見たぞ。
「え?」
そっぽを向いたまま、耳をぴくりと動かす姚朝欽。
祭祀を終えた初めての夜に見た夢だ。意味があると思わないか? ただ内容が意味深で、吉凶がはっきりしなくてね。
夢なら夜淑、君の専門だ。君に相談したいんだ。もし吉夢なら売ってやる。ここにも頻繁に足を運ぶ。頼む。
「ふうむ。(あくまで取り澄ました風を装いながら、目は興味を隠せない姚朝欽)」
「いいでしょう。今『鑑定』しますよ。ちょっと待ってくださいね」
「ああ、それにしても。まったく待たされましたよ。貴方の見る夢は買いたいってお客さんは多いんですよ」
「最近売ってくれないから、待ちぼうけてる人がどれほどいたか」
「ええと、水盆。ここに水を貯める。……よし。時刻、よし。後はああしてこうして、ほいっと……急急如律令」
術に応じて、水盆の水が波立ち始める。
─目覚める直前の夢だ。朕は広陵の大明宮にいた。お茶を喫もうとしていた。
「時刻はどうでしたか。周りの状況は。なるべく詳しく教えてください。」
時刻は朝だった。晴れていて、光が屋内まで差し込んでいた。その場にいたのは朕ひとりだ。誰もいなかった。
お茶は茶入れに入っていて、茶器は蓋碗を使おうとしていた。
白牡丹が語るごとに、水盆の水に夢がその通りに映像で再現された。
茶入から茶葉を取って、碗に入れた。おかしいのはここだ。碗に入れた茶葉に、親指の先ほどの小さな亀が混じっていた。
大人しい奴じゃない。すぐに噛み付く、気性の荒い種類の奴だ。小さいから良かったものの、大きかったら大変な奴だ。
それが、蓋碗の中で這いまわったり首を伸ばしたりしていた。
夢の中の朕は、何故かそのまま湯を注いだ。そうしたら、見る見る亀が大きくなった。人の子供ぐらいの大きさにまで。
亀は朕を見つけた。亀とも思えない速度で追ってきた。どれだけ逃げても執拗に。
扉を閉めても、固い頭と甲羅で体当たりしてきた。扉は破られた。追い詰められた。
こいつに噛まれたら、肉が千切れるのは目に見えていた。怖かった。そして、奴は噛み付いてきた……。
そこで目が覚めたんだ。
夜淑。この夢はどういうことなんだ。「亀に噛まれる」というのが、気になってね。
夢の一部始終を見た姚朝欽は、口の中でもごもごと呪文を呟いて映像を消した。
「されば、鑑定いたしましょう。
夢の時刻の『朝』、これは始まりを示します。復位したばかり! まさに今の貴方は『朝』に生きています。
そしてお茶を喫もうとしていたということですが、『お茶を飲もうとする』『茶碗に茶葉を入れようとする』というのは、
欲求を満たしたい・願望を叶えたいという思いを示します。まあ、これも今の貴方には妥当ですね。
しかし、貴方の『茶碗』つまり貴方の『心』には、貴方に対して攻撃的な『亀』が入ってきてしまいました。
『亀』は固い甲羅を持ち、非常に長寿です。『長い』ということを象徴します。
それが貴方に好意を持っていないのですから、
今していること・あなたが望むことの実現には、かなりの努力と時間が必要であるということでしょう。
さて、貴方は亀に『追いかけられました』。
追われる夢、というのは心に不安や悩みを抱えているときに見ることが多いのです。
追いつかれ、『噛まれる』というのも、心に大きな負担があることの暗示です。
……亀は貴方のどこを噛みましたか?」
腕だ。腕を噛まれたよ。
「『腕』。腕は、貴方が何をするにも使う部分ですね。そこを噛まれるというのは、やはり大きな障害を暗示しています。
この夢をまとめると、貴方の前途は必ずしも洋々たるものではなく、困難が多く立ちはだかり、
貴方自身もそのことに不安を覚えている……ということを表しています。
これはどちらかといえば凶夢ですね。残念ながら、お買い上げすることはできません。」
わかった。
ただ「夢買い」とは別に、この夢をどうしたらいい?
今、悪い夢を見たのは残念だ。何とか、運気を上げたい。
「状況を変えることです!」
姚朝欽は励ましてくれる。
「創業は得てして困難なもの。貴方の前途が洋々たるものではない、それはむしろ当たり前のことでしょう。
そして皇帝である貴方が前途に不安を抱くのも当然のことですよ。
しかし、その不安こそが、雑鬼に取り入られる隙を作り、本当に悪い運気を呼びこんでしまうのです。
結局、気持ち次第ということは事実でね。
貴方が気持ちを明るくしていれば、良い運が巡ってきますよ。
とはいっても、そうですねえ、ここで何もしてあげないというのも可哀想だ。
ねえ霜葉の君、これからちょっと時間ありますか。
わたくしが良い所に連れていってあげますよ」
「良ーいところですよ。今の貴方にとってはね。そうですねえ、一言に『世界』とでも言っておきましょう。
さあ、準備はよろしいですか? ……急急如律令!」
─夜淑の口の動きだけがはっきりと記憶に残っている。
次の瞬間、朕は身体の変調を自覚した。全身灼けるような痛みとともに、自分が絶叫していることに気が付いた。
骨格自体が変形している。骨格に纏わり付く全身の筋肉が、強化され隆起していく。
両腕が背中の方へと追いやられ、身体の何倍もの大きさに伸張する。指は繋がって消えてしまった。
下を見ると、足には龍のような鱗がびっしりと生え揃い、指は鉤のように曲がり、先端には鋭い爪が付いている。
もう一度、全身を激しい痛みが襲う。
毛穴という毛穴が開き、一瞬、そこから皮膚に産み付けられた虫卵が孵ったのかと思った。
それは羽毛だった。緑なす黒の羽毛が、全身をびっしりと覆っていた。
声を出そうとするが、口、いや、尖った嘴から洩れたのは、人の言葉ではなかった。
変調をきたしていたのは自分だけではなかった。周囲の世界がとても小さくなっていた。
木々も足下にしか届かず、夜淑の姿は小さすぎて見えない。
─翔け上がりたい。衝動に抗えず、力強く羽ばたく。風が巻き起こり、木々を一斉に煽り、洞庭湖に波を立てる。
翔け上がりながらも身体は大きくなり続けた。
地上は影に覆われ、人々が一斉に上を見上げているが、朕からは人の姿など小さすぎて目に入らない。
それどころか地上の様子さえも。
朕はいまや、九万里の高さを世界の果てへ向けて飛んでいた。
─北冥に魚有り、其の名を鯤と為す。鯤の大きさ、其の幾千里なるかを知らざるなり。
化して鳥と為る。其の名を鵬と為す。鵬の背は、其の幾千里なるかを知らざるなり。
怒りて飛ぶに、其の翼は垂天の雲の若し。是の鳥や、海うごけば、則ちまさに南冥にうつらんとす。
南冥とは天地なり。(『荘子』内篇 第一 逍遥遊篇)
眼下には青一色の茫々とした世界が広がっているだけだ。
地上から空を見上げても、ただ青一色にしか見えないが、それと同じで距離が離れすぎているのだろう。
下を見たくなって、低く降下するたびに、そこには全く異なる世界が広がっていた。
大平原。聖餐の場で血を酌み交わした男達が、天下無双の騎馬民族の男達が、
敵を制圧しどこまでも駆け行く世界。
次に日暮れの道を、互いを支え合って沈痛な面持ちでとぼとぼと歩き、
人々から唾棄される難民がひしめく世界。
次にはゆうゆうと流れる大河が真っ赤に染まり、人間の死体が水に漂い、
屍肉を漁りにきた鳥の鳴き声だけが重なる世界。
そして、曲がりくねった湖のほとりに沢山の市が連ね、その向こうにある宮殿の中で、
自分の見知った人が生活している世界……
悲しくなって、朕は四方八方、滅茶苦茶に飛んだ。
あるとき風にぶちあたって、中天で羽が打ち砕かれた。
真っ逆さまに墜落していく……
姚朝欽がそこにいた。
「おかえりなさい、霜葉。ここは世界の中心ですよ。周りを見て御覧なさい。良ーいところじゃありませんか。」
確かにそうだった。断崖の上だった。誰からも、どこからも見えない、誰からも邪魔されない場所だった。
地面から泉がこんこんと湧いている。水は淡い琥珀色をしていて、温かかった。
手を差し入れてみると、心地よかった。
「入ってみましょうよ。」
姚朝欽に促され、二人で服を脱いで泉に身体を付けた。空の色は青く、雲が風に流されて、たえず形を変えていく。
空の色が水に映り、波もさまざまな色。遠く眺めれば川がせせらぎ、山が霞の中に浮かんでいる。
「あたたかいですねえ」
「さて、霜葉。大鵬になって、九万里の高さを翔けた気持ちはいかがでしたか?」
そのことが、どういうことか、というのがよくわかったよ。飛んでいるとき、世界に無数にある世界が、
自分の遥か下に、自分と関わりなく存在していた。よく知っている人が住んでいる世界でさえも。
どこにも属していない孤独だった。
「悲しいですか、それは?」
そのときは悲しかった。けれど、今思えばそうだな、悪くない。
孤独なんて昔から感じてきたことだ。
「それでいいんですよ。私たちは似た者同士。お互いにどこにも属していない、一人ぼっちの霜葉と夜淑なんです。」
どうしてこんなことをしたんだ?
「一つは、貴方がさっき言った通りでしたよ。構ってもらえなくなるのは嫌でしたから。
でも、もう一つ理由があるんです。貴方が、昔と同じ失敗を繰り返さないようにと思って。
昔、貴方は皇帝としての使命感に燃えた。その結果、一度命を失うことになってしまった。
『らしくない』ことをしたからです。
今、貴方は復位して、今度こそ自分の理想の呉を作ろうと燃えていますね。
でも、あの夢の通り。貴方は心のどこかで大きな負担を抱えている。
いつ、また『らしくない』選択をしないともかぎらない。
そして、ここまで作った良い国なのに、台無しにしないとも限らない……」
………。
「だから私、こんな趣向を用意したんです。本当は独りでいるのが性に合っていて、
誰にも邪魔されない世界が好きな霜葉の君。貴方はそういう人じゃないですか。
皇帝になっても見失わないでくださいよ。変にみんなの期待に応えようとしないでください。
貴方は時々人の期待に応えようと躍起になることがあるけど、そうすると結局重荷に感じてしまって
護るべき『みんな』でさえ煩わしく思う、そんなところがありますからね」
………。
「本当に良いお湯ですねえ。それじゃあ、もう少し入ったら帰りましょうか。」
……。
…………………。
…………。
「おかえりなさい。」
目が覚めると、いつもと変わらない姚朝欽の家にいた。
さっきの事は、すべて夢だったのだろうか。それとも、この道士の底しれない術だったのだろうか。
夜淑の言ったことは正しい。そして目の前にある皇帝の責務とは逆を行く。朕は、どうするのが正しいのだろうか。
迷っちゃった。
(黄色の鈴を取り出して)
″ちりん、ちりん″
困った時にはこれで呼べって言ったけど、来てくれるかな、マーマ。
(川辺に腰かけて足をばたばたさせながら、マーマを待つイ尓花は後ろから近付く人さらいに気付くことが出来なかった)
お嬢ちゃん、いい鈴を持ってるねえ
お母さんはどうしたの
はぐれちまったのかい?
可哀相に…… そんならおじさんが一緒に捜してやろうか
(久々に良い獲物だ)
(幼女は生きたまま金持ちの道楽旦那衆に売れば良い金になるんだ……)
(柔らかい肉を食用にするか、臓物を不老薬の材料にするか、糖尿にして「桃娘」にするか、或いは奴隷にするか……)
(そいつは旦那次第だが、いずれにしても幼女ほど金になるもんはねえ)
…あなた誰?
(優しげで柔和な物腰、しかしどこか邪悪な笑みを放つ男にイ尓花はさっと警戒する)
(マーマ…怖いよぉ。早く来て…)
″ちりん……″
(後ずさるたびに、黄色い鈴が涼やかな音を放つ。だが、マーマはまだ来ない)(じわっ…とイ尓花の両目尻に涙が浮かぶ)
マーマ…。ちょうどメイファ(※生まれたばかりのイ尓花の妹)のおっぱいとかで忙しくって、助けに来れないのかなぁ…?
126:そらまめ ◆2kpigsse4Q [] 2012/03/04(日) 17:51:20.68
>>124
最近、俺に三下り半を突きつけたあの方は愛されてそう
132:そらまめ ◆2kpigsse4Q [] 2012/03/04(日) 18:47:32.52
がきは高級官吏と精霊の間に生まれたがきだろ
──君山 白牡丹 諸葛休民
ある日訪ねてきた諸葛休民。いつになく深刻な表情をしている。
「陛下、近頃妙な噂が流れているのを御存じでしょうか。
『若い娘が一人で歩いていると、後ろから呼びとめる声がする。娘が振り返ると、一人の男が立っている。
男は娘が密かに抱いている望みを言い当て、娘に手を差し伸べる。娘がその手を取ると、男は娘を望む世界へと導く……』」
何だそれは。胡散臭すぎるな。そんな男、ろくなものじゃないに決まってる。
「同感です。実際に消えてるのです。若い娘ばかり、何の痕跡も残さずに」
広陵でも昔そういうことがあった。朕が生まれる前のことで、実際に見たわけではないが。
蓋を開けてみれば、富豪の間で道楽として流行った食人の犠牲者だった。
狙われるのは決まって平民の娘だったらしい。居なくなっても大事にならないし、犯行は極めて秘密裏に行われた。
余りにも失踪者が相次いでから、父帝が劉瑶を使って調べさせ、初めて事件が明るみに出た。
それまでにどれだけ殺されたかわかったものじゃない……。
呉の長い頽廃の生んだ惨劇だ。
「はい。私はその頃まだ官に就いていませんでしたが、まさにこの耳で噂を聞いておりました。
全てが明らかになった時、おぞましさに深い嫌悪を覚えたものです」
休民。今考えていることが同じなら、必ずこれ以上の被害を食い止め、消えた娘達の消息も明らかにしないといけないぞ。
「わかっております。すでに方策は固めてありますぞ。まず……」
「陛下っ!」
休民の言葉は、取り乱した女の声で遮られた。
朕も知っている女だ。娘がいて、確か下にもう一人産まれたばかりだとか。
「陛下、ああ、陛下、娘が、娘をどうか捜してください、ちょっと目を離した隙に、もう心当たりは捜したのに、
あの子の行きそうな場所も、捜しまわって……知り合いにも聞いて回ったのに……
私、あの変な噂を思い出して、ああっ、陛下っ!」
事情を聞き、休民に目で合図をする。休民は沈痛な表情のまま頷き、立ち去ろうとする。母親はそれを呼びとめ、
一緒に娘を捜させて欲しいという。母親は娘の特徴を分かっているだろうし、そちらの方が効率が良い。
休民も頷いて、母親を連れて州府に急いだ。
その場には朕一人だけが残された。
さて。朕は外に出て、静かに揺れる洞庭湖のほとりに行った。
洞庭湖は多くの川が長い旅を続け、最後に辿り着く終着点。普段は黙っていても、様々なことを知っているからだ。
なあ、知っていることがあれば、教えてくれないか……。
……………。
………。
………………………。
…………。
>>238
ありがとう。
俺はこれまでのレスは、下書きとかは一切せず
1レスにつき20~30分くらいしかかけずに投稿した。
好きなスレで、やりやすかったから出来たというのもあるけど、
暇じゃないと参加できないスレにはしたくないって思いが強いのね。
社会人で忙しい人は、パソコンの前に1時間以上粘って
なりきりのレスを丁寧に作るのは難しいと思う。
電磁波で疲れるだろうし。
まして今月、来月、4月ぐらいまでは忙しい会社が多いでしょう。
俺の分量が多いから釣り合いを取ろうとかは一切考えないで欲しい。
自分が楽しんで、自分に丁度良い時間で書けるネタを落として欲しい。
249 名前:無名武将@お腹せっぷく :2012/02/22(水) 22:25:01.81
>>248
結局アンジェは他のスレには書き込まないとか言って書き込んでるじゃねえか
コテを変えても書き込んでる内容はアンジェそのもの
書いてくださった方には日曜日対応します。
-王城-
蒙鐸粲 「平和だ。」
薛勒 「ええ、そうですな。」
蒙鐸粲 「しかし時は流れた。」
薛勒 「そうですな。」
「今では我が国と華の境を探すのが難しい程、我が国にも華の文化
が流入しておりますし、また我が国の支配する所となった黔州、安南
嶺南の諸道も我が国の支配を受け入れ従順な国土となりましたぞ。」
蒙鐸粲 「うぬ。」
蕭衡 「やはり、相次ぐ兵乱や重度の徴税等に苦しんでいた民にとっては、
それらからの解放は他国の支配以上に渇望していたもの、という事
で御座います。」
薛勒 「ほぉ。やはりその点は大きいですかな。」
蒙鐸粲 「そうか、して蕭衡。華の国はどのようになっている。」
蕭衡 「ハハ!!!」
現状につきましては下記の図のような割拠となっておりより一層の混
乱に陥ったとみて宜しいかと存じます。」
http://kowloon.ddo.jp/cgi/up/10MB/src/up0014.jpg
蒙鐸粲 「うぬ。」
薛勒 「しかし、この勢力図を見る限り最早同じ国とは思えませんな。」
江輅 「ええ、まさにその通りで御座いますよ。薛相国。」
薛勒 「と、申されますとどういう事ですかな?江内史令。」
江輅 「はい、実情と致しましては、我らが朝貢致しました白帝は既に廃位さ
れており、華の国の都広陵には既に新たな皇帝が立っております。」
「さらに、廃位された前帝は湖南の地に逃れ、支持する反体制派と共
に反乱を起こしたとの話で御座いますよ。」
蒙鐸粲 「ふむ。」
蕭衡 「更には、各地に封ぜられた諸王の影響力も大きくなっております。」
「前帝の時代より隠然たる力を持っていた燕王・九江公の一族に加え、
国都広陵の北部に封国を持つ魯王、華の国の旧都である洛州を支
配地に持つ陽王等、同族諸侯王の存在が非常に大きくなっており、
前帝を廃止新帝を担いだ広陵政権にとっては、湖南政権同様に非常
に大きな問題となっている、と思われます。」
薛勒 「なるほど。しかし聞けば聞くほど華の国も末ですな。」
江輅 「ええ、国家としてみれば確かに瀬戸際に追い詰められていると思わ
れますね。」
「しかしながら、庶民・商人等はまるでその争いにも動じず、日々の暮
らしを続けておりますし、そこに華の国の民の強さがありますよ。」
薛勒 「ほぉ。蕭衡殿は如何ですかな?」
蕭衡 「ハハ!!!、私も江内史令の仰る通りと思います。」
「華の国の弱体化は我が国にとって利益ではありません。」
「これにより我が国との交易や、華の国との境の維持などがまた不明
確となり、今後の動き次第では今迄以上に緊張する環境となる可能性
は十二分に御座います。」
「ですから、華の国の動向を注視し、我らと友好関係を持ち有望である
諸侯を育成・支援せねばならないかと思います。」
「また同時に、華の国の政権と戦端を構える事も考えられますので、我
が国の軍事力の強化、またそれを支える体制の強化も重要な問題か
と思います。」
蒙鐸粲 「うぬ。」
*南詔は華の国(呉国)の動向に注視しています
(もう少し手のこんだものを書きたかったのですが、時間的な問題と、資料的な問題により
かなり簡易なものとさせていただきました。
今後とも出来うる限りの中で参加させて頂きますので、宜しくお願い致します。)
やいクーロン!ぷらっとスレ荒らすな!
王様、各々の身分はこれで合ってらっしゃいますか?
蒙鐸粲=王
薛勒=相国
蕭衡様=僕射?
江輅=内史令
なにぶん、最近赴任したばかりでして…
関して参加者側から述べさせて頂きますよ。
前帝と致しまして、私自身が書き込まないのは時間が無い事と、内向ネタに
ならざるを得ない環境である点でありますが、この内、後者に関してはスレの
展開次第によっては改善できますので、その点に関しては、スレ主さんと同
様の思いではあります。
まぁ、その様に前置いた上で、申し上げますと、個人的なアレルギーの様な
点もありますが、神霊的要素というのは大きいかと思いますし、個人的には
非常に大きい懸案ではありますね。
私の立脚する南詔という国は中国王朝の版図の外の国であり、い民族国家
ですから、もっと原始的な宗教的要素というのはあったでしょうが、それにして
も、やはり精霊たちの存在、しかもそれが戦争という現実的描写に参加する
事に関しては非常に抵抗がありますし、それは歴史的要素・史実的要素に
重点を置いて戦略性・経営性を立てて国家運営・勢力運営、しいては外交等
を行っていくうえでは非常に大きな存在であり、ある種の障害に当たると思い
ます。
極端に申し上げれば、それらの存在に対し、アレルギーをもっておられたり、
それらの対応法が浮かばなければ、その時点で参加や購読はなくなる可能
性を秘めておりますし、私自身、正直なところ、精霊軍と相対峙した場合に
どのように対応、戦争を進めればいいか、わかりかねており、考えておりませ
ん。
ですから、宗教的存在、との記載が既に出ておりますが、そういった術者の
予言なりお言葉、程度にして、極力存在として出現させないという点は考慮
して頂ければ、改善に繋がる可能性はあると思います。
まぁ、その分、歴史的・史実的な面に重点を置き、より一層、一つの専門性
の突き詰めになるかとは思いますが。
また、最低限、スレ主さんが兼務でも構いませんので、広陵政権を運営する
点も重要な要素かと思います。
まぁ、広い意味で、今もプロローグ(湖南政権が成立・拡大する過程)とすれ
ば宜しいでしょうが、基本対立軸にあり、一つの軸の中心であり、また厳密
には正統な王朝の皇帝側の政権である広陵政権が不在であり動向が全く
みられない、というのは大きなマイナス要因です。
この、二政権が対立しあう構図でこそ、初めて参加者同士の戦争ができま
すし、それに応じて両者との関係を持ちつ持たれつで行える地方軍閥という
のも成立しますから、やはり、この点は兼務であっても運営して頂きたい所
ですね。
まぁ、しいて言えば、南詔におきましては、国内改革を行ったとしても、単に
自己満足ではないですが、他者の介在ができない孤立したネタになります
し、他の諸侯がいない状況では戦争も交易も外交もできませんので、結果
的に中華側に限らず、何らかの存在が参加しない限り、ネタを落とすには難
しい環境でありますね。
長文失礼致しました。
なお、>>136に関してはおおよそそんな所です。
蕭衡の地位をまだ投下していなかったこともあり、宙ぶらりんですが、他は
その記載通りになっています。
貴重なご意見ありがとうございます。
まずご多忙の中、ご参加くださっていることには本当に感謝しています。
ここ数日で考えていたのは、見ている人はきっかけさえあれば入ってきてくれるんじゃないか、ということです。
今なら入れる、と感じてくれれば……
では、そのためにどうすればよいか、自分で考えても答えが出せなかったので、意見を募ることにしたんです。
神霊的な要素ですが、私がこれまでそういう要素を描写に入れてきたのは、
古代から清朝に至るまで、連綿と中国文学史上で生き続けた幻想怪奇を
中国人の精神から切り離すことはもはやできないと考えたからなんです。
まして、古代のことですから、そういったモノへの意識も現代と明らかに異なったであろうと。
なのでそういうものを書いていますが、私は「夢」や「自然現象」でも説明がつくように注意して書いていました。
描写しつつ、現実の人の営みとは切り離せるように気をつけていました。
切り離していないネタへのアレルギーは、私もあります。
洞庭湖は黙して語らない。一人の少女の生き死になどには無関心に、静かに水面を揺らしている。
どうして、と一瞬憤ってみる。すぐに我に返る。洞庭湖の反応を自分は理解できてしまう。残念だが。
自分の預かり知らぬことに、関わり合いになりたくない。関わり合いになって、自分の世界を邪魔されたくない。
そういう気持ちを、自分は確かに持っている。
他人のために進んで身を投げ出す。「君子」だとか「仁者」だとか呼ばれるための資質だが、
「君子」「仁者」と呼ばれる以前に、助けられる命を助けようとするのは「人として当たり前」の心だといわれる。
そういう心を持っている人は、人から慕われるし、手を差し伸べてもらえる。
逆に自分の世界にばかり閉じこもって、人を顧みない人は、誰からも見放されて孤立する。
朕は、なぜ少女を探し出したいと思ったのだろう?
それが君主としての「正しいあり方」だからか。
「仁君」の名前が欲しいからか。
体面を気にしているのか。
「少女を、見捨てることもできる……」
洞庭湖の水面が、優しくそう言った気がした。
『湖の神に問う勿れ。善しと悪しとを言わぬから』
誰かがそんなことを言っていた。人の社会に生きる者は、人に交わって人の規範を身に付けるべきである……。
「本当は独りでいるのが性に合っていて、 誰にも邪魔されない世界が好きな霜葉の君。
貴方はそういう人じゃないですか。 皇帝になっても見失わないでくださいよ。
変にみんなの期待に応えようとしないでください。」
こんな時に、姚朝欽の言葉も脳裏をよぎる。少女を捜すのは、諸葛休民がやっている。
休民に任せておくこともできる。休民が失望する表情を思い浮かべるのは簡単だが、それが何だというのだろう……?
家へ戻れば、茶葉と茶器が待っている。少女の生き死になどに関わらず、一人、精神と香りの世界に浸ることもできる……。
ふと顔を上げる。一瞬だが、確かに、湖を隔てて向こうに少年の姿を見た気がした。
まだ何も知らなかった頃の、自分の姿だ。立派な大人にはなれなかった……。
─そう思った瞬間、朕は走り出していた。目を覚ませ! 今まで、やっていたことは、老荘を盾に取って
うじうじとつまらない堕落をしかけていただけだぞ!
自分を叱咤しながら舟を漕ぐ。
洞庭湖が囁いた。
「どうして子供を助けたい? 今のお前はさっきと違うね」
それは、多分、上手く答えられない。誰かを助けるのに理由がいるか?
「その子を助けたいとして、世の中には掃いて捨てるほど人がいるんだぞ?
それを全部助けたり顧みたいしないなら、お前のそれは偽善じゃないのか?」
そうかもしれない。ただ、そんな問答を楽しいと思うようじゃ、くだらない心しか持てないとわかっているんでね。
「ここからすぐそこだよ。早く行ってやりなよ。今ならまだ間に合うかもしれないよ。」
その言葉に背中を押され、舟を漕いだ。そして間に合った。
「可哀相に…… そんならおじさんが一緒に捜してやろうか」 「…あなた誰?」
一人の男と、一人の少女。
朕はその場に駆けつけ、男に言った。この子を捜していたんだ。引き取ってもいいね。
──諸葛休民
「空朱鷺殿。─空翔ける朱い鷺とは、カッコいい名前ですね。」
(「この阿呆は白ですだ。村長たるわしが請け合いますだ」との言葉を聞くと、にっこりと笑って髭をしごきながら)
「わかりました。いや安心しました。無事に釈放できて。」
「彼、なかなか良い若者じゃないですか。おしゃべりしていて気に入りましたよ。」
「それを『黒』として処罰するのは、本意じゃありませんからね。」
「まあまあ、こういうこともあるということで、次回からは気を付けてください」
「それでは!」
(片手を上げ、去り際に夜水魚の肩をポンと叩き、砂金を置いて退室する諸葛休民。
飄々とした様子だが、厳めしい武官達は非常な敬意を込めた礼で休民を見送った)
─州府の外
「やあ、村長さん。夜水魚君。奇遇ですね。また会いましたね。」
(明らかに二人を待っていた諸葛休民、二人と並んで歩く)
「どうも一度起こされると、中々寝付けなくなってしまって。ついでですからそこまで見送りますよ。」
「さっきと違って今の私は非番ですから、『州刺史』ではなく『ただの』諸葛休民だと思ってください。」
「…それでですね、そこの飯店の干鍋鶏のうまいことといったら……」
「……やっぱり、旅をするなら自分の好きなように歩いてみたいですね。歓待されるとかは嫌いです。
は~~、一度好きに旅とかしてみたいですねえ」
「え? いやあ、まだまだ出来そうにありません。今は、やりがいのある仕事があって手放したくないですから」
(取りとめのない話をしながら、州城の門まで送り)
「それでは、帰り道には気をつけて。」
中統朝創始後、初の「政事堂(※最高会議)」が開かれた。
とはいっても、朕の家の庭で話し合うだけだから、これまでと特に変わらない。
違う点があるとすれば、顔ぶれが増えたことくらいだ。
湖南観察使やその下の各州刺史は、宮殿のない施政にまだ戸惑っているようだ。
朕は、今日は紫の色糸で織った東晋風の衣服を着ていた。これから、興味のある服には色々手を出すつもりだ。
全員が席に着き、朕がお茶を淹れると、いつものように諸葛休民が話を切り出す。
(仲間内での彼のあだ名「諸葛丞相」はすぐに定着しそうだ。)
「陛下のご復位の後、湖南はさしたる混乱もなくまとまったといえます。」
(全員がうんうんと頷いた)
「今日、決めてしまいたいのは、我々が今後どういった方針を取るかです。」
「軍備を拡張し、短期間での広陵攻略を目的とするか、或いは内政を充実させ万全の準備を整えた上で事にあたるか」
「皆さんの意見を、聞きたいと思います。」
「私は、」
(最初に口を開いたのは、郎州刺史・黄加陳だ。)
「短期決戦は愚の骨頂であると考えます。敵を賞賛するわけではないが、偽帝・白如月の手腕は評判に違わず確かといえる。」
「薛珠、王藍雪、李畢嵐といった広陵の首脳もまた、よく政治を執っている。」
「容易に舐めてかかれる相手ではない。」
皆が硬骨漢・黄加陳の言葉に、心配そうに朕の方を見た。朕が気を悪くするのではないかと思ったのだ。
加陳は正しい。如月の政治の才は朕のはるか先を行く。
薛珠は人望厚く、皇后薛氏の父親でもあり、宮中の人心をよく集められる。
人格はアレでも王藍雪の辣腕は確かだし、李畢嵐は大宦官として影の力を一手に握っている……。
(朕が肯定したことで、皆は安心して黄加陳の話に注意を戻した)
「腐っても二百六十年の政権をそのまま引き継いだ敵方と、勢力を立ち上げたばかりの我ら。戦えば結果は見えています。」
「卵をもって石に打ち付けるような真似はせず、まずは内側を固めることです。」
「この間、岳州で少女の誘拐事件がありましたな。」
「岳州だけではなく、官吏や富豪の頽廃と汚職はどこにでもひそんでおるものです。それを取り締まる必要があるのが一つ。」
「また、経済の問題もありますぞ。何をするにも金は必要だ。」
「安定した収入を得るための方策を考えなければなりません。」
こくっ…
(朕がそこでお茶に口を付けると、それを何気なく見ていた湖南観察使が膝を叩いた。)
「茶だ! 産業の育成というなら、茶にかわるものはない!」
「茶は全国で需要があり、北方の契丹なども栄養源として求めるものですぞ。」
「湖南は古くから茶の名産地で、茶業の技術や名声も確立している。」
「ゆえにその技術を利用して湖南中で茶を増産し、名声を利用して輸出するのです!」
「これに加えて木綿や絹など換金性の高い産業も拡大し、その交易も成功させれば、湖南には巨万の富が集積しますぞ!」
お茶か。いいな。それなら流通網の整理もしなくちゃね。道路や橋の整備を怠ってはならないし、
宿駅や茶を売るための商店も設置するんだ。みんな、お茶を飲みたかったら朕から買うしかないんだ。
普段軍閥だとか言って偉そうにしていても、自由にお茶を飲めないなんて可哀想な奴らだ!
あと、輸出のための高級茶だけじゃなく、庶民が気軽に買えるような安いお茶も大量に作ってほしいな。
貧乏な暮らしの人にも湖南のお茶を飲ませてあげたい。生まれのせいでこんな美味しい飲み物を飲めないなんて、可哀想だ。
「武陵の茶とて、中国の茶に劣りませんぞ」
(周囲を圧する声で、果雄王翠絶が言う。)
「呉の茶業立国に、果雄も便乗させてもらうと致そうか。」
各々が内心に己を管仲、蕭何に伍して。
喧々諤々、下役人である自分の意見が国を動かすやもと、皆の口は闊達である。
「茶を栽培して流通させるには手間も時間も掛かる。
手を付けるなら、これからだろうな」
「陛下は祭祁を得手とすると聞いたぞ。陛下が茶の神に祈ればさぞかし美味い茶が出来よう」
「祭祁など傾国の怠業!」
「官僚の綱紀粛正は……急速に変革を推し進めれば、危機を感じる彼らの猛反抗を招きそうでもある。
焦るのは得策ではあるまいな。ゆるゆると推し進めるのが良かろうて」
「なるほど、綱紀粛正なんかが行われれば貴公は危ないですからな」
「こいつめ!一人前に言いおるようになったものだ」
「して……使節の派遣と軍制改革の方は?」
「交渉の結果が芳しくない事になってから、慌てて軍備の改革を始めるのも舐められよう。
まずは軍備を整え、対等の立場となってから使節を贈るのが良いのではないか?」
「然り然り!」
②茶、木綿、絹の増産と輸出、流通網の整備
④指揮系統の統一を目的とした軍制改革
③南詔への使節の派遣
①官僚の綱紀粛正
彼ら、岳州の一役所が出した結論は、このようなものとなった。
──君山 政事堂
通達から間もなく各地から続々と届く上申書。
政事堂の面々の、吟味する表情も真剣だ。
額に汗を浮かべ、黙々と手分けして山を片付けていく。政治に疎く、口を出しても皆の邪魔にしかならない朕には、
書類の立てる音はいつまでたっても終わらず、作業は永遠に続くのではないかとさえ思われた。
沈黙を破り、諸葛休民が念を押す。
「いいですか、文体が立派だとか、字が綺麗だとか、そういうことはここでは何の意味もありません。」
「中身が策として筋の通ったものを選んでください。」
「元よりわかっておりますぞ。ここにはそのような愚にもつかん選定をする者はおりません。」
「それに、自分の部下だからといって贔屓するのも以ての外ですな。」
「おお、あ奴らめ。こんな馬鹿げた策をよくも人の目に晒せたものだ。」
渋い顔をしながら、黄加陳は郎州の諸役所からの上申書の余白に
朱筆で辛辣な評価を書き込み、「返書」の山に置き続けた。
【下愚は移らず。】
(馬鹿につける薬はない、とはお前のことだ!)
【無知蠢鈍の極。】
(なんという無知で間抜け!)
【禽獣だも若かず。】
(禽獣でも お前よりましだ!)
【良心喪尽、無知の小人。】
(良心をすりへらして 恥を恥じともせぬ小人め!)
【不学無術、躁妄舛謬。】
(無学で 無能で 欲深で 見当違いだ!)
【汝が輩、不忠不誠の凡夫俗子。】
(お前のような輩を、不忠不誠のムダ飯喰らいというのだ!)
【大欺大偽、大巧大詐。】
(大山師の 大嘘つきの 誤魔化しやの 詐欺師め!)
【木石の如く無知、洵(まこと)に人類に非ず。】
(木石のように無感覚で 人間とも思えない奴だ!)
【恩に負き理に背く老姦巨猾。国家の法紀を敗壊するの人。】
(恩を知らず義を知らず化け損なった狸め。国家の法規を台なしにするのは 手前等の仕業だ!)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9102/1330599999/
回答者を私に限らなかったのは、決して不精したかったからではなく
夜闌をみんなで回すスレにしたいからです。
>>158
文の長短、巧拙は関係ないですよ。
>>142の諸葛休民のせりふでもあります。
今日ここでいただけたご意見は、どれも貴重なものであり
モチベーションを向上させることができました。
>>159
今から書きはじめます。
深夜に代行依頼に投下することになると思います。
参加してくださる可能性があるということだけでも、励みになります。
>>160
長くなりますが、長いぶん随所で飛び入り参加しやすいと思います。
人が入りやすい文章を……と意識はしますが、私の場合、何も意識しないで書かないと詰まってしまうのですが……w
楽しみにしてます!
軍規なんかも気になりますねw
それを聞いて安心しました。やっぱり携帯だと長文が打ちにくくて。
今はロムして勉強したいですが、いずれは町人ででも参加してみたい気もしますね。
よかったです。
「なりきり」ですから、頭を悩ませてる時点でなりきってないわけじゃないですか。
一番すらすら楽しく書ける文体が最上、そこに長さなんかは関係ないわけです。
うーん、町人ですか。
武将や廷臣をやる気はありませんか?
町人は難しいですよ。
町人=気楽というイメージがあるかもしれませんが、
その気楽が「馴れ合い雑談」に転向しないようにするのはなかなか難しい。
経験上それがわかってるので、
天下統一とか、汚職しまくるとか、コンセプトを持ちやすい身分のほうが簡単だと思うんです。
生まれ故郷を守るためなら手段を選ばないっていうのは考えつきますね。
故郷では聖人(英雄)、他では屈指の虐殺者とかww
「内心に己を管仲、蕭何に伍して」いた郎州の下役人が、見慣れた端正な筆跡になる評価を見たら何と思うだろう。
「これは……黄刺史は随分と手厳しいことですな。貴公の場合、自分の部下だからとむしろ厳しく見すぎておられるのでは?」
チン州刺史が言うと、黄加陳は首を振る。
「そのようなことはない。よければ読んでみられるがよい。」
押しやられた書簡に目を通すと、チン州刺史は「ああ、これは……」とばつの悪そうな表情だ。
「朱筆で済むなら、黄刺史は厳しくなどない。」
(翠絶が重々しく口を開く。)
「果雄で、給金を無駄に吸い取っておるような官吏がいれば、私が許さん。」
(それからというもの、皆は背筋に寒いものを感じながら、またもくもくと作業に戻った。)
「中々『これ』という策は見当たらぬものですな。……むむ、これ(>>141)は妙案だと思う。」
「丞相、貴公の部下からの上申書ですぞ。」
(湖南観察使の言葉に、諸葛休民が顔を上げ、書簡を受け取って目を通す)
「なるほど。私からみても、これは筋が通っています。」
「これを書いた奴らはよく知っていますが、やればできるじゃないかと見直しました。」
「丞相は部下に優しい。黄刺史とは対照的ですな。」
(レイ州刺史の言葉に、全員がどっと笑った。)
彼ら、まだ業務中だよね。朕は暇だから、ちょっと行って褒章してくるよ。
─岳州、役所
ちょっと邪魔するよ。この間は上申書をご苦労だったね。
政事堂で協議して、ここからの建策を採択することになったから。
ああ、これはちょっとした差し入れ。正式の褒章は後日になるけどね。(「君山銀針(皇帝専用の新芽茶)」を一箱渡し)
ええと、君たちの名前は。そうか、覚えておくよ。本当にご苦労さま。それじゃあね。
※というわけで、今回は>>141の順番にネタを書いていきます。
こういうROMさん参加型の企画は、今後も入れていきたいと思います。
早朝、朕は「君山銀針(ジュンシャンインジェン)」の畑に立った。この場所の様子を、どう言い表せばいいだろう?
茶畑というと、普通はのどかで、脇を子供たちが走り回っているような光景が浮かぶものかもしれない。
けれども、ここは、まるで結界の内の禁域のようだ。
周囲の全てから切り離され、歴代の中華皇帝のためだけに存在してきた茶畑。
その雰囲気は、皇帝の畑という人界の権威だけでは形容しがたい、言い知れぬものを持っていた。
むしろ、その言い知れぬ「何か」があるからこそ、ここの茶が至尊の人のために選ばれたのかもしれない。
一歩立ち入ると、清香を持った風が襟を吹く。
まるでそれは、目に見えない「誰か」の着物の裾が当たったようだった。
しばらく、朕はその「誰か」と二人で茶畑を歩き回った。
朕が歩けば、彼も付いて回る。
「汝であったか、“白牡丹”。」
心の内に声が聞こえた。
「話をしやすいように、人の形(ナリ)を取ってやるよ」
再び、清香の風が立つ。と、朕はそこに一人の人の姿を見た。
若い男だ。肌は透き通るように白く、全身から柔らかな光を放っている。
糸のような目をめぐらせば媚態が生じ、細長い指や、しなやかな身体を悠然と動かせば、そのたびにふくいくたる香が立つ。
黄色の衣を着ている。この衣は身体の動きに合わせて異なった輝きを放ち、波立ち、
絹よりも柔らかい材質でできていることがわかった。
佇まいは優美で、一緒にいるだけで心が軽くなる。
彼こそは、茶の神にして、ありとあらゆる茶の上に君臨する帝であった。
「“白牡丹”。多くの者が、汝の“諱”を春花より取ったものだと思っておる。しかしそれは誤りだ。」
「孤(わたくし)の名を、“銀針”という。“銀針”とは生命の芽吹きにして、神秘なるもの、茶に神性を与うるもの。」
「“銀針”は俗質と混じって“白毫”と為り、“白毫”はさらに俗化して“白牡丹”と為る。」
「汝の“諱”はその呼び名と同じである。」
茶神よ、と朕は言う。天の下で、茶を愛する者のため、“天子・臣白牡丹”はあなたに希う。
東は羅霄山脈、西は武陵山、南はヨウ山、北は洞庭湖に至るまで、湖南の地に茶の恵みを与えて欲しい。
「しかとそうか、白牡丹よ。」
「地上に孤の眷属が増えるはうれしきこと。」
「孤は人が好きだぞ、白牡丹。神の中にも人を嫌うもの、厭う者は多いが、孤は昔から人と関わってきた。」
「人の世も、人の心も、とてもおもしろい。湖南の人の心はとくにおもしろい。」
「汝ら人類が、これまで以上に我らを大切にするなら、恵みを与えてつかわそう。」
「しかしな、我ら茶は気難しいぞ?」
「我らの肌に合った気候条件のこの湖南でさえ、いい加減な栽培をしていればまずくなる。」
「そうさのう、高い山で生きたいわ。」
「寒い夜と風、それは我らにとって愛しき苦行、それを乗り越えて後、我らは体内に深みと地味を養う。」
茶神よ、よければ臣が眠る夜まで待ってくれ。肉体を置いて、あなたとともに湖南の各地を飛び翔けよう。
あなたの気に入った場所に、茶の居所を作らせよう。
「約束ぞ、白牡丹。違えるでないぞ。ああ、楽しみじゃなあ。どんな山に出会えることか。」
また、いま一つ願いがある。茶神よ。あなたの気に入った高山で生まれた茶は、確かに味もよく、多くの人に愛されるだろう。
だが、とうてい全ての人の口に生き渡るだけの量は作れない。
非常な高値が付けられ、生まれの貧しい者は喫むことができない。
朕は誰もが茶を飲める世の中を作りたい。どうか、広い低地にも、等しく恵みを与えてほしい。
「承知した。では今夜、汝の夢を訪ねようぞ。」
茶神はひときわ柔らかな光を放って消えた。その瞬間、畑一面に格別の香気が吹きわたった。
窓の隙間から、かぐわしい香気が入ってくる。
暗闇に横たわって目を閉じているのに、室内の様子がはっきりとわかるのは、これが夢の内だからだろう。
「約束通り来てやったぞ、白牡丹。さあ、ゆくとしようぞ。」
扉の外から茶神の声がする。起き上がって外へ出ると、外の景色は新緑の春だった。
夜だというのに、草木や、花の色が明るく浮かび上がり、清香の風が吹きわたっている。
「さあ、飛び翔けようぞ、白牡丹」
黄の衣をひるがえし、先に立って飛ぶ茶神に続いて、朕も風に身をゆだねた。
眼下に静かに眠る洞庭の水と、岳州の街並み、緑の山々、網のように張り巡らされた川が見えた。
姚朝欽の差し金で飛んだときより、はるか低いところを飛んでいた。
隣には、機嫌よく鼻歌を歌う茶神がいた。いま、朕は孤独ではなかった。
「白牡丹。大地に根を張り、体内に養分をたくわえ、春の花、夏の日差し、秋の月、冬の風の中で、我らは夢見るのよ。」
「ふくいくたる香り、清らかな風、喜びに満ちた茶と成れるのを。」
「ある者は緑に、ある者は黄に、ある者は白に、ある者は青に、ある者は紅に、ある者は黒に、またある者は花と戯れて。」
「育ち、摘まれ、人の手に委ねられ、水と戯れるまで、我らは夢を見続ける。」
「汝は、その夢を、喜ばしいものにしてくれるか?」
約束しよう。永代にわたり、湖南の茶が人を愛し、人に愛され続けられるようにすることを。
それから二人はしばらく無言で飛んだ。
茶神は注意深く地上を見下ろし、ここはだめだ、ここはいまいちだとぶつぶつ言っている。
いくら飛んでも疲れは出ないから、好きなだけ選んでくれたらいいんだが。
「おお、ここはよい!」
指差した先に、一山があった。涼やかで、きれいな気が立ち上ってくる。
「ここの場所を覚えておけよ。」
言われるまでもなく、位置と地名を確認する。
それから空が白むまで飛びまわって、他にもいくつかの場所を見つくろった。
「ああ、楽しかった……。」
心底、幸福そうな声を聞きながら、朕は床の中で目を覚ました。
─政事堂
輸出用の高級茶の産地は、ここと、ここと、ここと……
ここで生産する。測量やら色々なことは、各刺史でやってくれ。
湖南地勢図を指して指示すると、政事堂の面々は「確かに彼処の条件は、製茶に合っておりますな」と賛同する。
それから、もろもろの計画が練られ、高山で、また平地で、茶の生産が行われることになる。
始まったばかりの計画が身を結ぶのには、まだまだ時間がかかるだろう。
しかし、きっとうまくいく、と朕は確信していた。
もしよければご意見いただきたいと思います。
中々参加者に恵まれない理由は、「コンセプトが不明確」だと思われているからでは? と不安になってしまいました。
具体的には、ほのぼのなのか殺伐なのか、ファンタジーなのか歴史なのかわからなくて
どう参加したらいいかわからなくなっていませんか?
そうだとしたら、私が迷走してるということですから申し訳ないのですが
一応(上の言葉を借りるなら)「殺伐」「歴史」なんですよ。
白牡丹を主人公にしながらその軸を崩さず進めるために出しているのが配下達でして。
もしどう参加していいかわからず躊躇しているのなら、ぜひ群雄や廷臣で政争や戦争をしてほしいと思います。
私個人は、自分が書きたいことを何でも詰め込んで書いているところがあるので、
それでもし混乱させていたらすみません。
また、「どうしたら参加しやすいか」よかったらご意見を出してくださると助かります。
活かせることなら活かします。
今後のネタも先々まで考えてあり、放置は絶対にしませんが、
参加者が少なく辛くなる気持ちは、ネタ書きを頑張れば頑張るほど募ります。
読むので満足しちゃってるからかな
>>147
人を満足させられるものを書けているというお褒めの言葉と取れば嬉しいのですが、
今日も参加者が来ない、今日も来ない、というのは辛くて。
入りやすい雰囲気の作り方だけでもわかるといいんですが…
>>148
考えてくださるのは嬉しいのですが、その流れはやめてください。
今は人の作る歴史をメインにしたいんですよ。
>>149
三国志とか好きですか?
中国の歴史好きなら、それだけで大丈夫ですよ。
私は参加者の知識に合わせて書きますし、
それで入りやすくなるなら、代行依頼スレがある板に質問スレとか立てますよ。
今晩は。お久し振りです。
私の場合、以前の夜闌からキャラクターを引き継ぎたい気持ちが強いのですが…
人間と妖精の戦争のような事態も考えているのですが、巧くストーリーを考えられません。
もう暫く考えさせて下さい…
まず歴史難民板は雑談スレ等の進み具合を見ても、総人口自体が少ないように見えます
ここだけで新しい参加者を迎えるのは、少し難しいかも知れません
スレタイを見ただけでは、どんなスレかも分からない方が多いでしょうし
存在を知らなければ参加者も増えない事を鑑みると、人を募るには告知などどうですか
荒らしが付いてきたり、必ずしもプラスの結果になるとは限らないので、勧め難いものも感じますが
◆夜 闌 香 焚 き 天 を 夢 む◆
ジャンル:古代中国を舞台としたなりきりスレ
コンセプト:唐代をモデルとした架空王朝「呉」にて、政治や戦争などで歴史を紡いでゆく歴史群像劇
URL:http://ikura.2ch.net/test/read.cgi/nanminhis/1328426574/
紹介文:~10行以内で分かりやすく~
簡潔にスレを紹介しようとすると、こんな感じになるのでしょうか
まず、リレー小説+なりきりの土壌がありそうなのは、なりきりネタ板や創作発表板が思いつきます
が、初見では州名や称号を羅列されてもさっぱりでしょう
興味を持ってくれても、市井の人としての参加くらいしか望めない様な……
国の運営や歴史に関わるスタンスを期待するならば、三戦板や戦国板あたりですね
こちらは、余り詳しく無いのですが
単純に設定の積み重なりとレスの蓄積も、敷居を上げてる部分があるやも知れません
今の状況や粗筋を至極簡潔(1レス以内)にしたものを、紹介文に乗せるのも良いかも
もちろん、労力を費やしても余計に気を塞がせてしまう結果になるかも知れませんが
とりあえず、私の考え付くのはこの程度ですね
>>148
神霊の存在を明確にしないやり方なら可能かも知れませんよ
末端の兵も人知を超えた存在ではなく、黄巾党みたいな宗教教団に置き換えるとかで
やはり、告知ということになりますか。
リスクまで考慮した上でアドバイスしてくださり、ありがとうございます。
このスレの話題は、三戦板でたびたび浮上する「なりきり議論スレ」で出るので、
おそらくそれが告知の役割を果たしていると思われます。
RPGや現代モノのような意識で参加されても、お互いに気持ち良くないと思うので、
歴史系板への告知はやめておきましょう。
荒らしが付いてくるのも困りますし。
逆に歴史的な世界観にアレルギーがなければ、知識に特化している必要はないと思います。
本当に、ありがとうございます。
>>153
ある程度ストーリーが決まっているとは、過去の流れのことですか?
でしたら意識しなくても大丈夫ですよ。
私が書いている流れのことでしたら、参加者が来るまで間を持たせるために書いてるので
それこそ気にしないでください。
歴史系板以外への告知はやめておきましょう
です。
先々までの話を考えている、とどこかに書いてあった罠。
あと名無しのひとがフォローしてくれたけど、碧螺春嬢のレスに対してちょい冷たい気がス。
それが>>157の「驕兵の乱」です。
なるべく、こういうイベントを用意して入りやすいようにする、ということです。
誰もこないからって何も書かなければ、余計人が離れるでしょうから。
下段については、そんなつもりはなかったのですが、
冷たく感じてしまわれていたらすみません。
私がこう言ってるのは、出来うる限りの中で参加する、と言ってくださってる蒙さんなどからすれば、
失礼にあたると思います。
不用意な発言で、すみませんでした。
雰囲気に酔えれば参加したくなるよね、物語の一員にというか
この直後、(領内でですが)レイ州の戦い以上の大掛かりな戦いを書く予定なので、
そのさなかに入ってくれる方が出るといいなー
タイトルだけ告知すると
「驕兵の乱」
です。
なるほど、それは拝見するのが今から楽しみですね
群雄と言っても色々種類があると思うのですが
軍編成の一例などみてみたいですね
あ、自分はもし参加するとしたら誰かの軍隊に入りたいです
それは楽しみ!緻密なレス運び楽しみにしてます
何か短文レスで済まないですね。このスレをみてると短文レスでは申し訳ない気持ちになる。
私も把握するのに四苦八苦してますが応援してます。
応援ありがとうございます。
ご指摘いただいたことは、参加型なりきりの持病みたいなものであり、
かつ参加者みんなの協力で何とかなる問題でもありますね。
みんなが軸になる流れに絡むと、あとから見てわかりやすいと。
自分(白さん)が決めた流れに沿えってことでしょ
打ち合わせなしで出来るかぁ?
あと難しい漢字にはルビをふってほしい
確かに難しい漢字が多いけど、辞書に首ったけで調べるのって楽しくないですか?
漢字の読みこそ質問スレで聞けばいいじゃねえかよ立ったんだから
みんなが軸に絡みたくなるレス期待してます!
なので、私の書く神霊は、夢や自然現象の隠喩と取っていただいて構いません。
また、広陵政権の同時運営は厳しいです。
想像力の限界や、そこまで書くと実生活にも影響がでるということがありまして。
これについては、すみません。
いえいえ、こちらこそご対応と日々のスレの運営御苦労様です。
殆どROMに近い存在でありながら、棚に上げたような発言失礼致しました。
まぁ、ご自身でお書きになっているように、廃帝(白牡丹)一人でいる際の描
写として、『見える』:、『戯れる』、また夢の中の描写、というような程度であれ
ば、能力を持った特別な人物、ないしその手の趣向がある人物、ですみます
し、それであれば、なんら問題ないと思います。
これが索敵や戦争に利用されるようになりますと、どうにもこうにもお手上げに
なりますからね。
また、広陵政権につきましては、了解致しました。
まぁ、私自身が兼務するのは、時間的要因以上に、スレの趣向に大きくマイ
ナス要因になりそうですので、この点に関しましては新たな参加者さんにお任
せするしかないですね。
まぁ、今後ものんびり頑張りましょう。
長安でとある宗教団体が淫祀邪教として当局の弾圧を受けた
紅蓮教。仏教や中華古来からの民間信仰を母体とし
道教や景教、回教などの要素も混入した新興宗教
教祖である盧虎康は超常的な能力を用いて巧みに信徒を増やし
長安を拠点として雍州一帯や西域に影響力を及ぼしつつあった
数回に渡る当局の弾圧の末、盧虎康は捕らわれ厳しい拷問を受ける
しかし神仙の護りを受ける盧虎康は拷問に屈することなく
ついに白牡丹自身による尋問を受けることとなった
帝都広陵で盧虎康は白牡丹に弱き民には精神的な支えとしての宗教が必要であり
また、刑罰や権力をちらつかせて力づくで民を治める帝国が
平等互恵、助け合いの精神で繋がる教団の上位に位置する道理は無いと説く
そして白牡丹に玉座を捨て大地とそこに生きる民を知るべきであると訴えた
白牡丹は盧虎康を赦免しようとするが、廷臣たちの諫言を容れて礼部へ引き渡す
だが礼部尚書の薛珠は後日決行されるクーデター計画にかかりきりで
ついに盧虎康を査察することはなかった
盧虎康は何の沙汰も無いことは許されたということであるとし、地下牢を脱走
長安での弾圧を逃れ天水に集結していた信徒たちをまとめ
新たな拠点として漢中(梁州・興元府)を選ぶ
漢中の中心である南鄭にほど近い名勝・定軍山に翠嶺神仙大寺を建立し
教団は新たな一歩を踏み出した
盧虎康 「白牡丹が殺され、白如月が即位してからしばらく経つが」
「我ら紅蓮教への弾圧は厳しさを増す一方であるな」
史浩 「はい。白如月は儒教一尊を掲げ、白牡丹時代盛んに行われていた祭祀も停止しております」
井秀 「しかも白牡丹暗殺の糸を引いたのは我が教団であるなどと喧伝し、弾圧を正当化しております」
盧虎康 「愚かなことよ」
「儒は人をまとめるには素晴らしい教えであるが、世を安穏とするにはふさわしくない」
「またそのような虚偽の名分を掲げ弾圧しようと、人の心の奥底にある信仰を侵すことなどできぬ」
井秀 「御仏の教えこそが民を助け世を救う唯一の方法でございましょう」
盧虎康 「うむ・・・」
「こんな時代だからこそ、我らは一心不乱に読経し善行を積む必要がある」
「今日から説法の時間と修行の時間を増やそう」
「この緑豊かで中華の他の地域からも隔絶した漢中」
「まさに我らへの御仏からの賜物といえよう」
【翠嶺神仙大寺 僧房】
井秀 「尊師はあのように仰られるが、帝国は血眼になって尊師を捜索している」
「善行なんかで十万を数える信徒や、その心の支えである尊師を守れるわけがない」
智光 「では井正大師、例の計画を実行するのですね?」
史浩 「十万の信徒をそのまま御仏の兵とし、紅蓮教を国教とする新国家樹立・・・」
井秀 「そうだ。そして尊師には紅蓮教国の神聖法皇として君臨していただく」
智光 「この梁州のみであれば一月もあれば呉帝国の軛を脱することはできましょう」
史浩 「問題はその後・・・」
「確かに梁州は天険の地、守るに易く攻めるに難い」
「しかし押し寄せる帝国軍相手にどこまで踏ん張れることか・・・」
井秀 「貴殿らが不安に思うのも無理はない」
「だが、こんな噂が益州では流れているようだな」
「前帝・白牡丹は実は生きていて、荊南で再起を図っている、と」
智光 「まさか!」
史浩 「しかし、それが真実ならば・・・」
井秀 「そうだ、白牡丹と連携し帝国の注意を逸らすことができる」
「帝国にとって、我ら教団よりも白牡丹の去就のほうが余程重要」
「その隙に我ら紅蓮教は新国家を打ち立てるのだ!」
史浩 「わかりました。井正大師、私は荊州に向かいます」
井秀 「頼んだぞ、貴殿に御仏の加護があらんことを!」
道中、白牡丹派が洞庭湖周辺に集まりつつあることを知る
史浩は岳州への道を急いだ・・・
【荊南 岳州】
史浩 「ここに白牡丹が身を潜めているようだが・・・」
「さて、どうしたものかな」
「あの酒場で情報を集めてみよう」
(史浩は酒場で聞き込みを始めた)
──酒場
史浩を迎えたのは、喧騒ではなく静寂だった。
がらんとした店の中央の卓に、数名の男が座っていた。
「やあ、今日はこの店は貸し切りだ。それでもよかったら入って混ざりなさいよ。
どうしたんだ、何を呆けた顔をしているんだ。」
「無理を言われるな。彼はまだ、自らの置かれた状況に戸惑っているのだ。
なぜ、満員であるべき酒場がこんなにも空いているのか……。」
「そして、どうして我々が古馴染みのように声を掛けてくるのかもな。」
「とにかくお座りになられよ。漢中からお出でになった史浩殿。
状況の整理は座って酒を飲みながらの方が捗るかもしれんぞ?」
「はっは! 名を呼ばれてますます恐々としておるわ!」
─そのぐらいにしておこう。
(胡服を着た、ひときわ若い男が言う。男は史浩の瞳をまじまじと除き、名を名乗った。)
白牡丹だ。ここに着たのは、上の意向で朕のことを探りに来たから……そうではないのかい?
朕が本物かどうかは、漢中に戻って教祖に面相を伝えればわかるはずさ。教祖に物忘れの癖がなければだが。
そう、朕は生きている。そして、まだ呉の皇帝だ。
それがわかって、君はどうするのだ?
(白牡丹は、そこまで言って史浩に杯を差し出した)
……あれから、色々なことがあった。こうして勢力を取り戻すのも、並大抵のことじゃなかった。
だから、外側がこちらを注視する前に、こちらが外側を注視する必要があったんだ。
特に、如月と仲良くできそうもない君たち教団の様子はよく見ていた。
…最近、信徒の数が増えなかったかい。
「教団の幹部が江を下ったのは、無視できない情報だ。しかもこの湖南を目指しているとすれば。」
「だが君が目論み通り、岳陽楼に一番近い目立つ酒場を選んでくれてよかったぞ。
さもなくば我々は間抜けにもこうして延々と来もしない決定的瞬間を待ち続けねばならなかった。」
さあ、どうするんだ。
せっかくなら、弾かれた者同士仲良くしようじゃないか。
史浩 「あ、あなたが・・・」
「いえ、あなた様が大呉皇帝陛下・・・」
(慌てて史浩は拝礼し、直後自分の主は御仏のみであったことを思い出し、しまったという顔をする)
(紅蓮教幹部の中でも史浩は一番世俗的で穏健派の人物だった)
(そのため咄嗟の出来事につい中華の民としては当たり前の行動を取ってしまったのだ)
(こんなところを井秀や智光に見られたら、と思うと背筋が凍った)
史浩 「陛下・・・あ、ええと・・・白帝殿」
(目の前の皇帝をどう呼ぶべきか暫し悩んだ後、史浩は彼を「白帝」と呼称することにした)
史浩 「私の荊州入りを尊師は関知しておりません」
「人智を超えた尊師のこと、もしかしたら感づいておられるやもしれませんが」
「しかし尊師は私に命令や指示は出しておりません」
「白帝殿・・・我ら教団はあなたと共に広陵の帝国軍と闘う意志があります」
「これは尊師の意志というわけではございませんが、教団の意志と言えます」
「いかがでしょうか?白帝殿にとっても帝国軍の矛先が分散したほうが得ではございませんか?」
(史浩が拝礼するや、白牡丹はつと立ち上って彼に歩み寄った)
(跪く者と礼を受ける者。その構図が出来上がると同時に、両者の間にはある種の精神的な優劣差が生じる)
(白牡丹は、計算の上ではないが、史浩の肩に優しく手を置き、彼が話し終えるまで除けることはなかった)
いかにも、信じてもらえてよかったよ、史浩殿。
(白牡丹もまた、相手を「殿」と付けて呼んだ)
そして、改めて言わせてもらおう。よく、来られた。
朕は史浩殿を大切な友人として迎える。どうぞご別懇に。
広陵が、紅蓮教を前にもまして弾圧していることは知っているよ。
今、紅蓮教にできることは、望みの有る無しを問わず、ただ抵抗あるのみだ。
しかしあなた方は孤立無援ではない。
史浩殿は教祖の命令の外で動かれたとのことだが、丁度良いときに、ここに来られた。
朕はもちろん、【共闘】は望むところ。そして、それはここにいる呉の執政たちの意見でもある。
なあ、そうだろう?
(諸葛休民は内心で考えてにやにやしている。)
「(陛下、いい演技するじゃないの。事前に発言内容の主旨を教えておいただけで、よくやるよくやる)」
「(世が世なら良い役者になれますぞ?)」
(黄加陳が小声でツッコんだ。)
「(丞相、何をにやにやされている。気持ち悪いですぞ)」
(しかし、史浩には諸葛休民のにやにや笑いは余裕の表れだと映ったことだろう)
(白牡丹は話を続ける)
あなたがた紅蓮教の教えは、帝国の論理には反する。
それはよくわかっている。
朕は、あなた方に無理な臣従を要求はしない。
それは、【共闘】による連携を円滑に進めるためでもある。
臣従を要求しないかわりに、頼りになる同盟者として、互いに誠実に動くことの確約を取りたい。
そのためには、「尊師殿」の意思と「教団」の意思をすり合わせることが必要だと思う。
それは、何とかなりそうかな?
ぷらっとにレスつけてもらって箔が付いた(笑)と喜んでた奴だしな
アンジェと馴れ合って名前を売りたかったんだろ
290 名前:無名武将@お腹せっぷく :2012/03/03(土) 20:16:21.14
アンジェが来たくなくなるから、紅梵輔次郎はここには書き込むなよw
291 名前:無名武将@お腹せっぷく :2012/03/03(土) 20:16:59.47
紅梵輔次郎の文章を真似るのは簡単w
292 名前:みじんこ ◆A5eK1PRE8BT6 :2012/03/03(土) 20:44:47.39
アンジェ先生ぶっちゃけたな
相当鬱憤がたまっていたと見える
とりあえずアンジェ先生は歴史に関係のあるなりきりがしたいんだろ?
それはスレの趣旨として参加者はそれに合わせるべき
夜闌だしアンジェ先生の思い入れが強いのはよく分かる
293 名前:無名武将@お腹せっぷく :2012/03/03(土) 20:55:34.56
アンジェはもともとクマッタと三戦を分けた血の気の多いコテ
敬語で大人しくしてる方が違和感ある
294 名前:みじんこ ◆A5eK1PRE8BT6 :2012/03/03(土) 20:57:44.00
なんか元気ないような感じが続いてたもんな
昔は精液だの叫んでた面白い人だったのに
私は暗い不安な思いを抱きながら横たわっていた。
この任務は、もともと気の進むものではなかった。「『呉国』の軍再編に伴い、牙軍に武装解除を勧告する……。」
穏当に行くはずがなかった。彼らは私をあざ笑い、殴った……。
満身、痣の出来ていない所が無くなるまで、繰り返し、入れ替わり立ち替わり、殴り、蹴った……。
私は叫び、助けを求めた。しかしその声に応じたのは、私に向かってにたにたと笑いかける、
数えきれない程の身の毛のよだつような牙兵達の顔だった。
そして見るも恐ろしい無数の腕が四方八方から私に掴みかかってきた。
……。
……………。
……………………。
気絶し、息を吹き返したときには、私は両の腕に両脚、そして両の踝を紐で縛られていた。
私はちょっともがいてみたが、何の益もなかった。
近くに座っていた牙兵の一人がゲラゲラ笑いながら、仲間の一人に何か言ったあと、今度は私に向かって言った。
「休める間に休んどけ、ちびの阿呆め!」
「休める間だけだぞ! すぐにお前を先に引っ立てて、お仲間の城に進軍だ。すぐにお前、足なんかなけりゃよかったと思うぜ。」
もう一人の方も忌まわしい声で言った。
「おれがよう、おれのしたいようにしててみろ、お前、今頃は死んでりゃよかったと思うぜ。」
「キイキイ悲鳴を上げさせてやるところだが、このチビ鼠め。」
そいつは私の上に屈み込み、その浅黒い顔をぐっと近付けてきた。
その手には鋭く研がれた剣が握られていた。
「おとなしく寝てねえと、いいか、これでくすぐってやるぞ。」
「おれの注意を引くようなことをしてみろ、おれは命令なんか忘れちまうかもしれねえぞ。」
私は、それからはじっと横になっていたが、手首と足首の痛みは募る一方だった。
そして身体の下の地面はまるで背中に食い込むようだった。
自分のことを念頭から去らすために、私は一心に聴き耳を立てて、聞ける限りのことを聞こうとした。
周りからはたくさんの声が聞こえてくる。
牙軍の発する声は、怒りと憎しみに満ち満ちているように響いていた。
「まだかよ、おい、まだ命令は出ねえのかよ。腰抜けの首をバッサリ刎ねてよ、生意気な観察使に思い知らせてやる命令はよ。」
「こちとらもう準備は出来てんだ、何たって俺達は牙軍さまなんだからよ」
「待ちきれねえよ。もしもな、あと三、四日もこのままジッとしてろって言うんなら、俺はお前えらの誰かの首を飛ばすぜ。」
「こいつはな、この剣は、人を殺すためにあるのよ。」
「俺達がちょっと出て行ったらよ、奴らの兵は、みんな逃げ腰だろうぜ。」
「坊っちゃん育ちのひょろひょろ揃いよ。殺し合いを楽しむ心なんか持ってねえのよ。」
「奴らが命乞いをしたら、その声を愉しみながら俺は皮を剥いでやるぜ。」
「ああ、まだかなあ。殺してえ、殺してえ!」
そもそもが、視聴率取れない(くなった)放送作家なのに、業界で使い続けられてる状況がおかしい。
たとえ20年前にスマスマが成功したからって、今は数字とれてないんだから、
もう使う意味無いのに、テレビ業界ってほんと「昔のよしみ」が幅を利かせてる業界だよね。
まあ日本全体もそんな感じだけどね。
この時を待ちわびていました。
この風悠、これからも陛下にお仕え致します・・・。
(トリ忘れたもので変えました。)
(状況がよくわかりませんがよろしくお願いします。)
「あーあ、…クソッ、酒がまずい。おい親父!この酒水で薄めてあるんじゃねえだろうな!」
「ひいっ!とんでもございません。」
「もっと持ってこい!こんなもんじゃ酔えやしねぇや。」
他の客の目も気にせず悪態をつきながら杯を呷る一人の男。彼の名は孟経達、年は38。
粗暴な男は山賊やごろつきの類ではなく、ここ汝南の軍勢を統べる武将なのである。
以前は都にて一軍の将として武功を上げ、栄達を約束されていた…はずだった。
この男、戦にはめっぽう強く頭がきれるが野心は人一倍強かった。
宮中の宦官を数名抱き込んで献上品を己の物とし、それを売却した金で武器を買い集めひそかに挙兵の機会をうかがっていた。
ところがである。献上品を売って得た金銀は宦官らと山分け、つまり口止め料としてた。初めは彼も気前よく与えていたが、徐々に額を誤魔化すようになっていく。
怒った宦官らは彼の屋敷に兵を送り脅迫しようと試みたが返り討ちに遭い、兵士2人が斬殺される事件となった。
この事件はすぐさま皇帝の耳に入ることとなったが、捜査が長引けばいずれ自分たちの関与が明るみに出て処分されることを恐れた宦官らは共謀して帝に進言する。
「孟将軍は酒に酔って兵士たち数名と喧嘩になり、突発的に2人を殺してしまったのでしょう。」
「彼は以前から凶暴だと噂されておりました。どこか遠方…平穏な汝南にでも飛ばして処分といたしましょう。」
これにより孟経達の処分は汝南に左遷という形になった。反論したいことは山ほどあったが、宦官どもにどんな讒言をされるか分からぬ、とこの件からすばやく身を引いた。
汝南でも彼は兵権を委ねられたが、都から送られる監査官(宦官)の聴取を受けることがとり決められていた。
彼の仕える現汝南太守:王玄昭は悪政も善政も布かない平凡な人物だった。領民から多少は慕われているようである。
馬は肥え農作物の実り豊かな地、それが汝南であった。
間もなく、国内に騒乱が起こる。この時も日和見的な太守は傍観を決め込んだため、汝南は無風であった。
孟経達は決起を促そうかと考えたこともあったが、この男にその度胸はなかろうと沈黙を続けていた。
そして現代に至る。孟経達、この男は己の野望を諦めてはいなかったのだ。
杯を傾け、酒を飲み干す。
「ガハハハハッ!!間抜け太守、宦官、皇帝……皆我が掌上で舞え!!」
―――翌日―――
孟経達は汝南の街から少々離れた場所に来ていた。将軍である彼がここに来た理由、それはとある男に会うためである。
彼が歩く姿を、何人ものガラの悪そうな連中が睨みつけている。従者は1人も連れていない。身と腰に履いた剣のみだ。
そんな彼らには目もくれず、黙々と歩き続けて着いた先は古びた小屋だった。なんとか雨がしのげると言ったところか。
「おい、出てこい!目上の者が参ったら下の者は平伏するのが礼であろう。」
小屋の前で孟経達が大声で呼び掛ける。……中から出てきたのは髭面の大男、名は張真、年は自分より2つ上と聞いていた。
孟経達の姿を見た張真は、彼を上回る大声でこう言い放つ。
「誰かと思えば朝廷の犬か。どうした、ワシに殺されに来たのか。」
売り言葉に買い言葉。張真の正体はこの辺り一体の賊、盗人を支配している言わば賊の大頭目だ。
一方の孟経達は朝廷の臣下、彼らを討伐する立場にある。この2人が相容れるはずもない。
孟経達は顔色一つ変えず、話を始める。
「今日は貴様に相談があって参ったのだ。貴様にとっても悪い話ではないと思うぞ?」
「ワシらを馬鹿にしているのか?お前を殺して首を晒した方が余程良い話じゃ!」
「…入るぞ。」
張真を無視して孟経達は小屋へと入る。中は案の定蜘蛛の巣や埃で汚れていた。
張真はこの時自分が短剣の1つも持っていなかったことを悔しがりつつ小屋へと入り、いつもの場所に腰を下ろした。
「して、お前は何をしに来よったんじゃ。話すことなど何もない。」
「なぁに、簡単なことだ。俺と手を組め。」
「はぁ?それは何の冗談だ?ワシとお前は敵同士、これまで何度争ったか分からんぞ。お前は何を望むのだ。」
孟経達は話を聞きながら汚れた小屋の景色を見やる。張真の後ろ、そこには虎の頭骨が飾られていた。
彼は沈黙する。決して言葉に詰まったのではない。この目の前の大男を、武ではなく智で以て打ち倒す術が浮かんだのだ。
大きく息を吸い込み、目を見開いて、堂々と水の流れるごとく、彼の弁が始まった。
「お前は何を望むか、と言ったな。逆に尋ねよう、貴様は何を望む。金か?それとも女か?」
「小さい、まったく貴様は小さい男だ。天下を、天下の王を狙う気はないか。」
「貴様にはないだろうなぁ、先代の頭目は墓の下で泣いておろう。」
「なんだと?」
張真は低い声で呟いた。声には怒りの色が現れている。
「(ふふっ、食らい付いたか)」
「貴様の後ろにある虎の頭骨、それは貴様が倒した虎だな。」
「そうだ。ワシが矢で射殺した。」
「何本の矢を使った?」
「10ばかり」
「ハハッ。まあ、そんなところだろうなぁ。お前にはそれが精一杯さ。」
「……何が言いたい。」
「貴様ら賊集団も堕ちたものだな。先代の頭目は時代が時代なら将軍になっていたほどの剛の者だった。天下をねらえるほどのな。」
「それが貴様は虎を10矢も使ってようやく射殺したことを大喜びで自慢するかのように、頭骨を飾っている。」
「虎を射殺できる者など都に行けば山ほどおるわ。先代頭目なら矢は1本でもよかったやも知れんな。」
嘲笑うかのように孟経達は言い放った。張真は自分を恥じような顔をしている。
「貴様のような者に頼んだ私が馬鹿だった。帰らせてもらうぞ。」
すっと立ち上がって身を翻し、小屋から出ようとすると、張真が叫んだ。
「待て!!」
孟経達は足を止め、張真を見た。
「ワシは何を…何をすれば良いのじゃ。」
「簡単だ。今まで通り商人や人家を襲え。…しかし、その中に我々の軍旗が見えたら適当に戦って逃げろ。」
「何だそれは?」
「まあ見ていろ。私はこれから帰って太守にある進言をする。奴に受け入れさせるのは簡単だろう。」
「まずは武器、食料、金が必要なのだよ。」
【汝南城】
「太守、本日は私めより進言があって参りました。」
「おお孟経達か、なんじゃね。」
太守と呼ばれた老翁は静かに答えた。街の老人と何ら変わりのないこの男が、汝南太守王玄昭だ。
戦乱のない汝南は彼のような平和ボケした老人にすら治めることが容易だった。
孟経達は平伏して太守の顔を見る。
「申し上げます。現在、汝南は王太守の統治のもと平穏な時が続いておりますが、商人や民を狙った賊の襲撃が相次いでおります。」
「そこでです。我々官兵を使って彼らを護衛してやってはいかがでしょう?」
「街に立札を設置します。『金銀いくらにて、護衛の兵を~人つける。』と。」
「特に裕福な商人や地主らはこの話に乗ってくるでしょう。収入が入ることで我々の財政も潤う、良い案かと。」
「ふぅ~む…」
太守は唸り、暫く黙っていた。…そして、
「お前がそう言うなら正しいのじゃろう。任せたぞ。」
「ははッ。それでは早速準備がありますので、私はこれにて失礼いたしまする。」
退出して、一度自分の執務室に帰った孟経達は、密かにほくそ笑んだ。
「愚かな太守よ、お前は知らぬうちに我が反旗の方棒を担ぎ始めたのだ。ハハハハハ!!」
(ここまで序章です)
孟経達…汝南軍指揮官。
王玄昭…汝南太守。
張真…賊頭目。
>>602
つーか俺がアンジェのスレでアンジェに反論しなかったのは、スレを荒らさせない為だったんだからな。
アンジェの大切なスレみたいだったので気を遣ったんだよ。それでここで無視されたんだから却って清々したわ。
永王様、宜しいのでしょうか。
君山の陛下の臣として南詔の使節に赴けば、広陵の陛下とは決別する事となりますが……。
ましてや、零陵と広陵は地理的にも遠くありません。
それに、南詔王の蒙鐸粲は風説に拠れば、野心的な人物。
自在に山林を駆ける蛮兵達を手足と操って一詔を平らげ、ニ詔は謀殺し、瞬く間に六詔を統べた傑物。
君山は南詔と隣接しており、万が一、彼の地が蛮王に呑まれれば零陵も窮地に陥りますぞ。
そなたの言うこともわかる。
だがしかし『義』というものが存在する限り私は君山の陛下にお供する。
それと・・・。
(目つきが鋭くなる)
広陵の賊を陛下などと呼ぶな。
これからは気を付けてくれ。頼んだぞ。
そしてこれからも私の下で私を助けてほしい。
しかしそなたの言う通り、今の状況はいいものではない・・・。
なんとしても南詔王とは友好を結ばねばならない。
―――翌日―――
「おい、なんだいありゃあ?新しいお触れかいね。」
「そのようじゃが…今までとは少し勝手が違うのう。」
彼らが見ている立札には以下の文言が記されていた。
『この頃汝南では賊による商人、農民を狙った略奪行為が後を絶たない。』
『我々も賊軍を討伐せんと軍事作戦を行っているが、賊軍の規模が大きく未だに鎮圧できない状態である。』
『そこで、汝南太守王玄昭の命令の下この触れを出すに至った。』
『一、賊軍の略奪行為から商人、農民らの命、財産を守るべくここに特別部隊を設置する。』
『ニ、商人は各自の判断で、農民は十戸を一組として全員で金を出し合い毎月役所に納めよ。さすれば保護を約束する。』
『三、商人は護衛が必要な場合に応じて毎回金銀を納入しなければならない。護衛が不要であれば納入の必要はない。』
『四、直、集めた金は領民のための新たな農地の開発や水路整備に利用する。』
『以上。納入は明日より受け付ける。 汝南太守・王玄昭』
既に立札の周りにはたくさんの人だかりができており、各々が近くの者とこの話をしている。
中には行商人や村の有力者も何人か見受けられた。
「官兵が付いてくれるんなら怖いものなしってわけだ。これで盗人どもにでかい顔されずに済むってもんだぜ。」
「そうじゃそうじゃ。奴らの好き放題にさせるなんてまっぴらごめんじゃあ。」
「それに、集めた金はワシらのために使ってくれるそうじゃないか。こんなにうまい話はないぞい。」
領民たちはこの立札の文言を好意的に受け止め、太守を褒め称えた。
彼らがこの触れを出した本当の理由に気づくことはないだろう。
…この様子を人ごみにまぎれ眺めていた孟経達は大いに喜び、賊の頭目張真の前でこう言ったという。
「太守が太守なら、領民も領民というわけだ。違和感を抱いたものは指で数えられるほどしかいないだろうな。」
張真は孟経達と酒を酌み交わしながら、少し考えてから苦々しく聞いた。
「農民は騙せてものう、国の各地を巡っている行商人は感がいいだろう。奴らから金を取るのは強制しとらんなら奴らは金を納めんぞ。」
「はははっ。」
張真の疑問に孟経達は笑いを以て返事とした。彼の表情はそれは恐ろしい、冷酷なものだった。
「そこでお前たち賊どもの本領発揮だ。護衛をつけていない商人は見つけ次第殺せ。奪った財物はすべてお前たちの物にして良い。」
「少しばかりの金で命を救われるか、それをケチってすべてを失うか、童でもどちらが正しいかの判断はできるだろう?」
「おっと、かと言ってそういう商人ばかりでなく護衛付き商人、農民も襲えよ。いかに護衛部隊が重要かを奴らに徹底して教える必要がある。」
「前にも申した通り軍の旗を見たら護衛付きと認識し、適当に戦って何も取らずに逃げろ。私も部隊の兵たちには賊は絶対に殺さず生け捕りにせよと命じておく。」
「捕まったお前たちの仲間は後で私が責任を持って釈放してやる。」
「ハッハッハ、今日は酒が上手い。商人、農民たちが私の反旗のために軍資金を提供してくれるとはなあ。」
孟経達はいつものように太守の元へ向かう。子に恵まれなかった王玄昭は彼を我が子のように可愛がり、軍指揮官とは言わず全ての内政を彼に任せていた。
老翁は今日も庭を眺めたり、散歩をしたりと隠居生活同然であった。
「失礼いたします、太守。」
「ああ、今日もご苦労じゃね孟将軍。昨日言っておった触れはもう出したのかい。」
「はい、もちろんでございます。善は急げと申します通り一刻も早く領民たちを安心させてやらなければなりませぬ。」
「うんうん、これからも任せたぞ。」
「ハッ。……ときに太守、折り入って今日は別に申し上げたいことがございます。」
「なんじゃ、申してみるがよい。」
「では。…そろそろ我々汝南も白如月、白牡丹どちらに付くかを明確に示し、使者を送るべきではございませぬか?」
その時、朗らかな太守の顔が一瞬にして睨むような表情へと変わる。
そして、厳粛な態度となり、孟経達に対して、一言だけ言い放った。
「お前は汝南を戦場にしたいのか。」
当然、この返事が来るのは予想していた。徹底した平和主義者の太守がそう易々とおうと言うはずもない。
むしろここで反対しなければいよいよボケてしまったのかと思うほどだ。
孟経達は、逆にすごむように、鋭い目つきでこう言った。
「だからとて、どちらにも付かぬならいざ激突となった時、その両者から狙われるのはここ汝南です。」
「なんじゃと!?」
太守が声を荒げたが気にせず話を続ける。
「ここ汝南は太守の治世の下、兵糧米豊富にして水も良い。私であればここを制して軍の補給拠点といたしますな。」
「当然、両者同じことを考える。そうすれば汝南を巡っての戦いとなり、汝南の地は自ずと主戦場と化すでしょうな。」
「むう…」
「私めも全力で戦う所存ですが二勢力を同時に相手にすることは兵力的に考えて無理です。」
「では、太守はおとなしく降伏の道を選ばれますかな?」
「ぐぬぬぬ…」
「(王玄昭、焦っているな…もう少しで落ちるか。)」
孟経達は既に勝ち誇ったような顔をしていた。一方の王玄昭はうなだれるばかりである。
「そこで私から提案でございます。二者のいずれか、私からは白牡丹のもとへ使者を送り服従を誓う代わりに領土を安堵してもらうのがよろしいかと。」
「もし白如月側の侵攻をうけた場合に援軍を送って貰えれば勝機は十分あります。」
「白牡丹?あれは確か廃立された方であろう?そんな輩に服従する意味があるのか分からんのう。」
「白如月一派こそが真の逆賊でありましょう。それに奴は権力の一極集中を望んでいるようです、我々は領土没収の憂き目をみることになりますぞ。」
「なるほどのう。お前の言い分はよく分かった。そうするがよい。」
「賢明なご判断です、太守。(王玄昭、白牡丹。お前たちには共通している部分がある。)」
「(それは、治世においてのみ、お前たちは後世に名を残す名君になったということだ。とても乱世を制する器ではない、身の程を知れ。)」
「次いで太守、私めの願いをもう一つだけお聞き入れください。」
「申してみよ。」
「この度の使者の役ですが、私から県尉の程欽を推挙したく存じます。」
程欽。清廉にして不正を許さぬ男であった。今年で齢二十六。
数年前に都で官吏登用試験科挙を受けたが宦官に賄賂を渡さなかったため合格点に達していながら不合格となった。
失望した程欽は故郷の汝南に戻り、城の改修工事や木の伐採などの肉体労働で日々の生計を立てていた。
元は勉強漬けの文官志望であったが今では自然と筋肉が付き、ガッシリとした体形になっている。
そんな彼に目を付けたのが孟経達だった。王玄昭の命令で人材を求め街を歩いていた時、偶然見つけたのがこの男だった。
一目で彼を気に入った孟経達は自分の思想を淡々と聞かせた。彼の言葉に感銘を受けた程欽は役人になることを再び志し、試験を経て登用された。
孟経達の一言でいきなり県尉に抜擢された彼は利権をむさぼる役人や商業組合を端から追放するなどの改革を断行し、一躍領民たちの人気者となった。
「ワシらの気持ちを分かって下さるのは程欽様だけだ。」
「まったくじゃ、ろくに働かない役人どもとは大違いじゃ。」
今も孟経達と程欽は仲の良い友人である。
「程欽?おお、そうじゃ!程欽ならば安心して任せられるわい。すぐに彼を呼んでくれい。」
「お呼びか、太守殿。」
野太い声でずかずかと王玄昭の前まで進み平伏する程欽。
「よく参った。さっそくですまんがお前に命を下す。白牡丹殿の元へ貢物を持って向かい謁見せよ。」
「我々汝南軍は貴殿に臣従する、故に領土の安堵を願いたいと申してくればよい。」
「いえ、それがしのような浅学非才な者よりも孟将軍の方が適任です。」
「その私からの推薦なのだ、程欽。私の顔を立てるということで、承諾してくれ。」
程欽は少し困ったような顔をして唸る。そして、
「分かり申した。命を受けたからには必ずやり遂げます。」
「よろしくたのむぞい。」
「では程欽、少し打ち合わせをしよう。私の執務室に来い。」
「はっ。では王太守、ご期待くだされ。」
(孟経達の執務室)
「よし、では言おう。実は私から君にしてもらいたいことがある。」
「何でございますか。」
孟経達の様子から、程欽はこれが最も重要な話なのだと理解する。
「向こうで謁見を終えたら、お前は暫くかの地に滞在せよ。」
「そして毎日出仕して内部事情を探れ。何かあったら使者を送り私に報告せよ。」
「しかし、王太守からの許可が必要では?それに、県尉の官を放り出すことになってしまいます。」
「案ずるな、責任はすべて私がとる。県尉職は私が代行しておくからお前が心配するような事態にはならんさ。」
「それならば構いません。私も安心して出立できるというものです。」
「必要なものがあったら報告書と合わせて書いて寄こせ。出来る限り希望にこたえるからな。」
「お心遣い、感謝いたします。」
「では、もう少し詳しくこの度の意義を説明するか。」
……
―――数日後―――
ガラガラと貢物を積んだ台車が動き始める。周りには旗指物、武器を持った護衛兵がひしめいている。
それを束ねる程欽はどこか晴れ晴れとした様子だった。これから自分が向かう地には何があるのか。
任務があるとはいえまるで子供のように、彼は笑うのだった。
「どれ、行こうか。」
(程欽が白牡丹の元へ出立しました。)
(すみません長くなりました。)
──岳州
州の連合体、寄せ集めからの脱皮を目指す中統朝。
その出だしは順風満帆に思われた。軍制改革に端を発する兵乱も、この時は兆候さえ見えない。
諸侯王の一人、白風悠を味方に付けることもできた。
皇帝白牡丹は、独り君山でほっと胸を撫で下ろしていた。
「眠りとは、かくも安らかなるものであったことよ。静にして虚なる時を、朕は長く忘れていたように思う。
心に長く根ざしていた暗き影が、ようやく薄れ、力を失ってきたのを感じる。
勘違いあるな、これは油断ではない、ないが、昨日は久方ぶりに安き眠りにつくことができた。」
そのようなことを、誰にも見せぬ書簡に走り書きしたほどだ。
そんな皇帝とは対照的に、いよいよ丹田に力を入れて政権運営に静かな情熱を燃やしていたのが、
岳州刺史、“丞相”諸葛休民だった。
「政事堂」の議長にして調整役、岳州の統治者にして将軍、そして中華全土の情報蒐集者として、
かれは八面六臂の活躍をみせている。
「諸葛岳州がその気になれば、中統朝を容易に簒奪できよう」
このような噂が流れるのも無理からぬことであった。
しかし、かれはあくまで宰相の一人という立場に甘んじ、職務に忠実である。……心身の疲労を誰にも気取られることなく。
ある時、かれの多忙を心配した属員が、休暇を取るように進言したことがある。
この時の諸葛休民の返答は、『新呉書』─ 表第一 ─ 宰相上 ─ 諸葛休民 ─ に記載されている。
「いやあ、気持ちはありがたいが、心配無用だよ。ほら、昔から言うでしょ。『病は気から』って……。」
「病気にならないためには、心を安らかにして、心に負担をかけないのが一番だ。」
「それでもって、私が一番心を安んじられるのは、仕事をしている時なんだ。」
「仕事をしていないと、逆に心に負担がかかるんだ。」
「まあ、つまりだ、私はいつも心を安んじられているから、心配は要らないんだ。」
こう言われては、属員は返す言葉もない。
逆に、仕事の出来のことを休民に心配されてしまうくらいであった。
諸葛休民の執務室の入口には、「為相難(相たるは難しきかな)」の三文字が書かれた額が掲げられ、
その柱には、
原以一人治天下(天下が治まるかどうかは 私一人にかかっている)
不以天下奉一人(私一人のために 天下に苦労させたくはない)
の対句が書かれていたという。
それは、彼の生い立ちの中に答えがある。少し時間を割いて、かれという人物の一端を説明しよう。
諸葛休民は、叡宗の治世に浙江の諸葛八卦村で生まれた。
浙江の諸葛八卦村といえば、蜀漢の丞相・諸葛孔明の後裔と称する一族が多く住むことで後世有名になる村だが、
諸葛休民の生家も孔明の子孫を称していた。
休民は幼少から俊才として知られ、村では「この子は将来、必ず槐の本に座す(宰相となる)だろう」と讃えられていた。
勉強家で、飢えた旅人が食を求めるように学を求めた彼は、やがて歴史に興味を抱き、
青史に名を輝かす偉大な祖先、諸葛孔明の再来となることをひそかな決意とするようになった。
そして、その機会はすぐに訪れた。
官吏登用試験、科挙。
叡宗皇帝の治世下では、「科挙及第」が宰相への登竜門となる。
親類の惜しみない援助と、恵まれた環境でめきめきと実力を付けた休民は、
いとも容易く地方試験を突破し、青雲の志を抱いて帝都広陵に上る。
ここで行われる最終試験に及第すれば、あれほど憧れた宰相の位を掴み取ることができる……。
話に聞く科挙はまさしく生き地獄だった。
上洛したその時から、挙人(受験生)達は高級官僚達の目にとまろうと自分を売り込み始める。
詩を作し、市井で詠い、評判を勝ち得、権力者から声がかかるのを待とうとする。
時には権力者の屋敷へ自作の詩を携え訪れたりもする。
こうした工作なしに、及第は望めないほど科挙の競争は熾烈だったのだ。
この時、最もきらびやかなる評判を手にしたのが、休民と同じ浙江の出身で、歳も同じ、
後に兵部尚書となる王青あざなは藍雪であった。
王藍雪の詩を、時の宰相は帯を解きながら読もうとしたが、初句を読んだ途端に帯をしめ直し、
藍雪を招き入れて共に語り合ったとか。
しかし、このような習慣は諸葛休民の好むところではなかった。
出世のための詩。受験のための儒学。いったいそれに何の価値があるというのか?
そんな休民は科挙開催までは全く無名であったが、いざ本番となるや、彼の名前を知らぬ者はいなくなる。
彼の答案に書かれた論文は、明快で誰が読んでもわかりやすく、しかも筋が通っていた。
答案が作れず、発狂する者。
不正行為に走ろうとする者。
次々と脱落者が出る中、諸葛休民はひときわ存在感を際立たせながら、勝ち進む。
─最終審問。この時、叡宗は西方異民族の統治の方法を問うたという。
故事ではなく、時事問題を出すあたりが、さすが叡宗というべきか。
諸葛休民は、分割統治を建策して叡宗に褒められたという。
この年の結果は。
主席及第、諸葛休民(浙江)
次席及第、王藍雪(浙江)
三位及第、徐亨句(山東)
というものであった。
彼が最も神経を使ったことは何か?
それは岳州の統治や閣僚の意見調整ではなく、内外の情報蒐集であった。
もちろん、かれが内政や「政事堂」に熱心でなかったということではない。
岳州はよく治まり、「政事堂」の面々もみな志が高く、一致団結している、ということだ。
一方、情報戦は非常な苦労を必要とする。
休民は国の内外に間者を放ち、やりすぎとも思えるくらい、貪欲に情報を求めた。
内部では、地方の政治がうまく行っているかどうか。官吏が勤勉か怠慢か。
上官は公平か不公平か。部下の中で誰が優秀で誰が劣等か。軍隊の規律はどうか……
外部では、天下の諸侯がどのような動きをしているか。誰が味方に付きそうか。怪しげな動向のみられる地域はないか。
そうした情報は逐一「政事堂」に上がり、吟味される。
盧虎康の間者に対する「歓迎」は、その成果の一つだった。
しかし、内部情報をより重視すべき現在、反広陵と目された漢中はともかく、
平穏で表立った動きのない河南地方にまで詳細な手回しをする余裕はこれまでなかった。
そんな河南が、政事堂で取り上げられる時が来た。
──政事堂
「蔡州汝南から、貢納の使者が発せられたそうです。進行方向からして、おそらく広陵ではなくわが方に。」
諸葛休民の報告に、ほう、と一同が嘆声を漏らした。
「先に永王殿下が参上あそばしたのが効いたのやもしれぬな。」
頻りに頷きながら、湖南観察使が言う。
「汝南と湖南の位置関係を見られよ。これは正しく広陵に対する『掎角の勢』ですぞ。」
しかし、黄加陳は顔をしかめた。
彼は外交に長けており、諸葛休民が“丞相”と呼ばれるように、“礼部尚書”と呼ばれていた。
「まだ、喜ぶのは早いと思う。彼らの意図を知ったわけではないのだから。」
「汝南は我らと広陵の双方から攻撃を受けかねぬ地域にあり、とりあえずどちらかに付くという程度の腹かもしれぬ。」
会ってみれば、わかる。
皇帝白牡丹の楽観的過ぎるともとれる言葉。
しかし、この言葉は迷いを氷解させた。
翠大王、お手前は朕とはじめて会われたときのことを覚えておいでか?
朕はお手前や果雄(コーション)の人を知りたく、武陵源を踏破した。
お手前は朕を知って、呉に助力してくださる。要はそれが大事なのだ。朕は汝南の使者に会う。
みなも付いてきてよろしいよ。
─邂逅
地平線の彼方から、黒く点々と影が見える。それがだんだんと近づいて、車馬の形を成す。
胡服の白牡丹は騎乗して程欽の隊列を眺めやっている。
左右に、“丞相”諸葛休民と“礼部尚書”黄加陳が控えている。
「止まられよ」
声をかけたのは諸葛休民だ。おそらく自分の半分ほどの年齢であろう、若い使者を目に入れる。
がっちりとした体躯だが、目には智慧の光を覗かせている。振る舞いも堂々にして颯爽たるものだ。
この時、休民は程欽の境遇を知っていたわけではなかったが、どこか通じ合うものを感じたのかもしれない。
第二声は少し和らげた。
「ようこそ来られた、汝南の御使者よ。遠路はるばる、大変だったことでしょう。」
「だが貴方は目的の第一段は果たされたよ! なぜなら、ここにいる、この方こそ、大呉の皇帝陛下なのだから。」
(どんなに長くなってもかまいません。私も長くなりました。)
(参加者の皆さんに。レスがどんな長さだろうと、また一行だろうと、対応できますよ。)
本国へ到着するまで、程欽はたくさんの物を見てきた。汝南では見ることができなかった作物や花、人……。
現地に住んでいる人々にとってはごく普通のことが、彼の目にはとても新鮮に映るのだった。
農作業をしていた老人に金を渡し、青々とした葉の野菜を買って食ってみた。うまい。
汝南で栽培されている物とは少し違う。汝南の野菜がまずいわけではないが、なんだか目新しかった。
間もなく、程欽一行は本国に到達した。旗を掲げ堂々と道を進んで行くと、前方に一団が見えた。
一人の男から声を掛けられ、ようやく彼らが呉の皇帝の一団であるということを理解する。
車列の先頭にいた程欽は護衛の兵士らに待機を命じ、すぐさま下馬して皇帝の前に跪いた。
まさかこうもはやく皇帝に謁見することができようとは思いもしなかった。
「お初にお目にかかります、陛下。私は程欽と申す者です。県尉をしています。この度は汝南太守・王玄昭様の命を受け献上品を持って参上いたしました。」
「我々のような一太守の使者に陛下自らがお出迎えしてくださるとは思いもよらず、感激の至りでございます。」
「本来でれば太守が自ら参るべきでありますが、汝南では賊による蛮行が相次いでおりまして。」
「太守以下将軍各位が治安維持のための対策に追われており、代わりに私を遣わしたのです。太守に代わりましてお詫びを申し上げます。」
そこで程欽は一度顔を上げる。一番最初に声をかけてきた男、きっと皇帝の側近なのであろう。
自分とは年も身分も全く違うが、どこか自分と似ている部分がある様に思った。ただの思い違いではないだろう。
「(ここに滞在している間、少しでいいから話をしてみたいものだ。)」
自然とそう思う自分がそこにいた。
……そして、皇帝の白牡丹。その顔は穏やかにして淀みがない。皇帝としての気品がある、と言うべきか。
これまで自分が魅せられた男は孟経達ただ一人だった。しかし、今、孟経達がいなければ、自分はこんな男に仕えたかったと思った。
「私から陛下に申し上げたい由でありますが、なにぶん話が話でありますから、陛下には少々お時間をいただくことになってしまいます。」
「これでも私の話をお聞き下さるのでしたら、それ以上に嬉しいことはございません。」
程欽殿、(下馬して進み出て)朕はお心遣い嬉しく思う。
旅はどうだった。人々の暮らしぶりや、自然の景色は。
ここは湖南の入口。朕が安心して歩けるのは、今は湖南一円かぎり。
お手前が見て来られたものを、朕は夢にしか見ることはできない。羨ましいぞ。
だが、ここから南は、正しく朕の居場所じゃ。
程欽殿に見せたい。多くの人々によって創られた国を。
我々はこれから、あそこに見える洪湖を左手にしながら、長江を渡る。
静かに青く眠る洪湖の上には、朱に塗られた洪湖水軍の軍旗が雲のようにたなびいている。
長江を渡れば、岳州はすぐそこだ。水と起伏の激しい土地、そして田園。中原の人には珍しかろう。
積もる話があるなら、岳州に着いてからにしよう。
今は、朕のことは気にせず湖南を堪能されるがよいぞ。
そう言って、白牡丹は先に馬を進ませる。風に心を泳がせて。
黄果陳は程欽に一礼して皇帝に続き、諸葛休民は程欽と並んでそっと耳打ちした。
「陛下は貴殿を気に入ったようですよ。ほら、あんなに肩の力を抜かれてる。」
田園風景、田園風景。中原と違って、全てが色鮮やかで緑が濃い。
白牡丹は、一軒の農家に目を留めて、「先に行け」と言い残してそちらに向かう。
しばらくして追いついてきた白牡丹は、人数分の水筒を持っていた。
程欽殿の分は一度沸かした。中原の人はよく水当たりを起こすからな。熱いが、飲まれるがよい。
あの井戸の水は酒よりも美味いぞ。
船着き場に着く。長江を渡る人で賑わい、多くの店が連なる。陶磁器の店、五石散をやらせる店なども。
しかし一番目立つのは茶を出す店だ。われこそが一番美味い茶店の主だと、呼び込みの声にも気合いが入っている。
程欽が不思議に思ったのは、誰も皇帝や役人に気兼ねしていないことだろう。むしろ、芝居閉幕後の俳優のほうが人目を集めている。
あれはな、徐といって売れっ子の俳優だ。やつの宮廷を舞台にした宦官と女官の道ならぬ恋物語は、
制作段階で朕がいろいろと口を出した。本物の宮廷経験者だからな。
検閲にひっかかる内容ではないかと?
岳州で、そんなことを気にするやつはいない。
諸葛休民「あなたは嫌なんですよね、黄“礼部”?」
黄果陳「これが郎州なら、許しはしません」
さあ、舟に乗ろう。
舟上、一人佇む程欽の耳には、皇帝の琴が微かに聞こえた……。
白牡丹の問いに、程欽は畏まりながらも笑顔で返答する。
「はい。戦乱が起き、一度は荒廃しようとも土地には再び緑が戻り、民たちも生き生きとしておりました。」
「道中で民から野菜をいただいたのですが、これが大変おいしかったのが印象的でした。」
「この国は美しい。先程も申しました通り今の汝南は賊が跋扈する地となってしまい、なんとも悲しい限りです。」
「…おっと失礼、暗い話にしてしまいました。では、参りましょうか。」
程欽は再び馬に跨り、護衛兵らに付いてくるよう命じる。
「(ふむ、あれが彼らの水軍か。旗指物から陣の構え方まで乱れがない。)」
「(これからの交渉次第だが、中立状態とはいえ我々には水軍が常備されていない。これでは孟将軍であろうとも打ち破れまいよ。)」
そんなことを考えていると、先程はじめに声を掛けてきた男が耳打ちしてきた。
少し気難しい顔をしていたかもしれない、と思ったが杞憂だったようだ。
「そうですか。陛下のような穏やかな人物に出会ったのは生れてから初めてですよ。」
「政治を司る人間が全員このようであれば、平和な世が築けますのになぁ。」
程欽が静かに答えた。
次いで、白牡丹が水を持ってきて、程欽に渡した。
「お気遣いありがとうございます、陛下。私のような下級役人はどんな水でも美味しくいただけますよ。」
「(この人は本当に皇帝なのか?まるで私を友人のように扱っているではないか。)」
白牡丹から貰った水、もとい湯を口に含み、飲み込む。
「おいしい。この水で作った野菜はさぞみずみずしい出来になるでしょうね。」
「いつもこのような水が飲めるなんてうらやましい限りです。」
程欽はすっかり気分を良くし、白牡丹を初めて会い意気投合した友人のように見ていた。
しかし、礼義を怠るわけにはいかない。
それから、白牡丹一団と共に街を歩く。汝南の街はどちらかと言えば田舎である。
ここまでにぎやかな街を見たのは、昔、自分が都で科挙を受けるべく滞在していた時以来だった。
あの時は自分で稼いだ金で芝居を見たり、露店で肉を食ったりした。
自分の過去を思い出し、程欽は誰にも気づかれぬよう袖で涙をぬぐった。
「これも陛下の統治の成果でしょうね。何かに縛られることもなく、自由に生活している。」
「私は陛下とのお話が終わりましたら暫くこの地に滞在するつもりです。暇があったらぜひ訪れたいですな。」
……舟上で琴を弾く白牡丹。琴の音を聞いたのも、あの科挙試験の前以来だ。
程欽は悠々とした河の流れを見つめながら、不思議な皇帝の奏でる琴の音に耳を傾けていた。
─船上
「琴を聴きなさってるかね、お役人様」
一人の漁父が、何時の間にか隣にやって来ていた。床にどかっと腰を下ろし、自身も「風清」の音色を聴きながら。
「何とも心に沁みる不思議な響きよ。天子様は、いつも漁師が舟を出す頃に琴を弾きなさる」
「初めての日はよう覚えとる。それでいつしか、居りなさるのが当たり前になっとった」
「天子様を最初にみんなに引き合わせたのはな、このわしよ」
・・・・・・
「だがよ、わしは時どき思うのよ。ある日突然来なさったように、天子様は、突然居なくなっちまうんじゃないかって」
「或時目を覚ましたら、全部夢でよ、また前みてえに、波の音だけの湖に漕ぎ出すんじゃねえかとよ」
「そう思う位、天子様は不思議なお人だし、わしらの暮らしで変ったことと言やあ、あの響きだけなのさ」
そんな話をしている間に、船は対岸に到着した。琴の音がふつりと止み、白牡丹が宰相を伴って来た。
岳州に着いたぞ。これからまた馬で数日も行けば、州府のある岳陽に着く。
が、目的は今は州府ではなく、朕の住居だ。洞庭湖上、君山にある。
・・・・・・
─君山 白牡丹の庭。
澄みきった春の朝の外光が、野に明るくみちわたっていた。湖岸から、波のまどろみの音が聞こえてくる。
鳥が歌い、汚れない平和がこの土地をおおっている。外の世界にいや増す暗い噂の数々も、今では不安な夢としか思えない。
しかし、入ってきた皇帝一行を出迎えてこちらに向けられた顔はどれも深刻なものだった。
「こちらは、(諸葛休民が紹介する)汝南の程欽殿です。彼の携えてきた任務は、今やわれわれ全員にとって非常な重要事だといってよい。」
それから休民は、程欽がまだ話したことのない人たちを一人一人指し示して紹介した。
郎州刺史・黄果陳。黄果陳が座った席の隣には白髪の官吏がいた。それはレイ州の刺史だった。
レイ州刺史のそばには湖南観察使がいた。彼は五州の刺史を束ねる大侯として、立派な椅子を与えられていた。
それから、少し離れたところに、気品のある立派な顔立ちの偉丈夫が一人座っていた。
肌の色は黒く、灼赤の目は誇り高くきびしい光をたたえていた。
彼のぜいたくな衣服も、顔の五倍の高さの冠も、異郷のなりだった。
彼はまじまじと程欽を見つめた。
「こちらは、」
諸葛休民は程欽を向いて言った。
「翠絶殿下。果雄の大王です。これで、座は満たされたわけですな」
そこの門番の方。
ちょいといいですか?
南詔王に呉の白直が参ったと伝えてくれないか。
呉の国使が来たとね・・・。
-王城-
>>219
蒙鐸粲 「平和だ。」
薛勒 「ええ、そうですな。」
蕭衡 「このやり取りもお決まりの文言になりましたね。」
蒙鐸粲 「うぬ。」
側近 「陛下、申し上げます!!!!」
蒙鐸粲 「うぬ。どうした。」
側近 「ハハ!!! 城門より華の呉国より使者が参ったとの事で御座います!!!」
薛勒 「ほぉ。呉国から使者ですとな。」
蒙鐸粲 「ふむ。」
蕭衡 「ならば至急お通しし謁見されるべきかと思われます。」
薛勒 「そうですな。他国の使者ならば例え敵国とて粗末には扱えませんからな。」
側近 「その使者に関してもう一つ情報が御座いまして・・・」
薛勒 「他にもまだ何かあるのですかな?」
側近 「ハハ!!!どうやら呉国の封君の一人で永王と名乗っているとか・・・」
蒙鐸粲 「ぬ。」
蕭衡 「永王・・・うーむ・・・土地からすれば永州に封じられた零陵君かと思われ
ますが、確か、かの諸侯は国公だったかと・・・」
薛勒 「ふむ。しかし、あの地へは確か江内史や厳副使が使者として赴いていた
はずで御座いますな。至急二名を参内させ対応に参加させては如何です
かな?」
蒙鐸粲 「うぬ。」
「至急江・厳両名を呼び使者を謁見の間へ通せ。」
「使者の素性は不明だがそその無いように行うように。」
側近 「ハハ!!!」
—-控えの間—–
側近 「これはこれはお待たせ致しました。」
「我が王の許可が下りましたので、どうぞ謁見の間へお進み下さい。」
—-謁見の間—–
蒙鐸粲 「これはこれは使者殿。よく参られた。」
「して何要だろうか?」
*謁見中
【南詔・河陽府・都城】
南詔王、謁見をお許しくださりありがたい限りで御座います。
岳州、君山より参りました。
私は白直、字は風悠。永王と名乗っております。
永王の名は陛下より授けられたもので決して正統性の無いものではありません。
本題へまいりましょう。
我が主、白牡丹は南詔国との国交を望んでいます。
どうかお考え頂けないでしょうか?
人家の少ない荒れ地を、荷駄を積んだ車が列をなして進んでいく。
その周りを汝南軍の旗を掲げた兵士が三十数名ばかり付き従っている。
兵士たちが手に持っているのは竹槍と棒である。
「賊を殺してはならん。全員捕捉して利用するのだ。」
孟経達の命令の下、兵士たちは賊を殺さぬように槍はおろか短剣すら持つことは許されなかった。
……その様子を、森林の中から窺う影があった。張真の指示を受けた賊軍だ。
「おい、旗は。」 一人が尋ねる。
「旗あり、旗あり。得物は竹槍、棒のみ。」 若い男が答える。
「ほう、そうかい。張真の兄貴が言ってた通りだな。本当ならこのぐれえ一人二人死ぬぐらいで追っ払えるだろうがな、命令じゃ仕方ねえ。」
「よしおめえら、一仕事だ。少し戦って何も奪わずに逃げるんだ、いいな。」
「おうっ!」
「おうし、行けい!!」
掛け声とともに、森林潜んでいた賊軍が一斉に飛び出し、車列に向かって石を投げつける。
それから微妙に刃こぼれのある刀を手に兵団の中へ突撃する。
兵士たちは一瞬怯んだように見えたが、隊長の檄を受けてすぐに態勢を立て直す。
商人と人夫を下がらせ、その前面に竹槍を構えた兵が展開する。
両軍激突となると見たが、賊軍は何一つ奪うことなく逃げ散って行った。
「おい、あいつらもう逃げて行ったぞ。」
「逃げるのだけは一軍だぜ。情けねえったらありゃしねえ。」
賊を追い払ったことに気を良くした兵士たちは談笑をしながら出発した。
一方、逃げた賊はすぐさま集合し、次の商人を探しはじめた。
次の商人は思いのほか早く見つかった。
「旗なし、商人とその召使でしょうか。他に人影は見受けられません。」
「ははっ、これが俺たちの本命って奴だぜ。お前ら、奪えるものは全部奪え。全員の首をはねろ。」
(各地で同じような事件が相次いでいます。)
相次ぐ賊の襲撃…護衛部隊の設置により被害は最小限きとどめられてはいるが、民衆の不安が尽きることはなかった。
商人、農民たちの心労は相当なもので、新しく導入された護衛部隊維持税も彼らにとって負担となっていた。
太守・王玄昭も老体ながら連日賊の対策に追われ、遂には体調を崩して寝込んでしまった。
政務の全ては孟経達に一任され、王玄昭に代わって軍事・政治両面を取り仕切った。
――――そんなある日、城門前に百名ほどの農民が集まり声を上げていた。
彼らの着ている衣服はぼろぼろで所々に穴が開いており、城壁からその様子を眺めていた孟経達は彼らが貧農であることを理解する。
彼らの訴えによると、いくら他の世帯と協力しても護衛部隊維持税が支払えないという。
その上、そんな部隊を設置している暇があったらさっさと賊を殲滅しろといった声も聞こえ出した。
その叫びは悲痛で、城壁に並ぶ兵士たちも困惑した様子であった。
彼らを尻目に、孟経達は自室で病に臥せっている王玄昭の元へ向かい、事情を説明する。
「して、孟将軍、どうすればよいかのう。彼らの税を免除してやろうか。」
「太守、その必要はありません。すみやかに排除するのがよろしいでしょう。」
「排除?民を処罰するつもりか?まさかお前の口からそんな言葉を聞くとは思いもよらなんだ。」
「太守よ、奴らは汝南の民ではありません。賊どもが農民になりすまし、我々を罠にはめようとしているのです。」
「いやしかし、それでは賊を殲滅しろなどというはずがあるまい。賊にとっては不利ではないか?」
「それが彼らの狙いですよ。我々の軍を誘導して撃滅する策を用意しているのでしょう。」
「不覚ながら私めも先代頭目・馬丈真の策にはまり大敗を喫したことがございました、同じ轍を踏むわけにはまいりません。」
「ふむ…そうか、そうなのかい。ならば任せたぞい。早々に賊を追い払うのじゃ。」
「ハハッ。御病気の中、時間を取らせてしまい申し訳ございません。」
「今回ばかり奴らを追い払ってもまた来る可能性があります。奴らは相当の人数がおりますからな。」
「暫く汝南城を離れ、別邸で庭でも眺めながら御静養されてはいかかでしょう。政務は私にお任せください。」
「うんうん、お前は優しいな。それも手配しておいてくれ。」
孟経達は王玄昭に礼をし、さっさと城壁へと戻った。
少し時間が経っても、自分が王玄昭の部屋に行く前と様子はさほど変わっていないように見える。
「ああ、孟将軍。太守様はなんと?」
守備隊の隊長が駆け寄り尋ねてくる。顔には焦りが見える。他の兵士達も額には汗が浮かんでいる。
孟経達は、静かに、こう言った。
「太守の命令が下った。弩兵、長弓兵に命じて奴らを射殺しろ。」
「なっ…民を殺すのですか?」
「私の知ったことではない、王太守がそうおっしゃったのだ。やらなければ処分されるのはお前たちだぞ。」
「わ、分かりました…。」
守備隊長はしぶしぶ答え、城壁に弩弓兵・長弓兵を展開させる。
弓を切りきりと引き絞る音が、農民たちの怒号にかき消される。そして…
「放てい!!」
農民らの集団に向け、兵士達の無慈悲な矢がうちこまれる。
うめき声を上げて倒れ込む者、本能に従って逃げ出す者、城門前は一瞬にして血の臭いが漂う戦場の様相を呈した。
「(ふふっ、これでよい。…我が計略も中盤といったところか……。)」
書いていると、キャラの「行く先」が分かってくる
「このキャラはこうならなければならない」というのが見えてくる
それがどんなに辛いことであろうと曲げられなくなる
文章は巧みだが、立ち回りは稚拙と言うべきか。
文民党サロンの運営に専念すれば大成したろうが、
彼はなりきりという伏魔殿に足を踏み入れてしまった。
彼は劇場のつもりでいたが、あそこは紛う事無き戦場だ。
戦場においてスポットライトに照らされれば、
浴びるのは喝采ではなく銃弾だという事が理解出来ていなかった。
芸術家としては俗な野心があり、神輿にしては我が強いという印象。
辛辣な事を言ったが、個人的には人格破綻ぶりを含めて割と好きなコテ。